大船渡市の地域おこし協力隊|受入事業者ごとの報酬と支援
大船渡市の地域おこし協力隊について、受入事業者ごとに異なる報酬と支援をまとめます。
大船渡市は、令和7年度に27人の地域おこし協力隊が活動した、岩手県内で2番目に隊員が多い市です。ただし「大船渡市の協力隊はいくらもらえるのか」という問いに、市の募集ページは一つの金額で答えていません。その理由も含めて、大船渡市の公式情報をもとにまとめます。
報酬が「市の一律の額」ではなくなった理由
大船渡市が地域おこし協力隊を導入したのは平成28年度です。そのうえで市は現在、活動内容や働き方に応じて3つの雇用形態を用意しています。
- 団体委託型…企業や団体が受入事業者となり、隊員を雇用する形
- 会計年度職員型…市が会計年度職員として任用する形(募集停止中)
- 個人事業主型…市と隊員個人が委託契約を結ぶ形(募集停止中)
このうち会計年度職員型と個人事業主型は、市のページに募集停止中と明記されています。動いているのは団体委託型だけです。
団体委託型は、市が令和6年度から導入したしくみです。市の説明では、企業や団体等から隊員と共に取り組む地域課題の解決のための活動を提案してもらい、市がその内容を審査して当該企業や団体等を「受入事業者」として選定したうえで、隊員を募集するものとされています。手順は次のように示されています。
- 企業や団体等が、協力隊と共に活動したい事業を提案する
- 市が提案内容を審査し、企業や団体等を受入事業者に選定する
- 市が隊員を募集し、選考により隊員を決定する
- 受入事業者と隊員が雇用契約を締結する
- 受入事業者と市が委託契約を締結する
- 市が隊員を委嘱する
- 受入事業者と隊員が活動を開始する
雇用形態については、各受入事業者が雇用した上で、大船渡市が地域おこし協力隊員として委嘱する委託型(団体委託型)となる、と市は明記しています。委嘱期間は年度ごとに更新し、最長3年間です。募集要項では、雇用するのは受入事業者、委嘱するのは市長、と役割が分けて書かれています。
つまり、給与を決めているのは市ではなく、雇い主である受入事業者です。そのため市の協力隊ページには一律の報酬額が載りません。金額も、休日も、家賃補助の上限も、案件ごとに違います。制度そのものの全国共通の枠組みは地域おこし協力隊とは何かで説明しています。
隊員数は27人で県内2位、1年で14人増えた
総務省が令和8年4月24日に公表した令和7年度の集計では、大船渡市で活動した地域おこし協力隊は27人でした。岩手県全体では348人、受け入れた自治体は33団体です。
県内で隊員が多い自治体を並べると次のようになります。
- 一関市…32人
- 大船渡市…27人
- 遠野市…19人
- 釜石市・洋野町・西和賀町…各18人
- 盛岡市・岩泉町…各17人
大船渡市は一関市に次ぐ県内2位です。県庁所在地の盛岡市が17人であることと比べても、人口規模のわりに受入が厚いといえます。
さらに目立つのは増え方です。前年度(令和6年度)の集計では大船渡市は13人でした。1年で14人増えて27人になった計算で、これは岩手県内で最も大きな増加幅です。次に増えたのは釜石市と一関市の各9人、西和賀町の8人でした。逆に岩泉町は28人から17人へ、大槌町は20人から14人へと減っており、県内でも動きの方向は分かれています。
この14人増は、市が団体委託型を導入した令和6年度以降の時期にあたります。ただし増加の要因を市が説明した資料は見つかりませんでした。県内のほかの市町村と条件を並べて比べたい場合は岩手県の地域おこし協力隊 待遇比較を参照してください。
受入事業者ごとの報酬と休日
市の協力隊ページに掲載されている案件のうち、令和8年8月6日に更新された8件の条件は次のとおりです。8件はいずれも受入事業者による雇用で、事業者の数は6社・団体です。
大船渡秋刀魚だし黒船(地域資源を活用した新たな食のブランド創出と事業モデル構築/募集人数2人)
- 賃金…月額300,000円(賞与あり)
- 勤務時間…午前10時から午後7時(休憩60分)、休日はシフトにより年間96日
- 家賃補助…月額30,000円が上限。ガソリン代補助と車両借上代もあり(上限額の記載なし)
