羽後町の地域おこし協力隊|報酬・住居・卒業後の定住
羽後町の地域おこし協力隊について、NPO法人が雇用する形での条件と、卒業した隊員の定住状況をまとめます。
羽後町は秋田県南部にある人口約13,000人の町で、日本三大盆踊りの一つとされる「西馬音内盆踊り」と、文化庁の100年フードに認定された「西馬音内そば」で知られます。地域おこし協力隊の受け入れは、町が隊員を直接雇うのではなく、町内の事業者が雇う形をとっています。羽後町・秋田県・総務省の公式情報をもとにまとめます。
羽後町には協力隊が何人いるか
総務省が令和8年4月24日に公表した令和7年度の集計では、羽後町の隊員数は6名です。全国では8,196名が1,187団体で活動しており、前年度から隊員数は286名、団体数は11団体増えました。
秋田県が公表している令和8年4月1日現在の一覧でも羽後町は6名です。県全体では1県22市町村で131人が活動しています。県の一覧に載っている羽後町の内訳は次のとおりです。
| 活動内容 | 隊員数 |
|---|---|
| 地域や地域産品の情報発信・PRに関する活動 | 2名 |
| 観光振興・中心市街地の活性化に関する活動 | 2名 |
| 高校魅力化・小中高生のキャリア形成に関する活動 | 1名 |
| 都市部との交流・地域振興に関する活動 | 1名 |
町の隊員紹介ページにも6名が氏名と担当分野つきで掲載されています。担当は町の情報発信、地方創生推進と町の情報発信、観光振興と中心市街地活性化(2名)、高校の魅力化、都市との交流と地域振興で、県の一覧の内訳と人数がぴたりと一致します。
羽後町の隊員には着任順の通し番号が振られていて、現役はNo.16からNo.21です。No.1からNo.15は卒業生として同じページに載っています。制度そのもののしくみは地域おこし協力隊とはにまとめています。
雇うのは町ではなく事業者
羽後町の協力隊でいちばん先に押さえておきたいのが、雇用主が町ではないことです。
町が公表している受入事業者向けの案内には、町が選定した受入事業者が隊員と雇用契約を結び、隊員は町と連携して地域協力活動を行う、と書かれています。報酬等については町が委託料として負担しますが、対象は地域協力活動に従事した分を限度とし、受入事業者の業務に従事した分の報酬等は受入事業者の負担になります。
令和8年度に出ている募集では、この受入事業者がNPO法人みらいの学校です。募集要項の雇用形態の欄には「羽後町から地域おこし協力隊の委嘱を受け、NPO法人みらいの学校に雇用されます」と明記され、勤務地も同法人になっています。町の募集ページにも「地域おこし協力隊募集にあたり、NPO法人みらいの学校へ委託実施しております」とあり、募集そのものの窓口も同法人です。
整理すると、委嘱するのは町、給与を払うのは法人、その原資は町が出す委託料という三者の関係です。町の職員になるわけではないので、会計年度任用職員のような期末手当は前提になりません。一方で法人に雇われるため、健康保険・厚生年金保険・雇用保険には加入します。
なお、町は受入事業者を随時募集しています。要件は町内に事業所等を有する法人または任意の団体であることなどで、今後ほかの法人が受入先になることもあります。応募するときは、その募集の雇用主がどこなのかを必ず確認してください。報酬がどう決まるのかは地域おこし協力隊の給与・報酬のしくみにまとめています。
報酬と勤務条件
募集特設サイトに載っている条件は次のとおりです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 月額 | 265,000円(令和8年4月1日現在) |
| 控除 | 社会保険料、厚生年金、雇用保険料等の本人負担分 |
| 保険 | 健康保険、厚生年金保険、雇用保険に加入 |
| 勤務時間 | 原則週5日・1日7時間(9時から17時、休憩を含む)で週35時間 |
| 休日 | 土曜日、日曜日、国民の祝日、年末年始(12月29日から1月3日) |
| 休暇 | 年次有給休暇、特別休暇(夏季休暇、慶弔休暇など) |
| 任期 | 採用の日から1年間。勤務状況を踏まえて1年単位で更新可能、最長3年 |
| 兼業・副業 | 勤務時間外は可 |
