地域おこし協力隊の任期後|起業支援の100万円は町の要綱で条件が変わる

地域おこし協力隊の任期後に何をして暮らしているかを総務省の調査で見たうえで、起業・事業承継の支援が実際にどう出るかを整理します。国の枠と市町村の要綱では対象になる期間が違うことがあり、4市町の要綱を並べて確かめました。
地域おこし協力隊の任期は原則として最長3年です。そのあと同じ地域で何をして暮らすのかは、応募する前から考えておきたいことです。ここでは総務省の調査で任期後の実際を見たうえで、起業や事業承継の支援が実際にどういう形で出るのかを、国の資料と市町村の要綱で確かめます。
先に結論を書くと、よく見かける「起業支援100万円」は国が隊員に直接払うお金ではありません。国は自治体の支出に対して財源を措置し、隊員が受け取るのは市町村が自分の要綱で出す補助金です。そのため、対象になる期間や条件は市町村ごとに違います。
任期後、同じ市町村に残った人は何で暮らしているか
総務省の令和7年度の調査(令和8年4月24日公表、調査時点は令和7年5月1日)では、令和2年4月から令和7年3月までの5年間に任期を終えた隊員は8,762人でした。そのうち6,163人(70.3%)が同じ地域に定住しています。定住率と転出の内訳は地域おこし協力隊とはにまとめました。
ここでは、活動地と同じ市町村に定住した5,038人が何で生計を立てているかを見ます。
| なりわい | 人数 | 割合 |
|---|---|---|
| 起業 | 2,296人 | 45.6% |
| 就業 | 1,753人 | 34.8% |
| 就農・就林 | 583人 | 11.6% |
| 事業承継 | 70人 | 1.4% |
| その他 | 181人 | 3.6% |
| 不明 | 155人 | 3.1% |
半数近くが起業しています。ただし調査の注記にあるとおり、起業の人数には準備中の人も含まれています。就農・就林も、準備中や研修中の人を含む数です。
起業した人が始めたこと
| 分野 | 人数 |
|---|---|
| 飲食サービス業(古民家カフェ、農家レストランなど) | 308人 |
| 美術家(工芸を含む)、デザイナー、写真家、映像撮影者 | 217人 |
| 宿泊業(ゲストハウス、農家民泊など) | 181人 |
| 小売業(パン屋、ピザの移動販売、農作物の通信販売など) | 174人 |
| 観光業(ツアー案内、日本文化体験など) | 130人 |
| 6次産業(猪や鹿の食肉加工・販売など) | 101人 |
| 出版・広告業(ライター、広報作成など) | 80人 |
| まちづくり支援業(集落支援、地域ブランドづくりの支援など) | 80人 |
事業承継の70人は、伝統工芸・民宿・飲食業などを引き継いだ例です。
就業・就農した人の行き先
就業では行政関係(自治体職員、議員、集落支援員など)が480人で最も多く、観光業176人、農林漁業(農業法人、森林組合など)138人、地域づくり・まちづくり支援業99人、教育業78人、医療・福祉業72人、製造業58人、小売業53人、6次産業47人と続きます。
就農・就林は農業477人、林業54人、畜産業20人、漁業・水産業12人です。
起業支援の「100万円」はどこから出るのか
総務省の地域おこし協力隊推進要綱(令和8年3月5日一部改正)は、隊員の起業・事業承継に要する経費を特別交付税措置の対象にしています。特別交付税は国から自治体に配られる財源で、隊員に直接払われるものではありません。総務省の取組ハンドブック(令和8年3月)も、協力隊の経費は特別交付税措置なので、自治体が通常の予算と同じように予算を確保する必要があると説明しています。
国の措置の中身は次のとおりです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象の時期 | 任期2年目から、任期終了後3年以内 |
| 対象の場所 | 隊員として活動した市町村と同じ市町村での起業・事業承継 |
| 上限 | 1人あたり100万円 |
| 上限の引き上げ | 起業で1人以上を新たに雇う、または事業承継で雇用数を維持する場合は200万円 |
| 対象経費の例 | 設備費、備品費、土地・建物の賃借費、法人登記、知的財産登録、マーケティング、技術指導の受入れ、経営改善のための専門人材の活用、新商品開発、従業員の育成 など |
総務省の「よくある質問」には、次のような取り扱いも書かれています。
- 任期1年・2年の隊員も対象です。ただし任期の初年は対象期間に入りません。任期1年なら任期終了後の3年間、任期2年なら2年目から終了後3年までの4年間、任期3年なら2年目から終了後3年までの5年間です
- 任期が1年未満で途中退任した場合は、対象になりません