合同会社元玲(AIを活用した地域事業者の業務効率化・省力化推進及び地域DX普及促進/空き店舗活用による地域交流拠点づくり/各1人)
- 賃金…給与・賞与合計で年間最大350万円。会社規定に沿った給与と賞与で、2年目・3年目に年次昇給を行う予定
- 勤務時間…フレックス制で原則午前9時から午後4時(休憩1時間)、週休2日
- 家賃補助…月額50,000円が上限。ガソリン代補助・車両借上代補助はそれぞれ月額20,000円が上限
すけだちBOOKS(古本・防災・農業など地域資源を活かした拠点づくり/1人)
- 賃金…月額260,000円(賞与あり)
- 勤務時間…午前10時から午後6時30分(休憩60分)、完全週休二日制と夏季・冬季休暇
- 家賃補助…月額50,000円が上限。ほかに研修費(参加費・旅費・宿泊料等)の支援あり
中井測量設計株式会社(森林資源を活用した関係人口創出と地域連携モデル構築/1人)
- 賃金…月額220,000円(期末手当あり)。就労年数や事業の進捗により増額調整する場合あり
- 勤務時間…午前8時30分から午後5時30分(休憩100分)、休日は第2・第4土曜と日曜・祝日、夏季・冬季休暇
- 家賃補助…月額30,000円が上限
特定非営利活動法人おはなしころりん(住民主体の地域コミュニティづくりと複業/1人)
- 賃金…月額220,000円
- 勤務時間…1日8時間のフレックスタイム制で週3日勤務、休日は週4日
- 家賃補助…月額50,000円
三陸ふるさと振興株式会社(入浴施設・サウナを核とした地域拠点づくり/道の駅さんりくを核とした地域拠点モデル構築/各1人)
- 賃金…いずれも月額200,000円
- 勤務時間…午前8時30分から午後5時30分(休憩60分)、休日は毎週火曜・水曜
- 家賃補助…月額50,000円が上限
同じ市の同じ制度でも、月額20万円から30万円まで、休日も年間96日から週4日まで開きがあります。事業者名まで見ないと条件は決まらない、というのが大船渡市の協力隊の実態です。金額の考え方そのものは地域おこし協力隊の給与のしくみで整理しています。
「家賃補助あり」で比べてはいけない
住まいの支援は、案件の見出しだけを見るとどれも「家賃補助あり」に見えます。しかし市のページに掲載されている25件の案件を通して見ると、上限額は同じではありません。
- 月額50,000円が上限…19件
- 月額30,000円が上限…2件
- 月額25,000円が上限…2件
- 月額20,000円が上限…1件
- 家賃補助と書かれているが金額の記載がない…1件
上限額が倍以上違えば、手取りの感覚も変わります。ガソリン代補助や車両借上代も、月額20,000円を上限とするもの、上限額を書いていないもの、そもそも項目がないものが混在しています。待遇欄は必ず案件ごとに原文で読んでください。
赴任の費用は自己負担
令和8年8月6日に更新された8件には、すべてに「本市に赴任する際の費用は、自己負担とします」と明記されています。引っ越しにかかる費用は隊員が負担する前提です。
選考の途中で案内される現地説明会についても、旅費や滞在費を含む参加費用は自己負担と市は明記しています。
社会保険(健康保険・厚生年金・雇用保険)への加入は、掲載されているほとんどの案件で明記されています。
「活動経費」という独立した枠はない
会計年度任用職員として採用する自治体では、報酬とは別に活動経費の枠が示されることがあります。大船渡市の団体委託型の案件ページには、活動経費という独立した項目はありません。住まいや車にかかる支援は、家賃補助・ガソリン代補助・車両借上代補助という個別の項目として待遇欄に並んでいます。
ただし案件によっては、活動に必要な費用を受入事業者が負担すると書かれているものもあります。椿事業に関わる案件では交通費や宿泊費など、「バイクの駅大船渡」を拠点とする案件では資格取得費用や通信費などについて、受入事業者が負担すると記載されています。どこまでが事業者負担でどこからが自己負担かは、案件ごとに確認が必要です。
応募の条件と選考の流れ
各案件の募集要項によると、応募できるのは次のすべてを満たす20歳以上の方です。8件の要項はいずれも同じ条件を掲げています。
