売木村の地域おこし協力隊|村内事業者の後継者として募る「事業継承」の枠

長野県で2番目に人口の少ない売木村は、後継者のいない村内の事業者のもとで協力隊を後継候補として育てる枠を設けています。事業者ごとの条件と、村が1人ずつ公表している活動経費をまとめます。
売木村は長野県の南の端にある村です。村長は村のホームページで、売木村を「長野県で2番目に人口の少ない村」と紹介しています。この小さな村が、令和7年度は13人の地域おこし協力隊を受け入れていました。売木村の協力隊の特徴は、後継者のいない村内の事業者のもとで、協力隊を「後継候補」として育てる事業継承の枠があることです。売木村・長野県・総務省の公表資料をもとにまとめます。
小さな村で13人
総務省の集計では、売木村の隊員数は次のとおりです。
- 令和6年度…11人
- 令和7年度…13人
長野県全体では、令和6年度の545人から令和7年度の477人へ68人減っています。売木村はその中で人数が増えた側です。県全体の動きは長野県の地域おこし協力隊にまとめています。
長野県が公表している一覧では、令和8年4月1日現在の売木村の隊員は10人です。総務省の数は1年間を通して活動した人の数、県の数はある1日に在籍していた人の数なので、数え方が違います。どちらかが誤りというわけではありません。
村の面積は43.4平方キロメートルです。村長の紹介文には、標高820メートルから950メートルの準高冷地で、夏の寒暖差がトウモロコシ・トマト・ミョウガの旨味を高めると書かれています。
後継者として募る「事業継承」の枠
村は令和5年3月、協力隊を受け入れる村内の事業者を「支援機関」として募集しました。募集要綱には、そのねらいが次のように書かれています。
- 村内の事業者の高齢化や後継者不足で、地域経済を支える産業の衰退が深刻になっている
- 協力隊として村の外から人を受け入れ、地域に蓄積したノウハウや技術、顧客とのつながりを受け継いでもらう
- 協力隊を後継者として育てる事業者を募る
事業者の側にも条件があります。主なものは次のとおりです。
- 村内に主たる事務所などがあること
- 隊員を求める目的が、単なる従業員としての雇用や利益の追求ではないこと。後継者を育てて事業を継承し、地域の活性化にも取り組むこと
- 3年以内に経営の承継が可能であること
- 3年後の事業継承計画と、隊員の活動実績を村へ報告すること
お金の流れは、村と事業者が委託契約を結び、協力隊の報酬と活動費を委託料として事業者に支払う形です。隊員の報酬は村と事業者が協議して決め、勤務時間や休日は事業者が決めます。1つの事業者につき隊員は1人です。この要綱では、隊員は「個人事業主もしくは支援機関と雇用契約を結ぶ」とされています。
事業者ごとに違う条件
令和5年7月に村が出した募集(受付は2023年9月20日まで)では、別紙の一覧に5つの事業者が載っていました。
- 農業生産法人ネットワークうるぎ(有限会社、平成17年4月設立)…米・トウモロコシ・野菜の生産と販売、農業体験の企画など。月給160,000円。社会保険(雇用保険・労災保険・健康保険・厚生年金)に加入
- 与助商店(個人事業、2019年4月開始)…無肥料・無農薬の自然栽培による米・雑穀・夏野菜。月給200,000円。国民健康保険・国民年金に加入
- 福屋農園(個人事業)…夏秋いちごの栽培と販売。450平方メートルのパイプハウスで1,600株ほどを高設栽培。月給180,000円。国民健康保険・国民年金に加入
- 株式会社POLEPOLE(法人、2021年8月設立)…キャンプ場・ゲストハウス・カフェ・加工品販売・農業体験。月給160,000円。社会保険・厚生年金・雇用保険に加入
- ペンション風の森(個人事業、1997年8月開始)…宿泊施設の運営全般。月給200,000円。国民健康保険・国民年金に加入。住宅は古民家を貸し出す
月給の額だけで比べないでください。 社会保険に加入する事業者と、国民健康保険・国民年金に自分で加入する事業者があり、保険料を誰がどれだけ負担するかが違います。保険のしくみの違いは協力隊の社会保険と確定申告にまとめています。
4年目以降の見通しも事業者ごとに違います。
