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地域おこし協力隊は副業できるのか|契約形態で変わる可否

9分で読めます執筆: TownHub編集部
「地域おこし協力隊は副業できますか」に一言で答えられない理由を示した図。自治体ごとにルールが違うこと、兼業が認められる場合でも事前の申請や条件があること、活動内容や任期によって判断が変わること、副業の内容や時間による制限があることの4点を挙げている

地域おこし協力隊が副業や兼業をできるのかを、契約形態ごとに整理します。会計年度任用職員と業務委託で扱いがどう変わるのか、任期後の起業準備まで。

地域おこし協力隊に応募するとき、「副業はできますか」という質問に一つの答えはありません。同じ協力隊という名前でも、自治体があなたをどういう契約で迎えるかによって、適用される法律そのものが変わるからです。総務省と福島県内の自治体の公式情報をもとにまとめます。

副業の可否は契約形態で決まる

地域おこし協力隊は、総務省の推進要綱に基づいて各自治体が設置する制度です。要綱は「委嘱の方法、期間、名称等は、地域の実情に応じて弾力的に対応することで差し支えない」としており、契約形態そのものが自治体ごとに違います。

実務上は、大きく次の3つに分かれます。

  • 会計年度任用職員として任用される … 自治体に任用される地方公務員です。地方公務員法の服務規定が適用されます
  • 自治体と業務委託契約を結ぶ … 個人事業主です。自治体との間に雇用関係がないため、地方公務員法の適用を受けません
  • 受入事業者に雇用される … 自治体が民間企業や法人と契約し、隊員はその事業者の従業員等になります

制度そのものの成り立ちは地域おこし協力隊とはで扱っています。ここでは、この違いが副業の可否をどう分けるかを見ていきます。

会計年度任用職員の場合

会計年度任用職員は地方公務員です。総務省が自治体向けに公表している「地域おこし協力隊に関するよくある質問」は、この場合に適用される地方公務員法上の規定として、服務の宣誓、法令等及び上司の職務上の命令に従う義務、信用失墜行為の禁止、秘密を守る義務、職務に専念する義務、政治的行為の制限、争議行為等の禁止、営利企業への従事等の制限を挙げています。

副業に直接効くのは最後の「営利企業への従事等の制限」(地方公務員法第38条)です。そしてここでフルタイムとパートタイムの扱いが分かれます。

  • フルタイムの会計年度任用職員 … 第38条の制限がかかり、営利企業等に従事するには任命権者の許可が必要です。総務省のよくある質問は、許可にあたっては公務に支障を来すおそれがないよう十分留意しつつ、勤務形態等を勘案して必要に応じ弾力的な運用を行うことが可能だとしています
  • パートタイムの会計年度任用職員 … 総務省のよくある質問は、営利企業への従事等の制限の対象外であるとしています。ただし職務専念義務や信用失墜行為の禁止等の服務規律は適用されます

同じ資料は、勤務時間の長短にかかわらずパートタイムの会計年度任用職員に営利企業への従事等を一律に禁止することは適切ではないとしつつ、職務専念義務に支障を来すような長時間労働を行わないよう指導することなどは考えられる、とも書いています。

つまり「会計年度任用職員だから副業禁止」と決まっているわけではありません。フルタイムかパートタイムか、そして自治体がどう運用するかで結論が変わります。

業務委託(個人事業主)の場合

自治体と業務委託契約を結ぶ形では、雇用関係がないため地方公務員法の服務規定は適用されません。法律が副業を禁じる構図にはならない、ということです。

ただし自由というわけでもありません。実際の募集要項では、委託契約の条件として「活動に支障のない範囲」「村の許可があれば」といった枠がはめられているのが通例で、事前の相談や届け出を求める自治体もあります。

総務省のよくある質問は、副業をしながら協力隊の業務に従事する場合、協力隊としての業務の範囲・経理と、それ以外の業務の範囲・経理を明確に区別し、隊員としての活動実績を適正に把握・管理する必要があるとしています。協力隊以外の業務に協力隊の報償費等を充てることはできません。

もう一つ注意点があります。同じ資料は、形式的な契約形式にかかわらず、活動の実態上「労働者」であると判断されれば労働基準法などの労働関係法令が適用されると指摘しています。契約書の名前だけで実態が決まるわけではありません。

受入事業者に雇用される場合

自治体が民間企業や法人と契約し、隊員がその事業者の従業員や契約職員として働く形です。この場合、副業の可否はその事業者の就業規則によります。自治体の募集ページを見ても答えは書かれておらず、受入事業者ごとの求人票を読む必要があります。

