八峰町の地域おこし協力隊|事業者が雇用する形への移行と条件
八峰町の地域おこし協力隊について、令和8年度から変わった受入の仕組みと条件をまとめます。
八峰町は、白神山地の麓から日本海までが町域に収まる秋田県山本郡の町です。この町の地域おこし協力隊は、令和8年度から受け入れのしくみそのものが変わりました。八峰町の公式情報をもとにまとめます。
令和8年度から、町は隊員を任用しない
八峰町は令和7年9月24日、「八峰町地域おこし協力隊事業受入業務」の公募型プロポーザルを公告しました。隊員の募集・選考・配置・活動支援を、町の職員ではなく民間の事業者にまとめて委託するという内容です。
この仕様書には、「当町は本業務における地域おこし協力隊を任用せず、事業者が雇用する者を当町の地域おこし協力隊員として委嘱するものとする」という一文が入っています。同時に配布された実施要領にも「本業務における地域おこし協力隊は町との雇用関係はなく、事業者が雇用する者を八峰町地域おこし協力隊員として委嘱するものである」と書かれています。隊員を雇うのは事業者、隊員を協力隊員として委嘱するのは町、という二層の関係です。
業務期間は、募集などが契約締結の日から令和8年3月31日まで、協力隊の受け入れが令和8年4月1日から令和9年3月31日まで。隊員の任期が続く限り、再度契約を結ぶ可能性があるとされています。
町がまったく関わらなくなるわけではありません。仕様書は、選定にあたっては町も関与し、隊員の居住実態調査は町が行うと定めています。また受託者は、隊員の毎月の活動内容と支援状況を活動報告書にまとめ、翌月10日までに町へ提出しなければなりません。町の書面による承認がない限り、業務を第三者に再委託することも禁じられています。
隊員の活動については、「会社の単なる人材補強ではなく地域活性化に資する事業または公益性のある事業であると認められる活動に限る」という条件が明記されています。受入事業者の労働力として使うことはできない、という歯止めです。
応募できるのは、八峰町内に事業所を設けている法人に限られました。応募の時点で満たしていない場合は、隊員の募集開始までに要件を満たすことを条件に応募が認められています。
審査は600点満点で行われ、令和7年11月25日に結果が公表されました。優秀提案者(優先交渉権者)はレンチナス奥羽伊勢株式会社で、評価点は398点。もう1者(A社と表示)は366点でした。
350万円と200万円は、隊員が受け取る額ではない
この委託の金額は、次の3項目の合計が上限とされています。
| 項目 | 上限額 |
|---|---|
| 隊員の募集等に要する経費 | 350万円 |
| 隊員の報償費 | 350万円(年額・1名分) |
| 隊員の活動費 | 200万円(年額・1名分) |
報償費と活動費は、それぞれ1事業者につき2名分までです。
ここは読み違えやすいところです。この350万円と200万円は、町が事業者に払う委託料の上限であって、隊員個人が受け取る金額ではありません。仕様書は「受託者は、地域おこし協力隊員の募集等に要する経費及び給与等に係る経費の一切を負担する」と定めており、隊員に実際にいくら払うかは事業者と隊員の間で決まります。実施要領も、この金額は「契約時の予定価格を示すものではなく、業務の最大規模を示す金額」だと断っています。
活動費200万円の対象費目には、住居と活動用車両の借上費が含まれます。家賃や車の費用が別枠で用意されるのではなく、活動旅費、作業道具、研修費、定住に向けた資格取得費などと同じ200万円の枠から出るという構造です。協力隊の報酬がどう決まるかは地域おこし協力隊の給料にまとめています。
隊員個人の報酬額は、町の公表資料からは分からない
八峰町の場合、隊員が月にいくら受け取るのか、週に何日活動するのかを示した公表資料が見当たりません。
町の八峰町地域おこし協力隊員設置要綱(平成27年3月9日告示第11号)は、第7条で「隊員の報償金及び活動に必要な経費について、予算の範囲内において委託料として支払うものとする」と定めるだけで、金額も活動日数も書いていません。町のホームページにも、隊員個人の条件を示した募集要項は見当たりません。
