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移住支援金はどこが手厚いのか|金額の決まり方と自治体の上乗せ

10分で読めます執筆: TownHub編集部
移住支援金の金額を解説することを示した図。単身は最大60万円、2人以上の世帯は最大100万円、18歳未満の子どもがいる子育て世帯は最大100万円以上と並べたうえで、条件や地域によって金額が異なるため事前の確認が大切だと添えている

移住支援金の金額が地域によって違う理由を、国が定める上限と自治体の上乗せに分けて整理します。単身と世帯、子どもの加算まで。

移住支援金は、国が枠を決め、都道府県が額を設定し、市町村が支給する三層の制度です。「どこが一番多いか」の答えは全国の順位表ではなく、この三層のどこで差がつくかを知ることで見えてきます。国と自治体の公式情報をもとにまとめます。

全国の順位表があてにならない理由

移住支援金を調べていると、金額の順位表をよく見かけます。ただ、この制度で順位表を作るのは実は難しいことです。

内閣官房・内閣府の地方創生ホームページは、この事業について「本事業は、地方公共団体が主体となって実施するものです。実施期間、支給額等の制度の詳細は地方公共団体により異なります」とはっきり書いています。額を決めているのは国ではなく、都道府県と市町村です。そして市町村の数は千を超え、額も要件も年度で変わります。

だからこの記事では順位を出しません。かわりに、金額がどう組み立てられているかを説明します。自分の世帯構成と移住先を当てはめれば、おおよその総額は自分で見積もれます。

制度そのものの成り立ちは移住支援金とは何かで、対象になる条件は移住支援金の対象になる人でまとめています。

金額は三つの層でできている

受け取れる総額は、性質の違う三つの部分の合計です。

内訳上限を決めているところ自治体による差
基本額(世帯・単身)国が上限、都道府県が額を設定つきにくい
18歳未満の子どもの加算国が上限、市町村が実施を判断実施の有無で差が出る
自治体独自の補助市町村(都道府県が上乗せする場合もある)ここが一番大きい

「ランキング」で大きな差に見えるものの多くは、三段目の自治体独自の補助です。一段目は全国共通の枠なので、そもそも大きく差がつきません。

国の枠は全国どこでも同じ

地方創生移住支援事業の枠は国が定めています。内閣官房・内閣府のページによると、額は次のとおりです。

区分国が示す枠実際の額の決まり方
世帯100万円以内都道府県が設定
単身60万円以内都道府県が設定
18歳未満の世帯員1人につき最大100万円を加算市町村により実施の有無・額が異なる

注意したいのは「以内」「最大」という書き方です。単身の額は「60万円以内で都道府県が設定する額」とされているので、必ず60万円と決まっているわけではありません。実際に確認した二県では、福島県は単身60万円・世帯100万円、岩手県も単身60万円・世帯100万円で、いずれも国の上限と同じ額でした(2026年8月時点)。

お金の流れも国が決めています。内閣官房・内閣府の事業概要によると、国から都道府県に交付金を交付し(補助率2分の1)、移住者には市町村から支援金を支給する仕組みです。市町村が自分の判断で基本額を大きく増やせる部分ではありません。

対象になるかどうかの骨格も共通です。移住元は「移住直前の10年間で通算5年以上、東京23区に在住または東京圏(条件不利地域を除く)に在住して東京23区へ通勤」しており、かつ「直近1年以上は東京23区に在住または通勤」していること。移住先は東京圏以外の道府県か、東京圏の条件不利地域で、移住支援事業を実施している市町村に限られます。さらに、地域の中小企業等への就業、テレワークでの業務継続、市町村ごとの独自要件(関係人口)、起業支援金の活用のいずれかに当てはまる必要があります。

つまり、基本額を比べても自治体の差はほとんど見えません。

総額を大きく動かすのは子どもの加算

世帯構成で総額が最も変わるのが、18歳未満の子どもの加算です。国の枠では子ども1人あたり最大100万円が基本額に上乗せされます。

福島県のページ(2026年7月27日更新)は「18歳未満の世帯員が一緒に移住する場合、18歳未満の世帯員1人あたり最大100万円が加算されます(子育て加算)」と案内しています。岩手県も「18歳未満のお子さまを帯同して移住した場合、お子さま1人あたり100万円を加算」としており、こちらは令和5年4月1日から大幅に増額された経緯が書かれています。加算は途中で引き上げられた項目なので、古い資料には小さい額が残っています。

