本文へスキップ

地域おこし協力隊の社会保険と確定申告|雇用か委託かで自分の手続きが変わる

約6分で読めます執筆: TownHub編集部
地域おこし協力隊の社会保険と確定申告を、雇われる形と委託の形に分けて示した図。会計年度任用職員は健康保険・厚生年金・雇用保険・労災保険に入り、税は年末調整で済むことが多い。業務委託は国民健康保険と国民年金に自分で入り、確定申告をする。国民年金保険料は月17,920円(令和8年度)、国民年金の届出は退職日の翌日から14日以内

地域おこし協力隊の社会保険と税の手続きを、会計年度任用職員として雇われる場合と、業務委託で個人事業主になる場合に分けて整理します。国民年金・国民健康保険の届出の期限、確定申告が要る条件、開業届と青色申告の期限、着任した年の住民税を、国と市町の公表資料で確かめました。

地域おこし協力隊の募集要項には、「会計年度任用職員として任用」と書かれたものと、「業務委託」「個人事業主」と書かれたものがあります。どちらになるかで、保険に入る手続き、保険料の払い方、税の申告を誰がするかが変わります。ここでは、国税庁・日本年金機構・厚生労働省・総務省の資料と、令和8年度の3つの市町の募集要項で、それぞれの形で自分がすることを確かめます。

報酬の額面と手取りの関係は地域おこし協力隊の給料・年収に、副業の可否は地域おこし協力隊は副業できるのかにまとめています。

2つの形で何が違うか

総務省の地域おこし協力隊取組ハンドブック(令和8年3月)は、会計年度任用職員として任用した場合、隊員は地方公務員法に基づき公務員の立場で活動し、厚生年金などの社会保険は自治体と隊員で折半になると説明しています。一方で、隊員がすでに個人で事業をしている場合などには、自治体と隊員が業務委託契約を結ぶこともある、としています。

令和8年度の募集で、それぞれの書き方を見ます。

市町形報酬保険と税についての記載
白河市(福島県)会計年度任用職員月額207,588円。年2回賞与あり健康保険、厚生年金、雇用保険、労災保険に加入
えりも町(北海道)業務委託(個人事業主)委託料 月額291,000円。時間外手当・賞与はなし国民健康保険税、国民年金保険料、所得税等は委託料から自己負担(各自納付)
階上町(青森県)業務委託(個人事業、または隊員が代表の法人)最大350万円を活動期間や内容で相談して決定保険や年金は各自で加入

えりも町の募集ページは、町との雇用契約は存在せず、隊員は個人事業主としての活動になる、と書いています。委託の形では、雇われる形なら勤め先がしてくれる手続きを、自分でします。

会計年度任用職員として雇われる場合

保険

白河市は、健康保険・厚生年金・雇用保険・労災保険に加入すると書いています。ハンドブックのとおり、厚生年金などの社会保険は自治体と隊員で折半です。どの保険に入るかは募集ごとに書き方が違うので、募集要項の「待遇」「福利厚生」の欄で確かめてください。

税

国税庁によると、年末調整は、勤め先が毎月の給与から源泉徴収した所得税と、1年間に納めるべき税額との差を精算するものです。年の途中で就職して年末まで勤めている人も、12月の年末調整の対象になります。国税庁は、大部分の給与所得者は年末調整で税額が確定し、確定申告の必要はない、としています。

ただし、雇われる形でも確定申告が要る場合があります。国税庁が挙げる条件のうち、隊員に関係しそうなのは次の2つです。

  • 給与を1か所から受けていて、その全部が源泉徴収の対象で、給与所得・退職所得以外の所得の合計額が20万円を超える人
  • 給与を2か所以上から受けていて、年末調整されなかった給与の収入金額と、給与所得・退職所得以外の所得との合計額が20万円を超える人

副業が認められている募集で副業の所得が20万円を超えたら、確定申告が要るということです。ここでいう所得は、収入から必要経費を引いた額です。白河市の募集要項は、活動に支障がない範囲で副業も可能で、必ず届出が必要としています。

