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地域おこし協力隊の給料・年収|報酬の実態と手取り、任期後の収入

10分で読めます執筆: TownHub編集部
地域おこし協力隊の550万円は隊員が受け取る額ではないことを示した図。550万円は活動費・事業費・サポート体制に使われる制度上の枠であり、隊員の給与や収入とは別のものだと対比している

地域おこし協力隊の報酬がいくらなのかを、国の財政措置と自治体の実額の両方から整理します。契約形態による手取りの違い、任期後の収入まで。

地域おこし協力隊の報酬は、国が全国一律に決めているわけではなく、受け入れる自治体が募集ごとに決めています。総務省の要綱と、山形県内の自治体が実際に公表している募集要項をもとに、金額の根拠と手取りの考え方をまとめます。

「1人あたり550万円」は隊員の報酬ではない

地域おこし協力隊を調べると、必ず「1人あたり550万円」という数字が出てきます。これを報酬だと受け取ると、実際の募集要項を見たときに大きく戸惑うことになります。

550万円は、自治体が隊員1人を受け入れるために支出した経費に対して、国が特別交付税で措置する上限額です。隊員の口座に振り込まれる金額ではありません。総務省の「地域おこし協力隊推進要綱」(令和8年3月5日一部改正)の別添には、次のように定められています。

区分1人あたりの上限主な中身
報償費等350万円報償費(期末手当等の各種手当を含む)
その他の活動に要する経費200万円住居や活動用車両の借上費、活動旅費、作業道具・消耗品費、研修費 など
合計550万円上の2つを合わせた上限

隊員の報酬にあたるのは上の350万円の枠だけです。残りの200万円は住居や車両の借上げなど、隊員が現金で受け取るものではない経費に充てられます。

例外もあります。特に専門性の高いスキルや豊富な社会経験を持つ隊員(高度専門人材)は報償費等の上限が450万円、辺地など著しく交通条件の悪い地域で活動する隊員は400万円まで引き上げられます。ただし総務省のよくある質問にあるとおり、この場合も1人あたりの上限は550万円のままで、報償費等を450万円にすれば、その他の活動経費は100万円が上限になります。

制度そのものの成り立ちや任期の考え方は 地域おこし協力隊とはどんな制度か にまとめています。

350万円も「上限」であって、保証された額ではない

もうひとつ誤解されやすいのが、報償費等の350万円という枠です。これも上限であって、いくら支払うかを決めるのは各自治体です。

350万円を12で割ると、月あたり約29万円になります。しかし実際の募集で月29万円に届くものは多くありません。要綱には、この取組は自治体が自主的・主体的に行うものであり、総務省はその取組実績を事後的に調査したうえで財政上の措置を講じると書かれています。国への事前申請は必要ありません。つまり自治体には、上限まで使い切る義務はないということです。

さらに、報償費等には期末手当などの各種手当も含まれます。賞与を出す自治体では、その分も350万円の枠の中で賄われています。

契約形態で手取りがまったく変わる

募集要項を読むときに、金額より先に確かめてほしいのが契約形態です。地域おこし協力隊には大きく3つの形があり、同じ額面でも手元に残る金額はまったく違います

契約形態社会保険税と経費見落としやすい点
会計年度任用職員健康保険・厚生年金・雇用保険に加入し、保険料は自治体と折半給与から源泉徴収される服務の宣誓、職務専念義務、秘密を守る義務などが適用され、違反すれば懲戒処分の対象
自治体との業務委託原則として自分で国民健康保険・国民年金に加入自分で確定申告し、必要経費を差し引ける指揮命令を受けない立場のため、活動内容を契約書で具体的に決めておく必要がある
外部団体の雇用団体の就業規則と加入状況による団体からの給与として扱われる自治体ではなく団体が雇用主になるため、条件は団体ごとに異なる

額面が高い=手取りが多い、ではありません。 業務委託は額面が高めに設定されることが多い一方、社会保険料の全額と国民年金保険料を自分で負担し、所得税・住民税も確定申告で納めます。逆に会計年度任用職員は額面が抑えられていても、保険料の半分を自治体が負担し、期末手当や勤勉手当が別に支給される募集が少なくありません。

