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東成瀬村の地域おこし協力隊|2つの隊員区分と報酬、人数の推移

10分で読めます執筆: TownHub編集部
地域おこし協力隊東成瀬村

秋田県で最も多くの隊員を受け入れてきた東成瀬村について、2つの隊員区分ごとの条件と、隊員数の推移をまとめます。

秋田県の東南端にある東成瀬村は、人口2,137人・918世帯(広報ひがしなるせ令和8年7月号に載る6月の集計)の小さな村ですが、地域おこし協力隊の隊員数では全国でも突出した規模を持っています。その仕組みは「雇用隊員」と「民間連携隊員」という2つの区分に分かれていて、雇い主も報酬の決まり方も違います。東成瀬村の公式情報をもとにまとめます。

隊員は「雇用隊員」と「民間連携隊員」に分かれる

東成瀬村地域おこし協力隊設置要綱の第5条は、隊員の種別を次の2つに定めています。

  • 雇用隊員 … 地方公務員法第22条の2第1項第1号に掲げる職員、つまり村の会計年度任用職員として村に直接雇われる隊員
  • 民間連携隊員 … 村が実施する本事業委託業務の受託者と雇用契約を締結し、村と連携して活動する者として村長が委嘱する隊員

同要綱の第3条は、隊員の活動支援や調整を担えると認められる「支援団体」に村長が事業の一部または全部を委託でき、隊員の報酬・活動経費・募集経費などの相当額を委託料として支払うと定めています。民間連携隊員の雇い主は村ではなく、この受託者です。ここが待遇を読み解くうえで一番大事な分かれ目になります。

隊員の活動分野は要綱第2条に、農林水産業の振興、地域資源(観光・特産品等)の発掘と普及、地域づくり活動の強化と各種団体の支援、住民サービスの利便性向上につながるIT課題の解決、その他村長が村の活性化に必要と認めた活動、の5つが挙げられています。任用の要件は第4条にあり、生活の拠点を3大都市圏をはじめとする都市地域等から移して村に住民票を異動すること、普通自動車免許を持っていること、山村地域の振興に熱意を持つ20歳以上であることなどが並びます。

なお、村が公表している隊員数の内訳には、令和7年度まで「委嘱隊員」という枠が1名分登場していました。令和8年度の公表資料では、雇用隊員と民間連携隊員の2区分だけになっています。

雇用隊員の報酬と勤務条件

雇用隊員は村の会計年度任用職員なので、報酬額も勤務条件も村が募集要項で公表しています。

令和8年度採用の募集要項(有害鳥獣対策等、1名)は次の内容でした。

  • 月額報酬210,000円、フルタイム(1日7時間45分・週5日)
  • 村の条例に基づき、通勤手当・期末手当・勤勉手当などが支給される
  • 任用期間は年度単位で更新し、最長で任用の日から3年間
  • 3年間で野生鳥獣やジビエに関する知識とノウハウを習得し、その後の起業・開業を目指す

前年の令和7年度採用(キャンプ場等管理2名、移住・定住コーディネーター1名)はパートタイムで週4日、月額報酬160,000円でした。1年で勤務形態も金額も変わっているので、募集ごとに要項を見ないと条件は分かりません。

ここで注意したい食い違いがあります。設置要綱の第8条第3項は雇用隊員の報酬月額を168,000円と定めていますが、令和8年度の募集要項と募集一覧はいずれも210,000円としています。要綱は令和8年4月1日施行の改正を経た版で、募集要項は同じ年の5月に受付が始まったものなので、どちらか一方が明らかに古い資料というわけではありません。応募を考えるなら金額は村に直接確かめてください。

民間連携隊員の報酬は村が公表していない

民間連携隊員について、設置要綱の第8条第4項は「雇用隊員における報酬水準および活動実績に基づいて算出した金額を基に、支援団体から隊員に支給する」と決め方を書いているだけで、金額そのものは示していません。村の募集要項にも民間連携隊員の報酬額は出てきません。つまり民間連携隊員の報酬は、村が公表している情報ではないということです。