土日祝日に勤務した場合は平日に振替休日を取ります。募集側が公開している質問集では、振替休日の取得を推奨したうえで週の勤務時間を35時間に調整すると説明されており、基本的に残業はないものの、地域行事やイベントにあたる業務の期間は残業や休日出勤が出ることがあるとしています。
賞与や各種手当については、募集要項に記載がありません。月額265,000円から本人負担分の保険料が引かれた額が、月々入ってくるお金だと考えておくのが安全です。
副業は勤務時間外であれば可能ですが、質問集では所属先の服務規程に基づき事前の届出または許可が必要になる場合があるとされています。詳細は採用時に説明されます。
住まいと車は「活動経費」から出る
住居は、原則としてNPO法人みらいの学校が手配する町内のアパート等に入居します。家賃および火災保険料は、地域おこし協力隊の活動経費から支出されます。特設サイトの別の箇所では「活動経費から全額支給」とも書かれています。
ここで誤解しやすいのが、家賃の上限額がどこにも書かれていない点です。上限が書かれていないことは、いくらでも出るという意味ではありません。質問集を読むと、家賃は活動経費という一つの枠の内側から出る費用だと分かります。
- 活動経費は年間で最大200万円程度が予算として設定される予定(令和8年度の予算状況による)
- そこから住居費(家賃)、火災保険料、車両関連費(リース代、保険料、燃料費など)が優先的に差し引かれる
- 差し引いた残りが、研修への参加費、消耗品費、イベント企画費といった本来の活動費になる
つまり住まいや車にかかる分が大きくなれば、その分だけ活動そのものに使える額が減ります。上限額が書かれていない代わりに、全体の枠のほうに天井があるという構造です。
車については、個人所有する車両が無い場合に、みらいの学校が手配する車両を使用します。リース料やガソリン代等はやはり活動経費からの支出です。貸与される車両は4WDでスタッドレスタイヤも備えていると案内されています。すでに自分の車を持っている人がこの手配の対象になるかどうかは書かれていないため、応募前に確認したほうがよい部分です。
町内に鉄道駅はなく、路線バスも限られた範囲しか通っていないため、移動は車が基本です。質問集はさらに踏み込んで、一人一台が当たり前で、運転できないと活動にならないと説明しています。冬は雪道になるため4WDが推奨されています。
パソコンやカメラなどの備品も活動予算の枠内で購入できますが、購入したものは所属先の備品扱いで、任期終了時にそのまま持ち帰れるわけではありません。
引越費用については、募集要項にも質問集にも記載がありません。自己負担と明記されているわけでもないので、扱いを知りたい場合は募集担当に直接聞く必要があります。
応募の前に町を1泊2日程度訪れる「お試し協力隊制度」があり、希望者は交通費の一部補助を受けられます。
どんな活動をする募集なのか
令和8年度に出ている募集は2件で、それぞれ1名です。どちらも軸になっているのは、NPO法人みらいの学校が運営する住民参加型のニュースサイト「UGONEWS(ウゴニュー)」です。
- 学校の情報発信サポート … 羽後高校の魅力化をはじめとする教育の取組を取材して記事にし、教職員と一緒に発信の方向性を考える伴走支援を行います。生徒向けのライティング講座も担当し、「自分が発信する」だけでなく「発信できる人を増やす」ところまでが求められます。
- 地域特産品PR … 自分が生産現場に入って就業体験をしたうえで、特産品の背景にある物語を言葉にします。ふるさと納税の返礼品のプロモーションや、町内企業どうしのコラボレーション、新商品開発のプロデュースも担います。
どちらの募集にも共通して、地域おこし協力隊としての活動報告書の作成と提出、活動計画や活動報告についての町の担当者・他の隊員との打合せ(月1回程度)、研修への参加が業務に含まれます。隊員全員が顔を合わせる会議が月に一度あり、活動報告や情報共有の場になっています。
募集の内容も時期も年度ごとに変わります。いま何の募集が出ているかは、必ず募集特設サイトで確認してください。
応募できる人と選考の流れ
募集対象として挙げられているのは次のような人です。