業務委託については、総務省のよくある質問に重要な注意書きがあります。契約の形式にかかわらず、実態として「労働者」であると判断されれば労働関係法令が適用される、というものです。勤務場所や時間の拘束、業務上の指揮監督の有無などから個別に判断されます。「委託」と書かれていても、実際には毎日役場に出勤して指示を受ける、という運用になっている場合は、条件を事前に確認しておくべきです。

また、額面が勤務時間で割り戻される仕組みもあります。新庄市の会計年度任用職員に関する規則では、月額報酬は別表の給料月額に「1週間あたりの勤務時間を38.75で割った数」を掛けて算定すると定められています。週の活動時間がフルタイムより短ければ、別表の金額がそのまま支払われるわけではありません。

山形県内で公表されている実際の金額

ここからは、山形県内の自治体が自ら公表している募集要項の金額です。これは山形県という1つの県の中の数字であり、全国の相場ではありません。それでも、同じ県の中でこれだけ開くという事実そのものが、この制度の実態を表しています。

自治体(募集)契約形態公表されている金額補足
朝日町(農業)業務委託月額287,500円委託料。任用期間は最長3年
遊佐町委嘱(謝礼)月額233,000円〜266,000円任期に応じて増額
西川町(委託型)受託企業に所属月額242,000円が上限就業規則は受託企業による
朝日町(文化財)会計年度任用職員月額報酬234,100円期末勤勉手当あり、昇給あり
新庄市会計年度任用職員給料月額233,600円市の給与規則の別表第8
長井市会計年度任用職員または外部団体月額229,058円令和8年度の5分野で共通
寒河江市会計年度任用職員時給1,525円(月21日で224,175円)週35時間、時間外勤務手当あり
西川町(雇用型)会計年度任用職員時給1,500円(月額220,500円が上限)週5日、1週35時間
白鷹町会計年度任用職員月額200,000円週38時間45分。社会保険料が控除される
鶴岡市外部団体の雇用月額185,000円を予定庄内自然博物園構想推進協議会が雇用

最も高い朝日町の農業(月額287,500円)と、最も低い鶴岡市の募集(月額185,000円)では、約1.55倍の開きがあります。しかも両方とも山形県内です。同じ県内、同じ制度の中で、これだけ違います。

さらに、朝日町は同じ町の中でも契約形態によって金額が違います。農業の業務委託は月額287,500円、文化財の会計年度任用職員は月額報酬234,100円です。5万円以上の差がありますが、後者には期末勤勉手当と昇給があり、社会保険は町が半分負担します。単純に金額だけで比べられるものではありません。

各自治体の待遇をより細かく並べたものは 山形県内の地域おこし協力隊の待遇比較 にまとめています。

開きの大きさは県によっても違います。福島県内で公表されている金額は月額161,000円から333,300円までで、約2.07倍。山形県の1.55倍より広く開いています。契約形態まで含めて並べたものは 福島県内の地域おこし協力隊の待遇比較 にあります。どちらの県でも、額面の上位はほぼ業務委託型で、下位は会計年度任用職員です。額面の順位は、手取りの順位とは一致しません。

なお、上の表は各自治体がそれぞれ別の時期に公表した募集ごとの金額で、すでに募集を終えているものも含みます。応募を検討する際は、必ずその時点の募集要項を確認してください。

住居や車の現物支給を、金額に足して考える

報酬の額面だけを比べると、判断を誤ります。地域おこし協力隊では、住居費や車両費が「その他の活動に要する経費」の200万円の枠から支出されることが多く、その負担範囲が自治体によってかなり違うからです。