受託者にあたるのが、東成瀬テックソリューションズ株式会社(通称・なるテック)です。同社が公表する会社情報によれば、事業体の種別は株式会社(第三セクター方式)、設立は令和3年10月、資本金は1,000万円、株主構成は近藤純光氏と東成瀬村、代表取締役社長は近藤純光氏、本店所在地は村内の東成瀬村山村開発センターです。同社は自社を、地域おこし協力隊の制度を東成瀬村から運営委託された企業だと説明しています。

同社の採用ページには、募集する各コースの月給240,000円(住宅手当・通勤手当・固定残業手当(月間20時間分)を含む。入社から6か月の試用期間は月給200,000円)と記載されています。応募時に35歳以下であること、村に移住してそのまま定住する意思があることが条件です。ただしこれは村の公表額ではなく、受託会社が自社の採用情報として示している金額です。民間連携隊員として活動する場合の条件は、村ではなく同社に確認することになります。

村が受託者に支払っている委託料の実額は、村が公開している情報のなかでは確認できませんでした。金額を知りたい場合は村への問い合わせが必要です。

村は少数株主として出資した側

「第三セクター」と聞くと村が主導する会社を思い浮かべますが、村の記録を読むとそうではありません。

村長行政報告(令和3年9月定例会議)は、設立の経緯をこう説明しています。当時村に着任していた地域おこし協力隊員の近藤氏から、村内にIT関連事業の本社を設立し、20代から30代を中心に大都市圏から従業員を雇用して移住を図るという提案が示された。設立予定の会社は代表が近藤氏、資本金は500万円、事業内容はシステム開発とコンサルティングで、将来的な従業員数は100名を予定していると説明された——というものです。

村はこれをIT産業での雇用創出であり人口の社会減対策としても効果が期待できると判断し、「第三セクターとして支援をすべく、10%の出資金を補正予算に計上」したと報告しています。つまり村は、隊員が持ち込んだ構想に少数株主として出資した側であり、会社を主導する立場ではありません。

同じ報告のなかで村は、協力隊について「今後は募集・運営業務を委託するなど、新たな手法も取り入れて実施したい」とも述べています。この方針が、いまの民間連携隊員の仕組みにつながっています。当時の村の協力隊は退任が続き、活動する隊員は6名という状況でした。

ただし10%は設立時の話です。資本金はその後1,000万円になっており、現在の村の出資比率は、村の公表資料でも会社の公表資料でも確認できませんでした。

同社が自社の沿革として公表している業績は、第1期(令和4年9月終了)が従業員19名・売上4,500万円、第2期(令和5年9月終了)が従業員46名・売上約2億円、第3期(令和6年9月終了)が従業員59名・売上約2.9億円です。いずれも会社側が示している数字で、村の公表資料ではありません。沿革の記載は令和6年11月で止まっており、それ以降の業績は載っていません。村議会には毎年成果報告会が開かれており、議会だよりは令和7年・令和8年のいずれについても「会社の黒字化に向けての意気込み」を聞いたと記録しています。

隊員数は1年3か月でおよそ4割減った

隊員数は村の広報紙と村長行政報告で公表されていますが、資料ごとに時点が違うため、比べるときは基準をそろえる必要があります。村が示している主な時点は次のとおりです。

  • 令和7年4月1日時点(広報ひがしなるせ令和7年4月号)… 村が直接雇用する隊員4名、民間連携隊員59名、委嘱隊員1名の計64名
  • 令和7年12月1日現在(村長行政報告・令和7年12月定例会議)… 雇用5名、民間連携43名の計48名
  • 令和8年4月1日時点(広報ひがしなるせ令和8年4月号)… 村が直接雇用する隊員3名、民間連携隊員42名の計45名
  • 令和8年6月1日現在(村長行政報告・令和8年6月定例会議)… 雇用隊員3名、民間連携隊員39名の計42名
  • 令和8年7月1日時点(広報ひがしなるせ令和8年7月号)… 村が直接雇用する隊員3名、民間連携隊員36名の計39名