- 上限の範囲内なら、複数年度に分けて支出できます
- 200万円に引き上げるための雇用は、100万円を超える支出をする時点で、実際に雇っていることの確認が必要です。雇う見込みだけでは足りません。確認は雇用契約書や労働条件通知書などで行うことが考えられる、とされています
- パートタイムは1日8時間で換算します。1日4時間の人を2人雇えば1人と数えます。期間を区切った雇用は1年に換算し、2人を6か月ずつ雇えば1人です
- 自治体などが報酬を払っている人(協力隊員など)を雇っても、雇用の数には入りません
市町村の要綱で、対象になる期間が変わる
実際に補助金を出すのは市町村なので、条件は各市町村の交付要綱に書かれています。4つの市町の要綱を例規集などで確かめると、対象になる期間がそろっていません。
| 市町 | 対象になる人 | 上限 | 回数など |
|---|---|---|---|
| 磐梯町(福島県) | 任期が1年を超え、かつ任期終了の日から3年以内の人 | 100万円。新規雇用・雇用維持の場合は200万円 | 上限の範囲で複数年度に分けて交付できる |
| 洋野町(岩手県) | 任期終了の日から前1年以内、または任期終了の日から1年以内の人 | 100万円 | 1人につき1年度に限る。交付決定額の10分の8以内を前金払いできる |
| 南相馬市(福島県) | 任期終了の日から前1年以内、または任期終了の日から1年以内の人 | 100万円 | 1人につき1回に限る |
| 能代市(秋田県) | 最終任期終了日までが2年以内の人、または最終任期終了日から1年以内の人。終了日から続けて1年を超えて市内に住む予定の人に限る | 100万円 | 1人につき1回限り |
国の措置は「任期終了後3年以内」まで対象にしていますが、洋野町・南相馬市・能代市の要綱では、任期終了から1年を過ぎた人は対象者に当たりません。任期を終えてしばらく働き、2年目に店を開く、という順番を考えているなら、その町の要綱で間に合うかを先に確かめてください。
南相馬市の要綱は名前のとおり起業と事業承継の両方を対象にし、磐梯町も起業または事業の引き継ぎを対象にしています。洋野町の要綱は対象を起業とし、能代市は市内で「起業又は営業する事業」としています。
転出したときの扱いも要綱で違います。磐梯町は、交付日から3年以内に自己の都合で町外に転出したときは交付決定を取り消すとしています。能代市は、隊員として初めて委嘱を受けた日から4年以内に市外に転出したときは、返還を命じることができるとしています。
要綱は多くの場合、町のホームページの記事ではなく例規集に載っています。募集要項に「起業支援あり」としか書かれていなければ、例規集で「地域おこし協力隊 起業」と探すと原文にたどり着けます。
任期を延ばして起業する特例(最長5年)
推進要綱には令和8年度から、地場産業などに従事する隊員が任期後にその分野で起業・事業承継をするために、任期を2年を上限に延ばせる特例があります(最長5年)。条件は3つです。
- その地場産業などが、地域での存続・継承が必要なものとして受入自治体に認められていること
- 起業なら1人以上を新たに雇い、事業承継なら雇用数を維持すること
- 活動した市町村に定住し、同じ市町村で起業・事業承継をすること
総務省の「よくある質問」は、地場産業として地域の基幹産業である第一次産業や伝統的工芸品産業を、生活の維持に欠かせない事業として生活必需品の小売などを想定しています。活動してきた分野と違う業で起業する場合や、延長後に活動の内容が変わる場合は対象になりません。
手続きは、隊員が延長を希望することを自治体に伝え、起業・事業承継に向けた活動計画を出すところから始まります。計画には、用地や設備、技術・資格の取得の予定、雇用の計画、事業所と任期後の住まいの予定地を書きます。自治体が延長を認めた場合、原則として任期3年目の開始日から任期終了日の3か月前までに総務省へ届け出ます。
延長期間中に起業した場合や、起業を断念した場合は、その時点で延長期間が終わります。
空き家を直して住み続ける費用
任期を終えた人が引き続き活動地と同じ市町村に住むため、空き家を自分の住まいとして改修する費用も特別交付税措置の対象です(措置率0.5)。これも隊員に直接出るものではなく、市町村が改修の補助制度を設けているかどうかで変わります。
ほかに使える制度
総務省の「よくある質問」は、起業を目指す隊員が使える制度として次のものを挙げています。
- 起業・事業化研修:総務省が開く研修で、主に任期3年目の、任期後に起業を目指す隊員が対象です。2年目・3年目向けのステップアップ研修では任期後に向けた計画づくりを扱います