ここで見落としやすいのが、加算は市町村ごとの判断だという点です。福島県のページには次の注意書きが並んでいます。

  • 子育て加算を実施していない町村がある
  • 子育て加算の適用や金額は市町村により異なる
  • 申請者本人および申請者の配偶者が18歳未満の場合は加算の対象にならない

岩手県は「申請年度の4月1日時点で18歳未満のお子さまが対象」と、判定の基準日を明記しています。子どもの年齢がどの時点で判定されるかは、額そのものと同じくらい効いてきます。

世帯構成で総額はどう変わるか

国の枠だけで計算した場合、上限は次のように動きます。

世帯の形国の枠での上限内訳
単身60万円基本額のみ
大人2人100万円基本額のみ
大人2人+子ども1人200万円基本額100万円+加算100万円
大人2人+子ども2人300万円基本額100万円+加算200万円

子どもが2人いる世帯では、加算のほうが基本額より大きくなります。「どこが手厚いか」を調べる前に、自分の世帯で加算がいくらになるかを見たほうが、総額への影響は大きいということです。

ただしこれは上限どうしを並べた計算です。実際の額は、都道府県が設定した基本額と、移住先の市町村が子育て加算を実施しているかどうかで決まります。

なお福島県には、原発事故に伴う避難指示等の対象となった12市町村(田村市、南相馬市、川俣町、広野町、楢葉町、富岡町、川内村、大熊町、双葉町、浪江町、葛尾村、飯舘村)を対象にした別枠の「福島県12市町村移住支援金」があります。県のページ(2026年4月1日更新)によると、世帯200万円・単身120万円が基本額で、18歳未満の世帯員1人当たり100万円の子育て加算と、医療・介護・福祉の有資格者が対象職種に就いた場合の1人あたり120万円の加算が用意されています。

金額だけを見ると全国でも大きい部類ですが、要件は通常の移住支援金と別物です。移住元は「12市町村に住民票を移す直前に、連続して3年以上、福島県以外の地域に在住していたこと」で、東京23区の勤務歴は問われません。一方で子育て加算のほうは「連続して3年以上、東京圏(条件不利地域を除く)に在住」が条件になっており、基本額と加算で移住元の条件が違います。額の大きい制度ほど、条件の枝分かれが細かくなります。福島県全体の支援は福島県の移住支援にまとめています。

自治体の上乗せが差の実体

自治体間の差がいちばんはっきり出るのは、国の移住支援金とは別に市町村が持っている補助です。福島県の移住ポータルサイト「ふくしまぐらし」の支援制度サーチには、県と市町村の支援制度が660件登録されていました(2026年8月時点)。分類は住まい・しごと・子育て・教育・体験・相談の6種類です。一県の中だけでこの数があるということが、そのまま自治体間の差の大きさを表しています。

住宅への補助は代表例です。福島県の「来て ふくしま 住宅取得支援事業」(2026年6月23日更新)は、県外から県内に移住して住宅を取得する人に、県と市町村が共同で補助する仕組みで、補助額は次の三つの合計です。

補助の内訳額の決まり方
市町村の補助額市町村の事業によって異なる
県の補助基本額市町村の補助額と同額(最大80万円)
県の加算額要件1つにつき10万円(合計30万円が上限)

県の加算がつくのは、市町村の補助事業に「県外移住者の年齢や世帯構成」「就業や雇用の促進」「地産地消の推進および地場産業の活性化」「脱炭素化や省エネルギー化」に関する要件が定められていて、移住者がそれを満たす場合です。市町村がどんな要件を設計しているかで、県からの上乗せ額まで変わるという作りになっています。