- ネットワークうるぎ…農業者として独立するか、経営に携わるかを本人が決める。どちらでも支援は続ける
- 与助商店…隊員に独立してもらい、農業組合を設立する
- 福屋農園…農業者として自立する
- POLEPOLE…正社員として人材育成
- ペンション風の森…一部または全部の事業を継承する
ペンション風の森の一覧には、アクセスが悪い場所なので副業の可能性も含めて中型免許を取ってもらう、と書かれています。こうした具体的な事情まで、事業者自身の言葉で載っているのがこの一覧の特徴です。
この一覧は令和5年度の募集のものです。いま受け入れている事業者と条件は、村に確認してください。
採用の前に最長3か月のインターン
令和6年度の募集要綱では、正式採用の前にインターンで活動を体験できるしくみが書かれています。
- 期間…2週間から最長3か月
- 日給…8,800円(半日4時間なら4,400円)。社会保険はない
- 宿泊…事業所が用意する住宅、村内の宿泊施設、村営住宅のいずれか。宿泊代は1日3,200円を上限に補助。村営住宅を1か月以上借りる場合は1か月32,000円が上限
- 時期…4月から10月まで
選考の流れは「書類選考 → 面接 → インターン → 面談 → 正式採用」です。最後の面談は応募者と事業者のマッチングとして行われます。インターンを希望しなければ、面接に通った時点で正式に採用されます。
事業を受け継ぐ相手と一緒に働けるかどうかを、正式に採用される前に確かめられるしくみです。
契約の形と住まい
令和5年度と令和6年度の隊員向けの募集要綱では、隊員は派遣先の事業者と雇用契約を結ぶとされています。村との雇用関係はなく、村が売木村地域おこし協力隊として委嘱します。期間は委嘱日から1年ずつ更新して最長3年です。
住まいは、令和6年度の募集要綱では「活動する事業所が用意する住宅、もしくは村営住宅」で、月32,000円を上限に家賃手当が出ます。令和5年度の募集では「村営住宅もしくは村内にある空き家」でした。
なお、村が令和8年3月に公表した令和7年度の活動報告では、事業継承を担当する隊員の任用形態は「業務委託」と書かれています。隊員向けの募集要綱の「事業者と雇用契約」とは表記が違います。事業者向けの要綱には「個人事業主もしくは支援機関と雇用契約」とあります。個々の隊員がどの形で働いているのかは、公表資料からは分かりません。応募するときは、自分がどの契約で働くのかを村と事業者の両方に確かめてください。
村が直接委嘱する枠もある
事業継承とは別に、村が直接委嘱する枠もあります。最近の例として、令和7年7月に村の住民課が出した募集は次の条件でした。
- 業務…高齢者支援事業を中心とした地域づくり
- 人数…2人
- 形態…村が委嘱。村と雇用関係を結ばない形で、原則週5日・1日7時間
- 報酬…月額291,000円
- 保険…国民健康保険・国民年金に自分で加入(自己負担)
- 住宅…任期中の住宅料は村が負担。生活用品は各自で用意
- 活動経費…村が負担
- 休日・休暇…規定なし
- 応募…20歳以上50歳未満。活動目標レポート(2,000字以内)を提出
同じ村の協力隊でも、事業者に雇われる枠と、村から委嘱される枠では、報酬も保険のしくみも違います。募集ごとに条件を読み比べてください。
隊員1人ずつの活動経費を公表している
売木村にはもう1つ特徴があります。村のホームページの「地域おこし協力隊」のページ(令和8年3月17日掲載)で、産業課に所属する隊員8人の令和7年度の活動報告と活動経費の内訳を、1人ずつ公表していることです。8人の担当は、農業振興2人・観光振興2人・地域振興1人・事業継承2人(いずれも業務委託)と、会計年度任用職員1人です。
内訳は、品目・単価・数量まで載っています。たとえば事業継承を担当する隊員1人の内訳は、合計1,780,758円で、主な項目は次のとおりです。
- 活動車のリース料…768,240円
- 協力隊活動住宅(村営住宅)の使用料…23,100円×11か月で254,100円
- 専門研修の受講料などの負担金…249,232円
- 県外での発信活動や先進地視察の旅費…185,000円
- 刈払機用の備品や作業用資材などの消耗品…155,580円