  • 西川町 … 任期中の住居は町が準備し、家賃は町が負担。活動用公用車(燃料代を含む)とパソコンを貸与。引越費用と水道光熱費は自己負担
  • 遊佐町 … 住居は町が家賃を全額負担。活動車のほか、ガソリン代は月額20,000円以内、暖房用の灯油代は冬期間のみ月額5,000円以内を実費で支給
  • 白鷹町 … 家賃、車両リース料、パソコンなどの活動経費を活動交付金を通じて町が支援。引越費用と光熱水費は自己負担
  • 寒河江市 … 住宅と活動用車両を市が提供。着任時の引越費用は200,000円を上限に市が負担。地元産の米を毎月5キロ支給
  • 朝日町(文化財) … 住居と車(燃料を含む)を町が貸与。光熱水費などの経常経費は個人負担
  • 鶴岡市 … 住居は市が用意することも可能で、その場合の家賃補助は月額40,000円が上限。光熱水費、通信料、自治会費、引越費用は隊員の負担

家賃が全額出るかどうかで、実質的な差は毎月数万円になります。たとえば月額200,000円で家賃が全額支給される募集と、月額185,000円で家賃補助が上限40,000円の募集を比べると、家賃が5万円の物件に住む場合、後者は毎月1万円を自己負担することになります。額面の差は15,000円ですが、家賃まで含めると差はさらに開きます。

引越費用も見落とされがちです。寒河江市のように上限200,000円を市が負担する例もあれば、白鷹町や鶴岡市のように自己負担とする例もあります。着任前の一度きりの出費ですが、金額としては小さくありません。

任期が終わったあとの収入

任期は原則としておおむね1年以上3年以下です。この制度でいちばん重要なのは、3年後に何で食べていくのかという問題で、報酬の額はその手前の話にすぎません。

総務省が令和8年4月24日に公表した令和7年度の調査によると、直近5年間(令和2年4月1日から令和7年3月31日まで)に任期を終えた隊員は8,762人で、そのうち6,163人(70.3%)が同じ地域に定住しています。

内訳を見ると、活動地と同一の市町村内に定住した人が5,038人(57.5%)、活動地の近隣市町村内に定住した人が1,125人(12.8%)、他の地域に転出した人が2,013人(23.0%)でした。残った約3割は、活動した地域を離れています。この数字は、制度を検討するうえで直視しておくべきものです。

活動地と同じ市町村内に定住した5,038人が、何で生計を立てているかは次のとおりです。

なりわい人数割合
起業2,296人45.6%
就業1,753人34.8%
就農・就林583人11.6%
事業承継70人1.4%

起業がもっとも多く、その中身は飲食サービス業(古民家を使ったカフェ、農家レストランなど)が308名、美術家・デザイナー・写真家・映像撮影者が217名、宿泊業(ゲストハウス、農家民泊など)が181名、小売業が174名と続きます。就業では行政関係(自治体職員、議員、集落支援員など)が480名でもっとも多く、次いで観光業が176名、農林漁業が138名でした。

この「任期後の起業」には、国の支援があります。要綱では、任期2年目から任期終了後3年以内に、活動地と同一市町村内で起業または事業承継をする人に対して、1人あたり100万円を上限に特別交付税措置を行うと定めています。さらに、起業の場合は1人以上を新規雇用する、事業承継の場合は承継する事業の雇用数を維持する、という要件を満たせば上限は200万円に引き上げられます。設備費、備品費、土地や建物の賃借費、法人登記費用、新商品開発費などが対象です。

このほか、任期を終えた人が引き続き同じ市町村に定住するために空き家を改修する費用も、特別交付税措置の対象になります。また、地場産業などに従事する隊員が任期後にその起業・事業承継を行う場合には、活動期間を最長5年まで延長できる特例も設けられています。

自治体独自の上乗せもあります。白鷹町では、任期後に定住する人への定住支援金、定住して起業する人への起業支援交付金、空き家を住まいとして定住する人への空き家改修の支援制度が用意されています。

山形県全体でどれだけの隊員を受け入れているかは 山形県の地域おこし協力隊の受入状況 で、福島県は 福島県の地域おこし協力隊 で確認できます。

任期中に起業の準備を進められるかどうかは、契約形態によって変わります。会計年度任用職員は地方公務員として職務に専念する義務がかかるためです。詳しくは 地域おこし協力隊は副業できるのか にまとめています。