- 年齢・性別・学歴は不問(20代半ばから30代後半で新しい環境でのスキルアップを目指す人を歓迎)
- 農山村地域(特別豪雪地帯)での生活に意欲があり、都市地域等から羽後町へ住民票を異動できること
- 普通自動車免許(AT限定可)を持っているか、着任までに取得予定であること
- 基本的なパソコン操作ができること
- 地方公務員法第16条に規定する失格条項に該当しないこと
住民票の異動には制度上の地域要件があり、募集側も総務省の「地域要件確認表」を確認するよう案内しています。
選考は次の流れです。
- カジュアル面談 … オンラインで45分から60分。募集担当者に疑問や不安を聞ける場で、面談のあとで応募するかどうかを決めて構いません。質問集では、この面談が書類審査や面接の合否に直接影響することはないと明記されています。
- 応募書類の提出 … 所定の応募申込書と職務経歴書をメールで提出します。応募用紙は募集担当者から送られてきます。
- 第一次選考(書類選考) … 結果はおおむね2週間以内に郵送またはメールで通知されます。
- 第二次選考(面接選考) … オンラインで実施されます。
締切から最終結果までは、おおむね1か月から1か月半とされています。
卒業生15名の行き先が公開されている
羽後町がほかの自治体とはっきり違うのはここです。町の隊員紹介ページには、現役6名に加えて卒業生15名が実名で載っており、一人ひとりに「卒業&定住!」または「卒業」のラベルが付いています。任期を終えた隊員がその後どうなったかを、個人単位で公開している自治体は多くありません。
そのラベルを数えると、「卒業&定住!」が7名、「卒業」だけが8名です。
一方で、募集側が公開している質問集には「羽後町の地域おこし協力隊の卒業生15名のうち、6名がそのまま町に残っています(令和8年4月1日現在)」と書かれています。町のページのラベルを数えた7名とは1名ずれます。ずれの理由はどちらの資料にも書かれていないため、町に残った人数は6名から7名の幅で読むのが正確です。
15名のうち6名から7名という水準をどう受け止めるかですが、比較できる公的な数字としては総務省の調査があります。令和2年4月1日から令和7年3月31日までに任期を終えた隊員について、令和7年5月1日時点で定住状況を調べたもので、全国では任期終了者8,762名のうち6,163名が同じ地域に定住して70.3%、秋田県では179名のうち100名で55.9%でした。
ただし町の卒業生一覧には対象期間が示されていないため、この5年間を切り取った国の数字と同じ土俵で比べることはできません。羽後町の一覧の値打ちは、率を比べられることではなく、任期後の姿が名前と一緒に見えることのほうにあります。
町に残った卒業生は、その後の活動にも関わっています。質問集によると、町は協力隊の定着支援を地域のNPOに委託しており、その担当者は協力隊のOBで、活動の進捗だけでなく悩みや心理的な負担を共有するための定期的な面談を行っています。募集特設サイトで問い合わせ窓口を務めている担当者も、町の卒業生一覧に「卒業&定住!」として載っている隊員と同じ氏名です。着任後に退任後も町に住んでいるOB・OGへ相談できる、と特設サイトが書いているのは、この体制を指しています。
任期が終わったあと
質問集は、任期後について町の姿勢をかなりはっきり書いています。退任後の生業は自分で決めるのが基本であり、町が卒業後の給与を保証したり、決まった仕事を用意したりすることはない、という立場です。そのうえで進路のパターンとして、町の関連ポスト(集落支援員、定住支援員)への着任、起業やフリーランス、活動を通じて知り合った町内企業への就職が挙げられています。
相談のつなぎ先として名前が挙がっているのは次のとおりです。
- 起業を考える場合 … 羽後町商工会(起業相談)、あきた企業活性化センター(専門的な事業内容の相談)、日本政策金融公庫(資金調達)、羽後町役場(空き店舗の情報提供、補助金、地域の人とのマッチング)
- 就職を考える場合 … あきた就職活動支援センター、秋田県南若者サポートステーションよこて、ハローワーク湯沢