そして令和8年度からは、報酬を決める主体が事業者に移ります。公表されるのは町から事業者への委託料の上限だけになるため、隊員個人の条件は、受入事業者の募集を見なければ分からないということになります。
なお、令和8年8月の時点で、町のホームページにも、秋田県の移住ポータルサイトの地域おこし協力隊のページにも、令和8年度の八峰町の隊員募集の案内は見当たりません。条件を知りたい場合は、町の企画政策課に直接問い合わせるのが確実です。
委嘱隊員という身分は、令和8年度も残っている
仕様書の「任用しない」という表現から、町の要綱そのものが失効したように読めるかもしれませんが、そうではありません。
設置要綱は令和8年3月31日告示第38号で改正され、令和8年4月1日から施行されています。その現行の第8条は、「協力隊員は、町長から委嘱を受けた委嘱隊員とする。この場合において、町と協力隊員は雇用契約は締結しないものとする」と定めたままです。
つまり、町と隊員の間に雇用契約がないという点は、令和8年度の前も後も変わりません。変わったのは、雇う側が「どこにもいない」状態から「受入事業者」に移ったことです。
要綱が定める他の条件も、そのまま生きています。
- 委嘱期間は委嘱の日からその会計年度の末日までで、最長3年まで延長できる
- ただし地場産業に従事する隊員が、任期終了後にその地場産業で起業・事業承継を行う場合は、2年を上限に延長して最長5年まで可能
- 委嘱された隊員は、直ちに町内に住所を定めなければならない
- 隊員は活動日誌を記録し、毎月10日までに前月分の活動報告書を町長に報告する
- 協力隊に関する庶務は企画政策課が担当する
活動の分野は、地域行事やコミュニティ活動の支援、町民活動団体の支援、地域資源の発掘と振興、農林水産業の支援、定住・移住促進の5つと、町長が必要と認める活動です。制度そのもののしくみは地域おこし協力隊とはで説明しています。
現在の隊員は2名、これまでに7名
隊員数は、国・県・町の3つの資料がすべて2名で一致しています。
| 出どころ | 時点 | 隊員数 |
|---|---|---|
| 総務省の令和7年度の集計 | 令和7年度 | 2名 |
| 秋田県の活動状況一覧 | 令和8年4月1日現在 | 2名 |
| 八峰町の活動報告会のお知らせ | 令和8年2月20日掲載 | 2名 |
秋田県の一覧では、2名の活動内容が「関係人口増加、情報発信、魅力発信に関する活動」と「農業全般に係る地域活動、生薬栽培普及・特産品開発、産直施設売上促進、SNS等を用いた町のPR活動等」と書き分けられています。
町の広報誌によれば、この2名は米森美咲さん(令和7年4月1日委嘱、町の情報・魅力発信、八峰町峰浜石川出身)と木村まゆみさん(令和7年7月1日着任、農業振興と生薬に関する情報収集・発信、秋田市出身)です。どちらも任期は最長3年間で、令和8年4月の全国研修に2人そろって参加したことが広報誌に書かれています。
町のホームページの隊員紹介ページには、米森さん1人しか載っていません。このページは令和7年4月1日の掲載で、その後に着任した木村さんが反映されていないためです。現役の顔ぶれを確かめるなら、広報誌か秋田県の一覧を見たほうが確実です。
累計では、町の公式ページに「これまで7名の方が、地域おこし協力隊として活躍しました」と書かれています。
卒業した4名の活動報告書が、そのまま公開されている
八峰町のいちばんの特徴は、令和6年度に任期を終えた4名の活動報告書が、そのまま全文公開されていることです。町の「任期を終了した地域おこし協力隊」のページから、4名分の資料をそれぞれ読むことができます。いずれも令和7年2月6日付、活動報告会で使われたものです。
| 隊員 | 役割 | 資料の分量 |
|---|---|---|
| 吉田真己さん | 定住・移住コンシェルジュ | 24ページ |
| 山田勝さん | 農業推進コンシェルジュ | 10ページ |
| 山田菜々子さん | 農業推進コンシェルジュ | 16ページ |
| 越前谷淳さん | 定住・移住コンシェルジュ | 12ページ |
書かれているのは、成果の要約だけではありません。