- 三大都市圏の都市地域等に現住所がある方、他の市町村で地域おこし協力隊であった方(同一地域で2年以上活動し、解嘱後1年以内)、または語学指導等を行う外国青年招致事業を修了した方(2年以上活動し、修了から1年以内)のいずれかに該当し、委嘱後すみやかに大船渡市へ生活の拠点を移して住民票を異動できる方
- 活動内容に興味があり、受入事業者や地域住民と協力して活動できる方
- 心身ともに健康で、誠実に職務を行うことができる方
- 普通自動車運転免許を取得しているか、着任までに取得できる方(オートマチック限定可)。ただし受入事業者が認める場合に限り、この要件を付さないことがあります
- 活動期間の終了時に、大船渡市で就業または起業し、定住する意欲のある方
選考は次の順で進みます。
- プレエントリー…氏名・年齢・現住所・希望する活動テーマなどを記載して、企画調整課へメールで申し込む
- 説明会…プレエントリー後、オンラインで活動内容などを個別に説明
- 本エントリー…1次選考に向けて書類を提出
- 1次選考…応募書類による書類選考
- 2次選考…市内で対面の面接。海外在住などやむを得ない事情がある場合は、事前の相談によりオンライン面接が認められることがあります
1次選考を通過した方には現地説明会の案内があります。費用は自己負担ですが、先輩移住者に会って話を聞いたり活動を体験したりできます。参加の有無は選考に関係しないと市は明記しており、参加せずに2次選考へ進むこともできます。
任期を終えた隊員の報告が読める
大船渡市は隊員の活動報告会を開き、発表資料を公開しています。令和7年8月には、ワインぶどう産地化事業に取り組んだ今井雄一隊員(活動期間は令和4年4月から令和7年3月)と、廃校を活用した交流施設「甫嶺復興交流推進センター」を中心に体験創出に取り組んだ木﨑和也隊員(活動期間は令和4年9月から令和7年8月)の報告会が開かれました。令和6年3月にも、水産資源の魅力発信事業と情報通信技術の活用事業の隊員による報告会が開かれています。
3年間で何をどこまで進められたのかが、本人の資料で読めます。応募を考えているなら、募集条件よりも先にこちらを読むほうが判断材料になります。
復興支援員は協力隊とは別の制度
大船渡市は東日本大震災の被災地であり、地域おこし協力隊とは別に復興支援員も受け入れてきました。総務省の資料では、令和7年度の大船渡市の復興支援員は7名で、災害公営住宅におけるコミュニティ支援やパーソナルサポート等に従事していました。
この2つは根拠となる要綱も財源も違う別の制度です。復興支援員は平成24年に定められた復興支援員推進要綱にもとづき、震災復興特別交付税で措置されてきました。
そして令和8年3月27日付けの要綱改正(総行応第69号)により、対象となる被災地方自治体は福島県および福島県内市町村に限定され、その他の団体については令和7年度で措置を終了することとされました。大船渡市の復興支援員もこの「その他の団体」にあたります。総務省は同じ通知で、コミュニティ再構築に向けた取組には復興支援員制度を引き続き活用する一方、一般的な地域振興の取組については地域おこし協力隊等の一般施策を積極的に活用するよう求めています。
大船渡市の協力隊の案件には、災害公営住宅団地でのコミュニティづくりを扱うものもあり、活動分野は復興支援員と重なって見えることがあります。それでも制度としては別です。隊員数を見るときに、協力隊の27人と復興支援員の7人を足さないでください。7名は協力隊の実績ではありません。
この記事は大船渡市公式ホームページおよび総務省の公表資料をもとに作成しています。報酬・勤務時間・休日・家賃補助などの条件は受入事業者ごとに異なり、募集の状況や内容は変わることがあります。最新の情報は必ず大船渡市の公式ホームページで確認してください。
よくある質問
Q.大船渡市の地域おこし協力隊の報酬は月額いくらですか。
A.一つの額に決まっていません。令和6年度から団体委託型に移り、受入事業者が雇用して市が委嘱する形になったため、金額は雇い主である事業者ごとに違います。令和8年8月6日に更新された8件では、三陸ふるさと振興株式会社の2件が月額200,000円、おはなしころりんと中井測量設計が月額220,000円、すけだちBOOKSが月額260,000円、大船渡秋刀魚だし黒船が月額300,000円で、合同会社元玲の2件は給与・賞与合計で年間最大350万円と示されています。