1年3か月で64名から39名へ減っており、減っているのはほぼ民間連携隊員です。ただし新しい着任も続いていて、令和8年度は4月から6月にかけて新たに6名が着任しています。村長行政報告は令和7年9月の時点で民間連携隊員の採用総数が延べ80名を超えたとも述べており、出入りの多さがこの村の協力隊事業の特徴になっています。

国が公表する数字とは大きくずれる点にも注意が必要です。総務省の資料では、東成瀬村の隊員数は令和7年度が77人、令和6年度が84人とされ、同じ表にある秋田県計176人(令和7年度)のうち県内23の受入自治体で最も多い数字になっています。ただし総務省の資料は「その年度に活動した」隊員を年度単位で数えたもので、「何月何日現在」という基準日は示されていません。村が公表しているのは特定の日の在籍数です。どちらが正しいという話ではなく、数え方が違うと理解してください。

隊員の受け入れは村の交付税にも関わる

人口2,000人あまりの村がなぜこれだけの隊員を受け入れてきたのか。村長の答弁からは、財政面の事情の一端がうかがえます。

令和8年6月定例会議の一般質問で、村長は協力隊について「令和7年国勢調査では隊員算入により普通交付税が今後5年間で約9,900万円の加算が見込まれ、地域づくりへの活用が期待される」と答えています。隊員が国勢調査人口に算入されることが、交付税の算定に効くという説明です。

その3か月前、令和8年3月定例会議の施政方針では、同じ村長が令和8年度の普通交付税について「算定基礎となる国勢調査人口の減少等を見込み、令和7年度当初予算と比較して、4.4%の減となる17億4,000万円を計上」したと説明しています。国勢調査人口が村の財政に直接響くことが、この2つの発言から読み取れます。

協力隊事業は特別交付税の算定対象経費でもあります。令和7年度の当初予算では、協力隊事業などの対象経費が増えたことを理由に特別交付税を700万円増の5億6,000万円と見込み、令和8年度は逆に対象経費が減ったことを踏まえて2億3,400万円減の3億2,600万円としています。いずれも村が当初予算編成時に見込んだ額であり、確定額ではありません。

協力隊事業の予算が減った理由

広報ひがしなるせに載る当初予算の主要事業一覧では、地域おこし協力隊事業の事業費は令和7年度が4億8,395万円、令和8年度が2億7,912万円です。数字だけ見ると4割を超える減額ですが、これは事業を縮小した額ではありません。

村長の施政方針及び行政報告(令和8年3月定例会議)は、令和8年度の協力隊事業について新規採用13名を含む56名を予定したうえで、「民間連携隊員の採用にあたっては、なるテックと連携・協議しながら、必要な予算はその都度補正予算で対応することとしたため、前年度と比較し大幅な減となっています」と理由を明記しています。つまり当初予算に積まず、必要になった時点で補正予算で対応する方式に変えたことによる減額です。

あわせて、令和8年度の一般会計当初予算そのものが、村長選挙の年にあたるため継続事業を中心にした骨格予算(36億5,100万円、前年度比12.4%減)として組まれている点も押さえておくとよいでしょう。

村議会で指摘されている課題

隊員数が多い一方で、村議会では成果と定住が繰り返し論点になっています。

令和8年6月定例会議の一般質問で、村長は雇用隊員について「キャンプ場管理や情報発信に従事し、任期後も定住し起業や集落支援員として活躍しており一定の役割を果たしている」と答えました。一方、民間連携隊員については「公式LINE導入や特産品開発などに取り組んでいるが新たな産業創出の成果は出ていない」と述べ、活動成果の共有や地域との関係構築、定住支援が課題だとしています。今後については「なるテックが軌道に乗れば必要以上の募集を行わず、特別豪雪地帯に適応できる質の高い人材確保に努めていく」との答弁でした。

