北海道移住が「やめとけ」と言われる理由|物価・仕事・冬を数字で見る
北海道移住に「やめとけ」「後悔した」と言われる理由を、物価指数・有効求人倍率・気温・積雪の公的統計で一つずつ確かめます。
北海道移住を調べると「やめとけ」「後悔した」、さらには「いじめ」という語まで並びます。多くは個人の体験談で、確かめようがありません。ここでは公的な統計で測れるものを先に確かめ、測れないものは測れないと書きます。順に見ていきます。
言われていることを、測れるかどうかで分ける
先に結論を並べます。
| 言われていること | 公的な数字での確かめ |
|---|---|
| 物価が高い | 事実。家賃を除く総合は全国1位 |
| 暖房費がかかる | 事実。光熱・水道の物価指数は全国1位 |
| 仕事がない | 求人倍率は全国を下回る。とくに札幌圏が低い |
| 冬が厳しい | 事実。札幌の1月は日最高でも氷点下、積雪137センチメートル |
| 家賃は安い | 事実。住居の指数は87.1で全国36位 |
| 人間関係がつらい・いじめがある | 公的統計では測れない |
最後の1行が重要です。地域の人間関係を測った公的な統計はありません。 無いものを「無い」と証明することもできません。この記事では、測れるものを数字で示し、人間関係については「どう確かめるか」だけを書きます。
物価|家賃を除くと全国1位
最も裏付けがはっきりしているのがここです。総務省の消費者物価地域差指数(小売物価統計調査 構造編・2024年結果)で、北海道は次のようになっています。
| 費目 | 北海道の指数 | 47都道府県中の順位 |
|---|---|---|
| 総合 | 101.9 | 3位 |
| 家賃を除く総合 | 103.0 | 1位 |
| 光熱・水道 | 119.6 | 1位 |
| 食料 | 102.3 | 6位 |
| 家具・家事用品 | 101.6 | 13位 |
| 住居 | 87.1 | 36位 |
家賃を除いた物価は、北海道が全国で最も高いという結果です。総合でも3位でした。
突出しているのは光熱・水道の119.6で、全国平均を約2割上回ります。これも全国1位です。北海道の冬は長く、暖房を止められません。灯油代や電気代がそのまま指数に出ています。
安いのは住居の87.1(36位)だけです。「家賃が安いから生活が楽になる」と考えて移ると、光熱費と食費でその分を失います。家賃で浮いた分が暖房費に消えるというのが、この統計から読める構造です。
冬|1月は日最高気温でも氷点下
気象庁の平年値(1991年から2020年)で札幌を見ます。
| 項目 | 札幌 | 参考:東京 |
|---|---|---|
| 1月の平均気温 | −3.2℃ | 5.4℃ |
| 1月の日最高気温 | −0.4℃ | 9.8℃ |
| 1月の日最低気温 | −6.4℃ | 1.2℃ |
| 1月の最深積雪 | 137センチメートル | 4センチメートル |
| 年間の降雪の深さ合計 | 479センチメートル | - |
| 年平均気温 | 9.2℃ | - |
1月は日最高気温でも氷点下です。日中も気温が0℃を超えない日が続きます。
積雪は生活そのものに関わります。1月の最深積雪は平年で137センチメートル、年間の降雪の深さは479センチメートルに達します。除雪は日課になり、住まいを選ぶときは屋根の形状、駐車場の除雪、玄関前の雪の置き場所まで検討事項になります。灯油タンクの容量と補給の手配も必要です。
一方で夏は過ごしやすく、札幌の8月は平均22.3℃(東京26.9℃)です。北海道の気候は「夏が快適で冬が厳しい」という振れ幅で捉えるのが正確です。
仕事|全国を下回り、札幌ほど低い
北海道労働局が公表している安定所別の月間有効求人倍率(常用)は、令和7年度で全道0.91倍でした。全国の1.10倍を下回ります。
推移も下向きです。
| 年度 | 全国 | 全道 |
|---|---|---|
| 令和元年度 | 1.41倍 | 1.19倍 |
| 令和4年度 | 1.19倍 | 1.09倍 |
| 令和5年度 | 1.17倍 | 1.00倍 |
| 令和6年度 | 1.14倍 | 0.95倍 |
| 令和7年度 | 1.10倍 | 0.91倍 |
5年連続で低下しています。ただし「仕事がない」と一括りにするのは正確ではありません。地域差が大きいためです。
| 安定所 | 令和7年度の有効求人倍率 |
|---|---|
| 札幌東 | 0.67倍 |
| 札幌北 | 0.79倍 |
| 札幌 | 0.91倍 |
| 千歳 | 0.91倍 |
| 岩内 | 1.79倍 |
| 根室 | 1.56倍 |
| 紋別 | 1.56倍 |
| 浦河 | 1.54倍 |
最も低いのは札幌圏です。移住先として人気のある札幌ほど、求職者に対する求人が少なくなります。詳しくは北海道移住の仕事の探し方にまとめました。
人間関係|統計では測れない
「いじめ」という語で検索されるほど、地域の人間関係への不安は大きいようです。ここについては、次の3点しか誠実に書けません。
第一に、公的な統計はありません。 移住者と地域住民の関係を測った調査を北海道は公表していません。個別の体験談は多くありますが、それが北海道全体に当てはまるかどうかは確かめようがありません。
第二に、参考になる数字はあります。 道の移住体験「ちょっと暮らし」の利用者アンケート(令和6年度・回収424名)では、滞在によって得られた情報として「人柄などの地域性」を43%が挙げています。地域の生活情報76%、気候等の地域情報61%、地域の交通情報44%に次ぐ4番目です。滞在すれば分かる、ということでもあります。