業務委託で個人事業主になる場合

国民年金と国民健康保険に自分で入る

日本年金機構によると、日本国内に住む20歳以上60歳未満で厚生年金保険に入っていない人は、国民年金の第1号被保険者か第3号被保険者になります。会社を辞めて自営業者などになった場合は、第1号被保険者の手続きをして保険料を納めます。

項目内容
手続き先住所地の市区役所または町村役場
提出期限退職日の翌日から14日以内
持ちもの基礎年金番号かマイナンバーが分かるもの。退職直後なら資格喪失日を証明できるもの(離職票など)が要る場合がある
保険料月17,920円(令和8年度)
納付期限納付対象月の翌月末日

国民健康保険は、厚生労働省によると、日本国内に住所があり、ほかの医療保険に入っていない人などが加入します。加入したときは14日以内に、住んでいる市町村の国民健康保険の窓口に届け出ます。保険料の額や必要な書類は市町村ごとに違うので、移り住む市町村のホームページで確かめてください。

前の勤め先を辞めて委託の形で着任し、国民健康保険に入るなら、退職のあと、住所地の役場で国民年金と国民健康保険の2つの手続きをすることになります。

活動中のけがへの備え

白河市の募集要項には労災保険に加入すると書かれていますが、えりも町の募集ページに労災保険の記載はありません。そのかわりえりも町は、業務上の事故などに備えて傷害保険や賠償責任保険の加入手続きを町が行い、費用は活動経費から出すとしています。こうした備えがあるかどうかは町によって違うので、書かれていなければ応募前に聞いてください。

確定申告をする

委託の形では、年末調整をしてくれる勤め先がありません。えりも町が「所得税等は委託料から自己負担(各自納付)」と書いているとおり、自分で確定申告をして納めます。

国税庁によると、事業所得の金額は「総収入金額 − 必要経費」で計算します。自宅を仕事にも使う場合のように家事と仕事が混ざった経費は、仕事に必要な部分を明らかに区分できれば、その部分を必要経費にできます。

開業届と青色申告

新たに事業を始めた人が出す主な届出と期限は、国税庁によると次のとおりです。

届出提出期限
個人事業の開廃業等届出書(開業届)事業を始めた日の属する年分の確定申告期限まで
所得税の青色申告承認申請書青色申告をしようとする年の3月15日まで。1月16日以後に新たに事業を始めた場合は、始めた日から2か月以内

青色申告には青色申告特別控除があります。

控除額主な要件
55万円事業所得(または不動産所得)を生ずべき事業を営み、複式簿記で記帳し、貸借対照表と損益計算書を添えて期限(翌年3月15日)までに申告する
65万円55万円の要件に加えて、帳簿を電子帳簿で保存するか、e-Taxで申告する
10万円上の要件に当てはまらない青色申告者

春に着任して協力隊の活動を事業として始めるなら、青色申告承認申請書の期限は「始めた日から2か月以内」です。3月15日ではありません。

注意したいのは、55万円・65万円の控除の要件が事業所得か不動産所得になっていることです。国税庁は、副業にかかる所得のうち営利を目的とした継続的なものを「業務に係る雑所得」として別に扱っています。協力隊の委託料が事業所得と雑所得のどちらにあたるかは、公式資料で一律の答えを見つけられませんでした。開業届や青色申告承認申請書を出す前に、所轄の税務署で確かめてください。

着任した年の住民税

総務省によると、個人住民税はその年の1月1日時点で住所がある市町村(都道府県)が課税し、税額は前年の1月1日から12月31日までの所得で計算します。

つまり、春に移り住んで着任した年度の住民税は、その年の1月1日に住んでいた市区町村から、着任する前の年の所得をもとにかかります。前の年に会社員として稼いでいた人は、協力隊の報酬の水準とは関係なく、前の年の所得に応じた額を納めることになります。

納め方には、市町村から届く納税通知書で自分で納める「普通徴収」と、給与を払う側が給与から差し引いて納める「特別徴収」があります。総務省は会社員について、原則として特別徴収になると説明しています。委託の形で給与を受け取らないなら、差し引いてくれる勤め先はありません。