- 事務とデザイン用のノートパソコンのリース料…109,560円
ペンション風の森の事業継承を担当するもう1人の内訳(合計1,608,544円)には、寮の使用料32,000円×10か月、岩を取り除いて整地するための重機の使用料516,758円、「M&A契約の相談」として計上された弁護士費用4,990円などが並んでいます。
活動報告には、農業の現場で1年間米とトウモロコシの栽培を身につけた隊員が、2年目から担当を「農業振興」に移し、3年目の新規就農と移動販売を目標にしていることも書かれています。
応募を考える人にとっては、活動費で住まいや車がどう賄われているのかを具体的に知ることができる資料です。
応募するには
いま募集している枠があるかどうか、条件がどうなっているかは、売木村の公式ホームページで確認してください。
問い合わせ先は売木村役場(長野県下伊那郡売木村968番地1、電話0260-28-2311)です。担当の課は募集によって違い、事業継承は令和5年度が総務課、令和6年度が産業課、令和7年7月の高齢者支援の募集は住民課でした。事業継承の枠で活動の中身を知りたいときは、一覧に載っている事業者に直接問い合わせるよう案内されています。
協力隊の制度そのもののしくみは地域おこし協力隊とはにまとめています。
この記事は売木村・長野県・総務省の公表資料をもとに作成しています。受け入れる事業者、報酬額、住宅の扱い、募集の有無は変わることがあります。最新の情報は必ず売木村の公式ホームページで確認してください。
よくある質問
Q.売木村の「事業継承」の協力隊とは何ですか。
A.後継者のいない村内の事業者のもとで、協力隊員が後継候補として技術やノウハウを学び、事業を受け継ぐことを目指す枠です。村は令和5年3月に受け入れる事業者を「支援機関」として募集し、3年以内に経営の承継が可能なことなどを条件にしました。隊員の報酬と活動費は、村から事業者に委託料として支払われます。
Q.事業継承の枠の報酬はいくらですか。
A.事業者ごとに違います。令和5年7月の募集の一覧では、5つの事業者の月給が160,000円から200,000円でした。社会保険に加入する事業者と、国民健康保険・国民年金に自分で加入する事業者があるため、月給の額だけでは比べられません。いま受け入れている事業者と条件は村に確認してください。
Q.採用の前に仕事を体験できますか。
A.令和6年度の募集要綱では、2週間から最長3か月のインターンができるとされています。日給は8,800円で、宿泊代は1日3,200円を上限に補助があります。インターンの後に応募者と事業者の面談を行い、正式に採用する流れです。
Q.住まいはどうなりますか。
A.事業継承の枠では、令和6年度の募集要綱で「活動する事業所が用意する住宅、もしくは村営住宅」とされ、月32,000円を上限に家賃手当が出ます。令和7年7月の高齢者支援の募集では、任期中の住宅料は村が負担するとされていました。
Q.売木村には協力隊員が何人いますか。
A.総務省の集計では令和6年度が11人、令和7年度が13人です。長野県の一覧では、令和8年4月1日現在で10人です。総務省の数は1年間を通した数、県の数はある1日の在籍数なので、数え方が違います。
参考にした公式ページ
- 令和7年度 地域おこし協力隊の隊員数等について(総務省)
- 令和6年度 地域おこし協力隊の隊員数等について(総務省)
- 県内の地域おこし協力隊受入状況 自治体別 令和8年4月1日現在(長野県)
- 地域おこし協力隊の受入事業者を募集します!|売木村
- 売木村地域おこし協力隊支援機関募集要綱(PDF)|売木村
- 地域おこし協力隊を募集します(事業継承)|売木村
- 売木村地域おこし協力隊募集要項(第三者承継)(PDF)|売木村
- 別紙(事業者一覧)(PDF)|売木村
- R6 売木村地域おこし協力隊募集要綱(第三者承継)|売木村
- 「売木村地域おこし協力隊員」募集のお知らせ 令和7年(PDF)|売木村
- 地域おこし協力隊(活動報告・活動経費内訳)|売木村
- 村長の部屋|売木村
情報は変わることがあります。最新の内容は各公式ページでご確認ください。