前年の令和7年6月定例会議では、定住率の低さが取り上げられました。理由を問われた村長は「村で自分が望むような仕事が見つけられない。また雪国の厳しい生活環境に耐えられなかったなどの声を聞いている」と答えています。二拠点生活を認めている理由を問われた場面では「村が認めているわけではないが、村外での活動機会が多い為にそのようにみられている」と説明しました。

村の概要によると、東成瀬村は積雪が2メートル、多いときは3〜4メートルに達し、積雪期間が5か月におよぶ特別豪雪地帯です。総面積203.69平方キロメートルの93%が山林原野で、成瀬川沿いに大小21の集落が点在しています。応募を考えるときは、この生活環境を前提に判断することになります。

応募や確認の窓口

  • 雇用隊員(会計年度任用職員)を目指す場合は、村が随時出す募集要項を確認します。募集ごとに担当課が変わり、令和8年度の有害鳥獣対策の募集は産業振興課、令和7年度の募集は企画課や総務課が窓口でした。
  • 民間連携隊員を希望する場合は、受託者である東成瀬テックソリューションズ株式会社の採用情報を確認することになります。報酬や雇用形態の条件は村ではなく同社が示しています。
  • 隊員の活動内容は、村の広報紙「広報ひがしなるせ」の「協力隊の日記」や、協力隊のホームページ「ひがなる隊」で紹介されています。ただし「ひがなる隊」は村のドメインではなく、受託会社のドメインで運営されています。

> この記事は東成瀬村公式ホームページの情報をもとに作成しています。報酬額・募集内容・隊員数・予算は変わることがあります。最新の情報は必ず東成瀬村の公式ホームページで確認してください。

よくある質問

Q.東成瀬村の地域おこし協力隊の報酬はいくらですか。

A.隊員の区分によって違い、ひとまとめには言えません。村が直接雇う雇用隊員は会計年度任用職員で、令和8年度採用の募集要項では月額報酬210,000円(フルタイム・週5日)、令和7年度採用ではパートタイム週4日で月額160,000円でした。民間連携隊員の報酬額は村が公表しておらず、受託者である東成瀬テックソリューションズ株式会社が自社の採用情報として月給240,000円(各種手当と固定残業手当20時間分を含む、試用期間6か月は200,000円)と示しています。なお設置要綱の条文は雇用隊員の報酬月額を168,000円としており、募集要項の額と食い違っています。応募前に村または同社へ直接確認してください。

Q.隊員は何人いますか。国の資料と村の資料で数字が違うのはなぜですか。

A.村の公表では、令和7年4月1日時点の計64名から、令和8年7月1日時点で計39名(村が直接雇用する隊員3名、民間連携隊員36名)まで減っています。一方、総務省の資料は東成瀬村を令和7年度77人、令和6年度84人としています。総務省はその年度に活動した隊員を年度単位で数えていて「何月何日現在」という基準日を示しておらず、村は特定の日の在籍数を出しています。数え方が違うためで、どちらかが誤りというわけではありません。

Q.協力隊事業の予算が令和8年度に大きく減ったのは、事業を縮小したからですか。

A.いいえ。広報ひがしなるせの主要事業一覧では令和7年度の4億8,395万円から令和8年度は2億7,912万円になっていますが、村長の施政方針及び行政報告(令和8年3月定例会議)は、令和8年度も新規採用13名を含む56名を予定したうえで、民間連携隊員の採用にあたっては受託者と連携・協議しながら必要な予算をその都度補正予算で対応することとしたため前年度比で大幅な減になった、と理由を明記しています。加えて令和8年度当初予算は村長選挙の年にあたる骨格予算として組まれています。

参考にした公式ページ

情報は変わることがあります。最新の内容は各公式ページでご確認ください。

TownHub編集部

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全国の地域情報を取材・編集しています。自治体の公開情報と現地取材をもとに、その街で暮らす人に役立つ情報をお届けします。

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