- 日本政策金融公庫の融資の金利引き下げ:任期2年目以降の人と任期終了後1年以内の人が、活動した地域で新たに開業する場合が対象です。引き下げ幅など最新の条件は日本政策金融公庫で確かめてください
- 起業支援金:都道府県が地域の課題解決につながる事業を起業する人に、経費の2分の1を助成する制度(最大200万円)です
- よろず支援拠点:国が47都道府県に置いている経営相談の窓口です。任期中も起業後も、何度相談しても無料とされています
- 事業承継・引継ぎ支援センター:事業承継の相談窓口です。後継者のいない小規模事業者と起業したい人を引き合わせる事業を行っているセンターもあります
任期中に確かめておくこと
総務省のハンドブックは、任期後の起業を目指す隊員について、1年目は地域の資源を知り信頼を得る期間とし、2年目以降は本来の活動とは別に起業準備の時間を多めに取るといった配分の見直しを自治体に勧めています。群馬県中之条町は、隊員の任期後に向けた準備時間が足りなかったことを踏まえ、募集要項の活動内容に「3年後を見据えた地域づくり活動」を加えた例として紹介されています。
応募する前か、遅くとも任期1年目のうちに、次のことを確かめておくと動きやすくなります。
- その市町村に起業支援補助金の要綱があるか。対象期間、上限、回数、事業承継が入るか
- 転出したら返還になる期間があるか
- 任期中の副業や起業準備がどこまで認められるか。任用の形によって違います。詳しくは地域おこし協力隊は副業できるのかにまとめました
- 任期延長の特例の対象になる分野があるか。どの分野が対象になりうるかを自治体があらかじめ整理し、隊員と共有しておくことが重要とされています
- 空き家の改修や住まいの支援が任期後にあるか
報酬や待遇の見方は地域おこし協力隊の給料・年収にまとめています。
本記事は、総務省の地域おこし協力隊推進要綱・よくある質問・取組ハンドブック・定住状況等に係る調査結果と、各市町の交付要綱をもとにしています(2026年9月26日確認)。要綱は改正されることがあります。応募先の最新の要綱と募集要項で確かめてください。
よくある質問
Q.地域おこし協力隊の任期後は、何をして暮らしている人が多いですか。
A.総務省の令和7年度の調査では、活動地と同じ市町村に定住した5,038人のうち、起業が2,296人(45.6%)、就業が1,753人(34.8%)、就農・就林が583人(11.6%)、事業承継が70人(1.4%)でした。起業と就農・就林には準備中の人も含まれます。
Q.任期後の起業支援100万円は、国からもらえるのですか。
A.国が隊員に直接払うものではありません。国は自治体の支出に対して特別交付税措置を行い、隊員が受け取るのは市町村が自分の要綱で出す補助金です。制度があるか、条件がどうなっているかは市町村ごとに確かめる必要があります。
Q.起業支援は任期が終わってから何年まで使えますか。
A.国の措置は任期2年目から任期終了後3年以内が対象です。ただし市町村の要綱はこれより短いことがあり、洋野町・南相馬市・能代市は任期終了から1年以内の人までを対象にしています。磐梯町は任期終了の日から3年以内です。
Q.200万円まで出るのはどんな場合ですか。
A.起業で1人以上を新たに雇う場合と、事業承継で雇用数を維持する場合です。100万円を超えて支出する時点で、実際に雇っていることの確認が必要で、見込みだけでは対象になりません。
Q.任期を延ばして起業の準備をすることはできますか。
A.地場産業などに従事する隊員が、任期後にその分野で起業・事業承継をする場合、2年を上限に延ばせる特例があります(最長5年)。新規雇用などの条件があり、活動してきた分野と違う業で起業する場合は対象になりません。
Q.任期後に空き家に住む場合の支援はありますか。
A.任期を終えた人が同じ市町村に住み続けるために空き家を改修する費用は、特別交付税措置の対象です(措置率0.5)。実際に補助があるかは、市町村の制度で確かめてください。
参考にした公式ページ
- 地域おこし協力隊推進要綱(令和8年3月5日一部改正)|総務省
- 地域おこし協力隊に関するよくある質問(FAQ)|総務省
- 地域おこし協力隊取組ハンドブック(令和8年3月)|総務省
- 令和7年度 地域おこし協力隊の定住状況等に係る調査結果(令和8年4月24日)|総務省
- 通知・資料(地域おこし協力隊ナビ)|総務省
- 磐梯町地域おこし協力隊起業支援補助金交付要綱|磐梯町例規集
- 洋野町地域おこし協力隊起業支援補助金交付要綱|洋野町例規集
- 南相馬市地域おこし協力隊起業・事業承継支援補助金交付要綱|南相馬市例規集
- 能代市地域おこし協力隊起業支援補助金交付要綱|能代市
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