- 吉田さんの資料には、活動目標の4本立てと、3年半のあいだに実施したイベントや講座が年度ごとに並びます。運用したSNSのフォロワー数(757名と261名)まで載っており、退任後は韓国語教室の講師と地域づくりサポーターをしていると書かれています。
- 山田勝さんの資料には、与えられた4つのミッション(生薬のPR、生薬の商品開発、農業のPR、農業の担い手確保)が1つずつ達成として整理され、地域の梨の果樹園を自ら引き継いだ経緯が書かれています。実行委員長を務めた祭りの売上額まで公表許可つきで記載されています。
- 山田菜々子さんの資料には、令和4年9月から農業推進コンシェルジュとしてキキョウとカミツレの2種類に関わったこと、生薬のPRを主な活動にしている協力隊は全国でも珍しいのではないかという本人の見立てが書かれています。
- 越前谷さんの資料は、神奈川県川崎市から令和4年10月に移住した経歴から始まり、最後に「課題と今後の展望」という章があります。そこには自分たちの活動が「まだ八峰町全体の地域活性化に結びつく段階には至っていない」と率直に書かれています。
そして4名とも、報告書の中で八峰町に残ると書いています。山田勝さん、山田菜々子さん、越前谷さんの3名は、カモミールと梨を扱う「やっほ~farm」を仲間で立ち上げ、越前谷さんの資料には退任後に法人化すると書かれています。
成果だけでなく、届かなかったところまで隊員本人の言葉で読める自治体は多くありません。応募を考えているなら、募集要項よりもまずこの4本を読むほうが、この町での3年間の実像がつかめます。
起業等支援補助金は、条件しだいで上限200万円
任期を終えたあとの支援として、八峰町地域おこし協力隊起業等支援補助金交付要綱(平成30年4月1日告示第50号)があります。この要綱も令和8年3月31日告示第39号で改正され、令和8年4月1日から施行されています。
- 補助率は補助対象経費の10分の10以内、上限は100万円
- ただし、起業で1人以上を新規雇用した場合、または事業承継で承継する事業の雇用数を維持した場合は、上限200万円
- 対象は町内で起業または事業承継を行い、事業内容が町の活性化に資すること
- 1人につき1つの年度に限る
対象になるのは、任期終了の日から起算して前1年以内の人か、任期終了の日から3年以内の人です。任期が終わってから3年の猶予があるため、退任してすぐに決めなくてもよい設計になっています。
対象経費は、設備費・備品費・土地建物の賃借、法人登記、知的財産登録、マーケティング、技術指導の受け入れ、専門人材の活用、新商品開発、従業員の育成など9項目です。
一方で、返還の定めもあります。協力隊に初めて委嘱された日から5年以内に自己都合で町外に転出した場合、町に住んだ期間に応じて返還を求められます。
| 町に定住した期間 | 返還を求める額 |
|---|---|
| 3年未満 | 交付決定額の全額 |
| 3年以上4年未満 | 交付決定額の75パーセント |
| 4年以上5年未満 | 交付決定額の50パーセント |
災害や疾病など、自分の都合によらないやむを得ない理由があるときは、申し出により返還を免除できるとされています。
隊員の活動を追うなら広報はっぽう
八峰町の広報誌「広報はっぽう」には「地域おこし協力隊の部屋」という連載があり、隊員自身が毎月書いています。
町のホームページに残っている2023年4月号から2026年8月号までの40号すべてに、この連載が載っています。回数は2023年4月号が第70回、2026年8月号が第107回です。連載の回数が付いていないのは、隊員が新しく着任したことを紹介する回だけで、2025年5月号(米森さん)と2025年8月号(木村さん)がそれにあたります。
隊員の顔ぶれ、活動の中身、着任時の任期と業務内容は、この連載を追うのがいちばん早い方法です。町の隊員紹介ページよりも更新が速く、退任した隊員の名前もそのまま残ります。
> この記事は八峰町公式ホームページ、八峰町例規集、および総務省・秋田県の公表資料をもとに作成しています。受け入れのしくみ、委託料の上限、補助金の条件、隊員数は年度によって変わることがあります。最新の情報は必ず八峰町の公式ホームページで確認してください。
よくある質問
Q.八峰町の地域おこし協力隊は、令和8年度から何が変わったのですか。