応募前に必ず確認したいこと

金額を比べる前に、次の項目を募集要項で確認してください。ここが埋まらないと、額面の比較には意味がありません。

  • 契約形態 … 会計年度任用職員か、自治体との業務委託か、外部団体の雇用か
  • 社会保険 … 健康保険・厚生年金・雇用保険に加入できるか、自分で国民健康保険と国民年金に入るのか
  • 手当 … 期末手当や勤勉手当があるか、昇給があるか、時間外勤務手当が出るか
  • 勤務時間 … 週何時間か。時給で示されている場合は、月の勤務日数によって支給額が変わる
  • 住居 … 家賃を全額自治体が負担するのか、上限つきの補助なのか、自分で借りるのか
  • 光熱水費と引越費用 … ほとんどの自治体で自己負担だが、引越費用に補助がある例もある
  • 車と燃料代 … 公用車を貸与されるのか、私有車を使うのか、燃料代は誰が負担するのか
  • 副業の可否 … 会計年度任用職員の場合、届出や許可が必要かどうか
  • 任期後の支援 … 起業支援や定住支援金など、自治体独自の制度があるか

副業については、総務省のよくある質問で、パートタイムの会計年度任用職員は営利企業への従事等の制限の対象外とされている一方、職務専念義務や信用失墜行為の禁止などの服務規則は適用されると説明されています。実際に、朝日町のように勤務時間外の副業を認めたうえで事前の届出を求める例、西川町のように申請すれば副業が可能とする例があります。任期中から任期後の準備を進めるうえで、この点は事前に確かめておく価値があります。

この記事は総務省および各自治体が公表している情報をもとに作成しています。金額や制度は年度ごとに変わることがあり、すでに募集を終えているものも含みます。応募の際は必ず各自治体の公式ホームページと最新の募集要項で確認してください。

よくある質問

Q.結局、地域おこし協力隊は毎月いくらもらえるのですか。

A.自治体ごと、募集ごとに違います。山形県内で公表されている例では、月額185,000円から287,500円まで約1.55倍の開きがありました。国の財政措置は報償費等が1人あたり年350万円を上限としており、月あたりにすると約29万円ですが、これは上限であって保証された金額ではありません。実際の募集の多くは月20万円台です。

Q.「1人あたり550万円もらえる」と聞いたのですが本当ですか。

A.隊員がもらえる金額ではありません。550万円は、自治体が隊員1人のために支出した経費に対して国が行う特別交付税措置の上限額です。内訳は報償費等が350万円まで、住居や活動用車両の借上げなどその他の活動経費が200万円までです。隊員本人に渡るのは報償費等の枠のうち、各自治体が実際に決めた額だけです。

Q.手取りはいくらくらいになりますか。

A.契約形態によって大きく変わります。会計年度任用職員なら健康保険・厚生年金・雇用保険の保険料と所得税・住民税が差し引かれ、保険料の半分は自治体が負担します。業務委託なら国民健康保険と国民年金を自分で払い、確定申告をして納税します。そのぶん必要経費を差し引けます。額面が高い業務委託が、必ずしも手元に残る額で有利とはかぎりません。加えて、家賃を全額自治体が負担する募集では、額面に表れない毎月数万円ぶんの差がつきます。

Q.任期が終わったあとの収入はどうなりますか。

A.総務省の令和7年度の調査では、直近5年間に任期を終えた8,762人のうち70.3%が同じ地域に定住しています。活動地と同じ市町村に定住した5,038人の内訳は、起業45.6%、就業34.8%、就農・就林11.6%、事業承継1.4%でした。一方で約3割は活動地を離れています。起業や事業承継には、任期2年目から任期終了後3年以内を対象に1人100万円、新規雇用などの要件を満たせば200万円を上限とする支援があります。

TownHub編集部

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全国の地域情報を取材・編集しています。自治体の公開情報と現地取材をもとに、その街で暮らす人に役立つ情報をお届けします。

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