Q.家賃補助はどのくらい出ますか。赴任の費用は補助されますか。
A.家賃補助はどの案件にもありますが、上限額が違います。掲載されている25件では、月額50,000円が上限のものが19件、30,000円が2件、25,000円が2件、20,000円が1件、金額の記載がないものが1件です。「家賃補助あり」という表記だけで比べないでください。なお赴任にかかる費用は自己負担で、令和8年8月6日更新の8件すべてに明記されています。
Q.応募に年齢や住まいの条件はありますか。
A.20歳以上で、三大都市圏の都市地域等に現住所がある方が対象です。ほかに、他の市町村で2年以上活動して解嘱後1年以内の元隊員、語学指導等を行う外国青年招致事業を修了して1年以内の方にも道があります。いずれの場合も委嘱後すみやかに大船渡市へ住民票を移せることが条件です。普通自動車運転免許(オートマチック限定可)も原則必要ですが、受入事業者が認める場合はこの要件を付さないことがあります。
Q.隊員は何人いますか。復興支援員とは違うのですか。
A.総務省の令和7年度の集計では27人で、一関市の32人に次ぐ県内2位です。前年度の13人から14人増えており、これは岩手県内で最も大きな増加幅でした。復興支援員はこれとは別の制度で、根拠となる要綱も財源も違います。令和7年度の大船渡市には復興支援員が7名いましたが、令和8年3月27日付けの要綱改正により、福島県および福島県内市町村以外の団体は令和7年度で措置が終了しています。協力隊の27人と復興支援員の7人を合算しないでください。
参考にした公式ページ
- 地域おこし協力隊 団体委託型|大船渡市
- 大船渡市地域おこし協力隊(制度概要・応募手続及び選考方法)|大船渡市
- 雇用形態|大船渡市
- ※募集停止中 地域おこし協力隊 会計年度職員型|大船渡市
- ※募集停止中 地域おこし協力隊 個人事業主型|大船渡市
- 地域資源を活用した新たな食のブランド創出と事業モデル構築プロジェクト(大船渡秋刀魚だし黒船)|大船渡市
- AIを活用した地域事業者の業務効率化・省力化推進及び地域DX普及促進事業(合同会社元玲)|大船渡市
- 空き店舗活用による地域交流拠点づくり及び持続可能な空き店舗活用モデル構築事業(合同会社元玲)|大船渡市
- 自然×入浴施設・サウナ×人をつなぐ地域拠点づくり事業(三陸ふるさと振興株式会社)|大船渡市
- 道の駅さんりくを核とした地域拠点モデル構築事業(三陸ふるさと振興株式会社)|大船渡市
- 古本(アート全般含む)・防災・農業など地域資源を活かした持続可能な「風の谷」つくり事業(すけだちBOOKS)|大船渡市
- 住民主体による持続可能な地域コミュニティづくり×複業(特定非営利活動法人おはなしころりん)|大船渡市
- 森林資源を活用した関係人口創出及び地域連携モデル構築事業(中井測量設計株式会社)|大船渡市
- 大船渡市地域おこし協力隊 募集要項(おはなしころりん・PDF)|大船渡市
- 大船渡の海を活かした新たな「海業」の開発|大船渡市
- 大船渡クリーンリサイクルプロジェクト(地域資源と海洋プラスチックの再活用)|大船渡市
- 大船渡市移住定住総合支援事業|大船渡市
- 椿事業に関わる販路開拓、生産者の拡大|大船渡市
- 「バイクの駅大船渡」を拠点とする大船渡モーターツーリズムの情報発信|大船渡市
- 活動報告会|大船渡市
- 【令和7年8月】ワインぶどう産地化事業(今井雄一隊員)、廃校を活用した体験創出事業(木﨑和也隊員)の活動報告会を開催しました|大船渡市
- 令和7年度における地域おこし協力隊の活動状況等(総務省)
- 令和7年度 地域おこし協力隊の隊員数等について(総務省・PDF)
- 令和6年度 地域おこし協力隊の隊員数等について(総務省・PDF)
- 復興支援員(総務省)
- 復興支援員推進要綱の一部改正等について(令和8年3月27日付け通知・総行応第69号・PDF)(総務省)
- 令和7年度「復興支援員」取組状況(総務省・PDF)
情報は変わることがあります。最新の内容は各公式ページでご確認ください。