同じ調査で、「もう一度、同じ市町村でちょっと暮らしをしてみたいか」に84%が「はい」と答え、満足度は5点満点で平均4.4点、「大変満足」「満足」が合わせて85%でした。少なくとも短期滞在の範囲では、否定的な評価が多数を占めてはいません。
第三に、確かめる方法はあります。 北海道は道内の市町村が運営する移住体験住宅「ちょっと暮らし」を持っており、令和6年度は106市町村で実施し、95市町村で実績がありました。平均滞在日数は19.3日です。3週間ほど暮らしてみれば、その地域が自分に合うかどうかはある程度分かります。制度の詳細は北海道に夏だけ住むにまとめました。
地域とのつきあい方は市町村より小さい単位、つまり自治会や集落ごとに違います。「北海道はどうか」ではなく「その集落はどうか」を、滞在して確かめるのが唯一の方法です。
有利な点も数字に出ている
否定的な材料だけを並べるのは公平ではありません。
移住支援金の対象が広い。179市町村のうち140市町村(約78%)が対象で、札幌市も含まれます。沖縄県は41市町村中5市町村です。金額は2人以上の世帯で100万円、18歳未満の子ども1人につき100万円が加算されます。詳細は北海道の移住支援金にあります。
家賃は安い。住居の物価指数87.1は全国36位です。
夏が涼しい。札幌の8月は平均22.3℃、釧路は18.2℃で東京より8.7℃低くなります。
地域おこし協力隊という入り方がある。北海道の隊員数1,374人は全国1位で、任期後の定住率78.3%は全国平均70.3%を上回ります。北海道の地域おこし協力隊にまとめました。
誰なら向くのか
数字から言えることを整理します。
向きやすい人
- 収入が土地に左右されない働き方の人。全道0.91倍という求人倍率の影響を受けません
- 光熱費が上がることを織り込める人。光熱・水道の指数は全国1位です
- 除雪を負担と思わない人、または除雪の少ない地域を選べる人
- 夏の涼しさに価値を感じる人
- 地方部で働くことに抵抗がない人。求人倍率は札幌圏より地方部が高い水準です
慎重に考えたほうがよい人
- 家賃の安さだけで家計が楽になると考えている人
- 札幌で仕事を見つけてから移ろうと考えている人。札幌東は0.67倍です
- 冬を体験せずに決めようとしている人
- 完全移住しか選択肢に入れていない人。道の調査では二地域居住33%が完全移住29%を上回ります
「やめとけ」という言葉は、誰にでも当てはまるものではありません。確かめるべきなのは北海道の評判ではなく、自分の家計と仕事が、この数字の下で回るかです。そして人間関係については、統計ではなく滞在で確かめるしかありません。
北海道全体の条件は北海道移住の始め方にまとめています。
本記事の数字は、総務省・気象庁・北海道労働局・北海道が公表している資料によります。時点を本文に記していますので、判断するときは最新の公表値で確かめてください。
よくある質問
Q.北海道移住はやめたほうがいいのですか。
A.条件によります。物価は家賃を除く総合が全国1位、光熱・水道も全国1位で、有効求人倍率は全道0.91倍と全国の1.10倍を下回ります。一方で家賃は全国36位と安く、移住支援金は179市町村のうち140市町村が対象です。自分の仕事と家計が回るかどうかで判断が分かれます。
Q.北海道は物価が安いのではないのですか。
A.安くありません。総務省の消費者物価地域差指数(2024年結果)で北海道は家賃を除く総合が103.0で全国1位、光熱・水道は119.6で全国1位です。安いのは住居87.1(36位)だけで、家賃で浮いた分が暖房費に回る構造です。
Q.北海道移住で「いじめ」があるというのは本当ですか。
A.移住者と地域住民の関係を測った公的統計はなく、確かめようがありません。無いことを証明することもできません。道の移住体験アンケートでは滞在で得られた情報として「人柄などの地域性」を43%が挙げており、同じ市町村でまた滞在したいと84%が答えています。滞在して確かめるのが唯一の方法です。
Q.北海道の冬はどれくらい厳しいですか。
A.気象庁の平年値で札幌の1月は平均マイナス3.2℃、日最高でもマイナス0.4℃と終日氷点下です。1月の最深積雪は137センチメートル、年間の降雪の深さは479センチメートルあります。東京の1月の平均は5.4℃、最深積雪は4センチメートルです。
Q.北海道は仕事がないのですか。
A.令和7年度の有効求人倍率(常用)は全道0.91倍で全国の1.10倍を下回り、5年連続で低下しています。ただし地域差が大きく、札幌東0.67倍・札幌北0.79倍に対して岩内1.79倍・根室1.56倍・紋別1.56倍と、地方部のほうが高い分布です。
Q.北海道移住で有利な点は何ですか。
A.家賃が安いこと(住居の物価指数87.1・全国36位)、移住支援金の対象が140市町村と広く札幌市も含まれること、夏が涼しいこと(札幌の8月は平均22.3℃、釧路は18.2℃)、地域おこし協力隊の受入が全国最多で定住率78.3%と高いことです。
Q.移住前に何を確かめればよいですか。
A.冬を体験することです。夏だけを見て決めると1月の積雪137センチメートルで想定が狂います。道内106市町村が移住体験住宅「ちょっと暮らし」を実施しており、平均滞在日数は19.3日です。地域とのつきあい方も滞在してみないと分かりません。