この事業の対象市町村の一覧を見ると、「来てにほんまつ住宅取得支援事業補助」「住んで『ばんだい』住宅取得支援事業補助金」「三島町空き家・住宅改修費等補助金」「楢葉町子育て世帯等住宅取得奨励金」というように、名前も対象も市町村ごとに違います。同じ県の中でも、隣の町と制度がそろっていません。

住まい以外にも、移住先を下見するための費用を補助する制度があります。福島県の「ふくしま12市町村移住支援交通費等補助金」は、往復交通費と宿泊費のおよそ半額を、1年で最大5回まで補助するものです。市町村の移住相談窓口と、民間事業者などの両方を訪問することが申請の条件になっています。

岩手県には、国の移住支援金の移住元要件に当てはまらない人向けに、県外から転入して転入時40歳未満であれば世帯25万円・単身15万円を支給する「いわて若者U・Iターン支援金」もあります。ただし移住支援金との重複受給はできないと明記されています。上乗せは足し算とは限らず、どちらかを選ぶ形になっていることがあります。

現金で出てこない支援もある

金額の順位表には出てこないけれど、生活費への効き方が大きい支援もあります。

岩手県の「いわてお試し居住体験事業」は、県外から岩手県へ移住する人に、家電などを備えた県営住宅を月額1万円の家賃で貸し出す制度です。県公式の交流サイトなどで県内の暮らしの様子を発信することが条件になっています。募集は子育て世代枠・担い手育成枠・一般世代枠に分かれ、貸し出せる戸数には限りがあります。入居できる時期も枠ごとに決まっています。

このほか、空き家バンク、公営住宅の紹介、お試し滞在の宿泊費補助なども多くの自治体にあります。現金の額だけを並べると、こうした支援は丸ごと視界から消えます。家賃が月1万円で済むなら、年間の差は現金の給付に匹敵します。

額の大きさだけで選ぶと見落とすこと

5年住み続ける前提の制度である

移住支援金には返還制度があります。内閣官房・内閣府のページは「移住支援金の申請から5年以内に、移住先から転出した場合」「虚偽の申請をした場合」などを返還の対象として挙げています。

福島県は返還額まで公表しています(2026年7月27日更新時点)。

該当する場合返還額
虚偽の申請または不正の手段で給付を受けた全額
申請日から3年に満たない期間で転出した全額
申請日から3年以上5年以内に転出した半額
申請日から1年以内に要件を満たす職を辞した(一般就業・プロ人材)全額

雇用企業の倒産や災害など、やむを得ない事情があると県および市町村が認めた場合はこの限りではない、とも書かれています。それでも、受け取った額が大きいほど、途中で離れたときに返す額も大きくなります。額の大きさだけで移住先を決めると、ここが効いてきます。

そもそも実施していない自治体がある

国が公表している令和8年度の実施都道府県・連携市町村一覧(令和8年4月1日時点)は、各県の全市町村を並べたうえで、移住支援金を実施している市町村に印を付ける形式になっています。この印を数えると、移住支援金の欄に印が付いているのは1,304市区町村でした。同じ県の中でも、印が付いていない市町村があります。

福島県の場合は、県のページに実施市町村として59市町村が並んでおり、県内すべての市町村が対象でした(2026年7月27日更新時点)。県によって実施率が違うので、まず移住先が一覧に載っているかを確かめるのが最初の一歩です。

要件は額に比例して細かくなる

金額の大きい制度ほど、条件は細かくなります。福島県の一般就業の場合、就業先には次の条件が付きます。

  • 就業マッチングサイトに掲載された「移住支援金対象求人」に応募して採用されること
  • 週20時間以上の無期雇用契約であること
  • 5年以上継続して就業する意思があること
  • 転勤・出向・出張・研修等ではない新規の雇用であること
  • 3親等以内の親族が取締役等の経営を担う職に就いていない企業であること(一定の場合を除く)

テレワークで申請する場合も、自分の意思による移住であること、移住先を生活の本拠地とすること、週20時間以上テレワークを実施することなどが求められます。「移住して働けば対象」ではなく、働き方の中身まで条件になっています。