A.隊員の募集・選考・配置・活動支援を、町が民間の事業者にまとめて委託する形になりました。令和7年9月24日に公告された「八峰町地域おこし協力隊事業受入業務」の公募型プロポーザルによるもので、仕様書には「当町は本業務における地域おこし協力隊を任用せず、事業者が雇用する者を当町の地域おこし協力隊員として委嘱するものとする」と書かれています。つまり隊員を雇うのは事業者、協力隊員として委嘱するのは町、という二層の関係です。協力隊の受け入れ期間は令和8年4月1日から令和9年3月31日まで。審査は600点満点で、優先交渉権者はレンチナス奥羽伊勢株式会社(398点)でした。なお、町と隊員の間に雇用契約がない点は以前から同じで、八峰町地域おこし協力隊員設置要綱の第8条は令和8年4月1日施行の現行版にも残っています。
Q.隊員の報償費350万円、活動費200万円というのは、隊員がもらえる金額ですか。
A.違います。これは町が受入事業者に支払う委託料の上限額で、隊員個人が受け取る額ではありません。仕様書は「受託者は、地域おこし協力隊員の募集等に要する経費及び給与等に係る経費の一切を負担する」と定めており、実施要領も「契約時の予定価格を示すものではなく、業務の最大規模を示す金額」だと断っています。報償費と活動費はそれぞれ1事業者につき2名分までで、活動費200万円の対象費目には住居と活動用車両の借上費が含まれます。家賃や車の費用は別枠ではなく、この200万円の中から出る構造です。隊員が実際に月いくら受け取るのか、週に何日活動するのかを示した資料は、令和8年8月の時点で八峰町の公表資料には見当たりません。
Q.任期を終えたあとの支援はありますか。
A.八峰町地域おこし協力隊起業等支援補助金があります。補助率は補助対象経費の10分の10以内で上限100万円、起業で1人以上を新規雇用した場合、または事業承継で承継する事業の雇用数を維持した場合は上限200万円です。対象になるのは任期終了の日から起算して前1年以内の人か、任期終了の日から3年以内の人で、退任後3年の猶予があります。ただし、協力隊に初めて委嘱された日から5年以内に自己都合で町外に転出すると返還を求められ、町に住んだ期間が3年未満なら全額、3年以上4年未満なら75パーセント、4年以上5年未満なら50パーセントが返還の対象です。
参考にした公式ページ
- 地域おこし協力隊|八峰町
- 八峰町地域おこし協力隊|八峰町
- 任期を終了した地域おこし協力隊|八峰町
- 令和7年度地域おこし協力隊活動報告会を開催します!|八峰町
- 八峰町地域おこし協力隊事業受入業務公募型プロポーザルを実施します|八峰町
- 八峰町地域おこし協力隊事業受入業務公募型プロポーザル仕様書|八峰町
- 八峰町地域おこし協力隊事業受入業務公募型プロポーザル実施要領|八峰町
- 八峰町地域おこし協力隊事業受入業務 公募型プロポーザル 審査結果|八峰町
- 八峰町地域おこし協力隊員設置要綱(平成27年3月9日告示第11号)|八峰町例規集
- 八峰町地域おこし協力隊起業等支援補助金交付要綱(平成30年4月1日告示第50号)|八峰町例規集
- 活動報告 ~3年半のまとめ~(吉田真己 地域おこし協力隊活動報告書)|八峰町
- 令和6年度協力隊活動報告会(山田勝 地域おこし協力隊活動報告書)|八峰町
- 活動報告書(山田菜々子 地域おこし協力隊活動報告書)|八峰町
- 地域おこし協力隊活動報告書(越前谷淳)|八峰町
- 令和7年度における地域おこし協力隊の活動状況等|総務省
- 令和7年度 地域おこし協力隊の隊員数等について|総務省
- 地域おこし協力隊の活動状況(令和8年4月1日現在)|秋田県
- 秋田県内の地域おこし協力隊活動状況(令和8年4月1日現在)|秋田県
- 行政情報(広報「はっぽう」バックナンバー一覧)|八峰町
- 広報「はっぽう」2026年8月号|八峰町
- 広報「はっぽう」2026年6月号|八峰町
- 広報「はっぽう」2025年5月号|八峰町
- 広報「はっぽう」2025年8月号|八峰町
- 広報「はっぽう」2023年4月号|八峰町
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