福島県内の実例

契約形態で書きぶりがどれだけ変わるか、公式の募集要項で確かめられる例を挙げます。

磐梯町は、一つの町の中に複数の形が並ぶため比較しやすい例です。町の設置要綱は隊員を「任用型」と「委託型」に分け、任用型は地方公務員法上の会計年度任用職員、委託型は委嘱であって雇用契約及び雇用関係は存在しないものと定めています。さらに委託型には、町と直接業務委託契約を結ぶものと、受入事業者と雇用契約を結ぶものがあります。令和7年度の募集要項では、この3通りの扱いが次のように書き分けられていました。

  • 任用型(パートタイム会計年度任用職員) … 所定の届け出を行ったうえで勤務時間外に行う副業は可
  • 委託型(町と業務委託契約) … 活動に支障のない範囲で行う副業は可
  • 民間企業等受入型(受入事業者と雇用契約) … 待遇・福利厚生は受入民間事業者の就業規則に基づく

いわき市は1年目がフルタイムの会計年度任用職員です。市のページは、初年度は会計年度任用職員として活動するため、地方公務員法により副業や一部の起業準備活動(法人設立準備や収益が出る活動)は原則禁止されると明記しています。服務についても、地方公務員法第30条から第38条が適用されると書かれています。

浪江町が募集しているフリーミッション型も会計年度任用職員(フルタイム)としての任用で、募集要項は副業を「不可」とし、募集Q&A集も「副業できますか」に対して「副業はできません」と答えています。

飯舘村のフリーミッション型は個人事業主として村と委託契約を結ぶ形で、副業は村の許可があれば可能とされています。行う場合は事前に村へ相談すること、すでに副業がある場合は履歴書等に明記して応募することが求められ、地域住民からの信用を損なう副業は不可とされています。

会津若松市が令和8年度採用で募集している会計年度任用職員(専門員)の受験案内は、信用失墜行為の禁止・守秘義務・職務専念義務等の地方公務員法の規定の適用を受けるとしたうえで、営利企業等への従事(兼業)については職務に専念する義務や信用失墜行為の禁止等の観点から制限する場合があるという書き方をしています。「禁止」ではなく「制限する場合がある」です。

楢葉町は受入事業者が雇用する形です。認定特定非営利活動法人底上げの求人票は、楢葉町との雇用関係はないこと、副業が可能で、その際は事前に相談することを記載しています。

フルタイムの2市町は原則禁止または不可、パートタイムと明記された磐梯町の任用型は届け出のうえ勤務時間外なら可。自治体の方針の違いというより、任用形態の違いがそのまま出ています。福島県内の募集を契約形態で並べたものは福島県の地域おこし協力隊 契約形態の比較にあります。

任期中の起業準備と副業のあいだにある緊張

ここが、任期後に起業したい人にとって一番重要な部分です。

総務省の地域おこし協力隊推進要綱は、隊員等の起業・事業承継に要する経費について、任期2年目から任期終了後3年以内に活動地と同じ市町村内で起業する者または事業を引き継ぐ者を対象に、1人あたり100万円を上限(起業の場合に1人以上の新規雇用を行うなど一定の要件を満たせば200万円を上限)とする特別交付税措置を定めています。これは自治体に対する財政措置なので、実際にどう使えるかは自治体ごとに確認が必要ですが、制度が「任期中から起業の準備を始めること」を織り込んでいるのは確かです。同じ要綱には、地場産業等に従事する隊員が任期終了後の起業・事業承継のために活動期間を最長5年まで延長できる規定もあります。

一方で、フルタイムの会計年度任用職員として任用されれば、営利企業への従事等の制限がかかります。いわき市が「一部の起業準備活動(法人設立準備や収益が出る活動)は原則禁止」と書いているのは、まさにこの重なりの部分です。制度が想定している準備と、任用形態が課す制約が正面からぶつかります。

総務省のよくある質問はこの点について、会計年度任用職員として任用している隊員の許可権者を、隊員の普段の活動に精通している担当課の管理職とすることも考えられるとしたうえで、兼業等を通じて隊員が任期中から起業や就業に向けた準備をし、ひいては任期終了後に活動地域への定住・定着を図ることも重要であると述べています。運用側もこの緊張を認識したうえで、弾力的な運用を促しているということです。

実務としてどう解くかの一例が、いわき市の切り替えです。市は、2年目以降に活動地区での起業に係る準備を開始する場合、雇用関係を解消して個人事業主として市と委託契約を結び、協力隊活動を継続できるとしています。ただしこの切り替えは年度途中には行えず、原則として年度当初からとなり、希望する場合は前年度の10月までに市へ相談する必要があります。切り替えの可否は本人の希望をもとに市がそれまでの活動状況を踏まえて判断するとも書かれています。起業を目指すなら、いつ何を始めたいかから逆算して動く必要がある、という具体例です。