任期の途中や終わりに形が変わるとき

いわき市は、1年目はフルタイムの会計年度任用職員で、2年目以降に活動地区での起業の準備を始める場合、雇用関係を解消して個人事業主として市と委託契約を結び直すことができるとしています。切り替えは原則として年度当初からで、希望する場合は前年度の10月までに市と相談するよう案内しています。いわき市は、個人事業主のため期末勤勉手当は発生しない、とも書いています。

こうして雇われる形から委託の形に移るときも、任期を終えて起業するときも、退職日の翌日から14日以内に国民年金の手続きが要ります。国民健康保険に入る場合も、加入したときは14日以内の届出です。副業の扱いがどう変わるかは地域おこし協力隊は副業できるのかにまとめました。

任期後の起業の支援は地域おこし協力隊の任期後にまとめました。

応募する前に確かめること

  1. 任用か委託か。会計年度任用職員なら、入る保険の種類が募集要項に書かれているか
  2. 委託なら、国民健康保険・国民年金・所得税を自分で払う前提の額か。委託料から自己負担と書く町がある
  3. 活動中のけがや事故への保険を町が手配するか
  4. 副業が認められるか。認められて所得が20万円を超えそうなら、雇われる形でも確定申告が要る
  5. 着任した年の住民税は前の住所地から前の年の所得で来る。その分を手元に残しておく
  6. 委託の形で青色申告をするなら、始めた日から2か月以内に申請が要る。所得の区分は税務署で確かめる

本記事は、国税庁のタックスアンサー(令和8年4月1日現在法令等)、日本年金機構・厚生労働省・総務省の公表資料と、白河市・えりも町・階上町の令和8年度の募集要項、いわき市の募集ページをもとにしています(2026年9月29日確認)。保険料や税の取り扱いは改正されることがあります。最新の情報は各機関と応募先の募集要項で確かめてください。

よくある質問

Q.地域おこし協力隊は社会保険に入れますか。

A.形によって違います。会計年度任用職員として雇われる場合は、白河市のように健康保険・厚生年金・雇用保険・労災保険に入る募集があり、総務省のハンドブックは厚生年金などの保険料は自治体と隊員で折半としています。業務委託で個人事業主になる場合は、国民健康保険と国民年金に自分で入ります。

Q.業務委託の協力隊になったら、国民年金の手続きはいつまでにしますか。

A.日本年金機構によると、会社を辞めて自営業者などになる場合、第1号被保険者の手続きを退職日の翌日から14日以内に、住所地の市区役所または町村役場で行います。保険料は令和8年度で月17,920円です。国民健康保険も、加入したときは14日以内に市町村の窓口へ届け出ます。

Q.会計年度任用職員の協力隊でも確定申告が要りますか。

A.多くは年末調整で済みます。ただし、給与を1か所から受けていて、給与所得・退職所得以外の所得の合計額が20万円を超える場合などは、確定申告が必要です。副業の所得が20万円を超えたときが当てはまります。

Q.委託型の協力隊は青色申告ができますか。

A.青色申告の55万円・65万円の特別控除は、事業所得か不動産所得を生ずべき事業を営んでいることが要件です。協力隊の委託料が事業所得と雑所得のどちらにあたるかは一律の答えが見つからなかったため、所轄の税務署で確かめてください。1月16日以後に事業を始めた場合、青色申告承認申請書は始めた日から2か月以内に出します。

Q.協力隊に着任した年の住民税はどうなりますか。

A.個人住民税は、その年の1月1日時点の住所がある市町村が、前の年の所得で課税します。春に着任した年度の住民税は、1月1日に住んでいた市区町村から、着任前の年の所得をもとにかかります。

TownHub編集部

編集部

全国の地域情報を取材・編集しています。自治体の公開情報と現地取材をもとに、その街で暮らす人に役立つ情報をお届けします。

ほかのガイド

同じ制度の別の側面もあわせてどうぞ

ガイド一覧 →