さらに福島県12市町村移住支援金では、平成23年3月11日時点で12市町村に居住していた人は対象外、過去に移住支援金の交付を受けた人は対象外、転入直前の居住地で市区町村民税を滞納していないこと、といった条件も加わります。

申請できる時期が決まっている

申請時期も自治体で違います。福島県は「移住後原則1年以内に移住した市町村に申請」、岩手県は「転入日から3か月以上1年以内」です。転入直後は申請できない自治体があるということです。

福島県はさらに「移住後1年以内であっても、各年度内の受付〆切後は申請ができません」と注意しています。1年以内という期限とは別に、年度ごとの受付締切が存在します。

自分がいくら受け取れるかを調べる手順

順位表を探すより、次の順で自分の条件を当てはめるほうが早く正確です。

  1. 移住先が実施しているか確認する。内閣官房・内閣府の地方創生ホームページに、実施都道府県・連携市町村の一覧が公開されています。ここに載っていなければ、その市町村では申請できません。
  2. 都道府県のページで基本額を見る。世帯・単身の額と、子育て加算の扱いが書かれています。
  3. 市町村のページで加算と独自の上乗せを見る。子育て加算を実施しているか、住宅・家賃・引越しなどの独自補助があるかは、市町村ごとに確認する必要があります。
  4. 就業要件に合う求人があるか調べる。一般就業で申請するなら、都道府県のマッチングサイトに掲載されている対象求人に応募する必要があります。掲載前に応募していた求人は対象外になる場合があります。
  5. 現金以外の支援も並べる。住宅の貸与、お試し滞在、空き家バンクなどは金額の比較には出てきませんが、実際の負担は変わります。
  6. 返還の条件を読む。何年住めば返さなくて済むのか、職を辞めた場合はどうなるのかを、受け取る前に確認しておきます。
  7. 転入する前に市町村の窓口に相談する。申請の時期、年度内の締切、必要書類は市町村ごとに違います。福島県も「必ず事前に転入予定の市町村にご相談ください」と案内しています。

額を先に決めてから移住先を選ぶのではなく、移住先の候補を絞ってから額を確かめる。この順番のほうが、結果的に見積もりの精度が上がります。

この記事は内閣官房・内閣府の地方創生ホームページ、福島県および岩手県の公式ホームページの情報をもとに作成しています。支給額・加算・要件・申請時期は年度によって変わることがあり、市町村ごとにも異なります。最新の情報は必ず移住先の市町村と、内閣官房・内閣府の公式ホームページで確認してください。

よくある質問

Q.移住支援金が一番多くもらえる自治体はどこですか。

A.全国の順位を示すことはできません。基本額(世帯100万円以内・単身60万円以内)と18歳未満の子ども1人あたり最大100万円の加算は国が枠を定めており、ここで大きな差はつきません。自治体間の差が出るのは、住宅取得や家賃、引越費用などの独自の上乗せです。額は年度で変わるため、移住先の候補を絞ってから、その市町村の公式ページで確かめてください。

Q.子どもがいると総額はどのくらい変わりますか。

A.国の枠では18歳未満の世帯員1人につき最大100万円が加算されます。上限どうしで計算すると、大人2人だけなら100万円、子どもが1人いれば200万円、2人いれば300万円が上限になり、子どもが複数いる世帯では加算のほうが基本額より大きくなります。ただし子育て加算を実施していない町村があり、適用や金額も市町村によって異なります。年齢を判定する基準日も自治体が定めているため、移住先の市町村に確認してください。

Q.受け取ったあとに引っ越すと返さないといけませんか。

A.移住支援金には返還制度があります。内閣官房・内閣府のページでは、申請から5年以内に移住先から転出した場合などが返還の対象とされています。福島県の場合は、申請日から3年に満たない期間で転出すると全額、3年以上5年以内の転出では半額を返還すると案内されています(2026年7月27日更新時点)。倒産や災害などやむを得ない事情が認められた場合は対象外になることもあります。金額の大きさだけで移住先を選ぶ前に、返還の条件を読んでおいてください。

TownHub編集部

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全国の地域情報を取材・編集しています。自治体の公開情報と現地取材をもとに、その街で暮らす人に役立つ情報をお届けします。

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