このほか、協力隊専用ではありませんが、町には県外からの転入者向けの住宅取得奨励金、住宅リフォームの助成、空き家バンク、結婚新生活支援事業といった移住・定住の支援制度があります。いずれも要件があるため、任期後の定住を前提に考えているなら、在任中のうちに担当課へ確認しておくのが確実です。
情報がどこにあるか
羽後町の協力隊について、町の公式ホームページに置かれているのは「募集中のお知らせ」「活動について(隊員紹介)」「受入事業者の募集」の3本です。報酬額も勤務時間も、町の公式ページには書かれていません。それらが載っているのは、町とは別ドメインで運営されている募集特設サイトのほうです。条件を知りたい場合は、町のページで終わらせず特設サイトまで見に行く必要があります。
町の担当は企画財政課の企画調整班(電話 0183-62-2111)です。募集についての問い合わせは、募集特設サイトの面談申込みフォーム、または受託事業者であるNPO法人みらいの学校へのメールで受け付けており、電話での問い合わせは受け付けていません。
> この記事は羽後町公式ホームページ、羽後町地域おこし協力隊の募集特設サイト、秋田県および総務省の公表資料の情報をもとに作成しています。報酬・支援内容・募集の有無は変わることがあります。最新の情報は必ず羽後町の公式ホームページと募集特設サイトで確認してください。
よくある質問
Q.羽後町の地域おこし協力隊の報酬はいくらですか。
A.募集特設サイトによると月額265,000円(令和8年4月1日現在)で、ここから社会保険料、厚生年金、雇用保険料等の本人負担分が控除されます。健康保険・厚生年金保険・雇用保険には加入します。賞与や各種手当については募集要項に記載がありません。
Q.雇い主は羽後町ですか。
A.違います。町が選定した受入事業者が隊員と雇用契約を結ぶしくみで、令和8年度に出ている募集では、羽後町から委嘱を受けてNPO法人みらいの学校に雇用されると明記されています。報酬等の原資は町が委託料として負担しますが、対象は地域協力活動に従事した分が限度で、受入事業者の業務に従事した分は受入事業者の負担です。受入事業者は今後変わる可能性があるため、応募時に雇用主を確認してください。
Q.家賃や車はどこまで負担してもらえますか。
A.住居は原則としてNPO法人みらいの学校が手配する町内のアパート等で、家賃と火災保険料は活動経費から支出されます。上限額は書かれていませんが、活動経費は年間で最大200万円程度の枠として設定される予定で、そこから住居費・火災保険料・車両関連費が優先的に差し引かれ、残りが研修費や消耗品費になります。車は個人所有の車両が無い場合に手配され、リース料やガソリン代等も同じ活動経費から出ます。引越費用については募集要項にも質問集にも記載がありません。
Q.任期を終えたあと、羽後町に残っている人はどれくらいいますか。
A.町の隊員紹介ページには卒業生15名が実名で載り、7名に「卒業&定住!」のラベルが付いています。一方、募集側の質問集は令和8年4月1日現在で15名のうち6名が町に残っているとしており、1名ずれます。差の理由は公表資料に書かれていないため、6名から7名として読むのが正確です。なお総務省の調査では、令和2年4月から令和7年3月に任期を終えた隊員の定住率は全国70.3%、秋田県55.9%ですが、町の一覧は対象期間が示されていないため単純には比較できません。
参考にした公式ページ
- 地域おこし協力隊活動について|羽後町
- 羽後町地域おこし協力隊を募集中!|羽後町
- 地域おこし協力隊を受入する民間事業者等を募集しています|羽後町
- 羽後町への移住・定住を検討されている方へ|羽後町
- 羽後町地域おこし協力隊募集(募集特設サイト)
- 地域おこし協力隊募集 Q&A(羽後町地域おこし協力隊募集)
- UGONEWS【ウゴニュー】|まちの「いいね!」が見つかるニュースサイト
- 地域おこし協力隊の活動状況(令和8年4月1日現在)|美の国あきたネット(秋田県)
- 秋田県内の地域おこし協力隊活動状況(令和8年4月1日現在)|秋田県
- 令和7年度における地域おこし協力隊の活動状況等|総務省 報道資料
- 令和7年度 地域おこし協力隊の隊員数等について|総務省
情報は変わることがあります。最新の内容は各公式ページでご確認ください。