確定申告と社会保険

契約形態は、副業以外のところでも生活に効いてきます。

会計年度任用職員として任用される場合は、社会保険と雇用保険に加入するのが一般的です。いわき市は社会保険(健康保険、厚生年金保険)と雇用保険に加入すると書いており、磐梯町の任用型も健康保険・厚生年金・雇用保険に加入し、報酬の基本月額から所得税や社会保険料等が控除されるとしています。

業務委託(個人事業主)の場合は自分で手当てすることになります。飯舘村の募集要項は、雇用保険には加入せず、国民健康保険・国民年金保険等は各自で加入するよう求めています。磐梯町の委託型についても、健康保険および年金保険料等は全額自己負担と書かれています。同じ報酬額でも、手元に残る金額と自分で払う金額の見え方が任用型とはかなり変わります。税の申告や納付の取り扱いも契約形態によって変わるため、応募前に担当課で確認してください。

報酬そのものの水準や内訳は地域おこし協力隊の給料で扱っています。

応募前に確認すべきこと

副業を考えているなら、募集要項の次の欄を見てください。

  • 「雇用形態」「任用形態」「委嘱・雇用形態」 … 会計年度任用職員と書かれていれば地方公務員、業務委託・委託契約と書かれていれば個人事業主です。会計年度任用職員の場合は、フルタイムかパートタイムかまで確認してください
  • 「待遇・福利厚生」「勤務条件」 … 副業の可否はここに1行で書かれていることが多く、加入する保険の種類も同じ欄にあります
  • 「服務」 … 会計年度任用職員の募集では、適用される地方公務員法の条文が書かれていることがあります
  • 別添の質問集 … 要項本体になくても、募集Q&Aに「副業できますか」という項目が立っていることがあります

書かれていない場合は、応募前に担当課に聞いてください。同じ自治体でも、募集する職ごとに任用型と委託型が混在していることがあります。年度が変われば扱いが変わることもあるため、手元の募集要項が何年度のものかも必ず確認してください。

聞くときは「副業できますか」と聞くより、「任用形態は会計年度任用職員ですか、業務委託ですか」「会計年度任用職員ならフルタイムですか、パートタイムですか」「営利企業等への従事の許可は誰が出しますか」と分けて聞くほうが、答えがはっきりします。

この記事は総務省および各自治体の公式ホームページ・募集要項の情報をもとに作成しています。募集の内容や副業の取り扱いは年度ごとに変わることがあります。最新の情報は必ず応募先自治体の公式ホームページと、その年度の募集要項で確認してください。

よくある質問

Q.地域おこし協力隊は副業できますか。

A.契約形態によります。会計年度任用職員として任用される場合は地方公務員となり、地方公務員法の服務規定が適用されます。フルタイムの場合は営利企業等への従事に任命権者の許可が必要で、総務省のよくある質問ではパートタイムの会計年度任用職員は営利企業への従事等の制限の対象外とされています。業務委託(個人事業主)として委嘱される場合は雇用関係がないため地方公務員法の適用を受けませんが、活動に支障のない範囲、自治体の許可があれば、といった条件が委託契約の内容として付くのが通例です。募集要項の任用形態の欄を必ず確認してください。

Q.任期中に起業の準備をしてもよいですか。

A.総務省の推進要綱は、起業・事業承継に要する経費への特別交付税措置の対象を任期2年目から任期終了後3年以内としており、任期中から準備を始めることが制度上想定されています。ただしフルタイムの会計年度任用職員として任用されている場合、収益が出る活動や法人設立の準備が制限されることがあります。いわき市のように、2年目以降に雇用関係を解消して個人事業主へ切り替える仕組みを設けている自治体もあります。この切り替えは原則として年度当初からで、前年度の10月までに市へ相談することが求められています。

Q.募集要項のどこを見れば副業の可否が分かりますか。

A.まず「雇用形態」「任用形態」「委嘱・雇用形態」の欄で契約形態を確認し、次に「待遇・福利厚生」「勤務条件」の欄を見てください。副業の可否はここに1行で書かれていることが多く、加入する保険の種類も同じ欄にあります。会計年度任用職員の募集では「服務」の欄に適用される地方公務員法の条文が書かれていることもあります。要項本体に記載がなくても、別添の質問集に項目が立っていることがあります。見つからない場合は応募前に担当課へ問い合わせてください。

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