移住支援金の対象になる人|単身・個人事業主・派遣・年収の扱い

移住支援金を受け取れるのはどんな人かを、働き方や世帯の形ごとに整理します。単身、個人事業主、派遣、テレワーク、年収の条件まで。
移住支援金は、金額よりも先に「自分は対象になるのか」でつまずく制度です。会社に転職して移住する人を想定した説明が多く、個人事業主や派遣、勤め先を変えずに移住する人ほど答えが見つかりにくくなっています。国の事業概要と、各県が公表している実施要領をもとに、要件だけを整理します。
対象かどうかは3つの条件の掛け算で決まる
移住支援金(地方創生移住支援事業)は、次の3つをすべて満たす人が対象です。1つでも外れると、他がどれだけ当てはまっても対象になりません。
| 条件 | 何を見るか |
|---|---|
| 移住元 | 移住する前に、どこに住み、どこへ通勤していたか |
| 移住先 | 移住した先が、この事業を実施している市町村か |
| 就業等 | 移住したあとの働き方が、4つの入口のどれかに当てはまるか |
制度の全体像は移住支援金とは、金額の決まり方は移住支援金の金額で扱います。この記事は要件だけを見ます。
支給を決めるのは移住先の市町村です。この記事は判断の材料であって、判定そのものではありません。
移住元の条件|23区に住んでいたか、23区へ通勤していたか
内閣官房・内閣府の解説では、移住元の要件は次のとおりです。
- 移住する直前の10年間のうち、通算5年以上、東京23区に在住していたこと。または東京圏(東京都・埼玉県・千葉県・神奈川県)のうち条件不利地域以外に在住し、東京23区へ通勤していたこと
- そのうえで、直近1年以上、東京23区に在住または23区へ通勤していたこと
通勤で数える場合には、注記がついています。国の解説ページは「雇用者としての通勤の場合にあっては、雇用保険の被保険者としての通勤に限る」としています。北海道の要件一覧はこれに加えて、個人事業主として23区へ通勤していた場合も並べて書いています。
直近1年の通勤期間については、高知県の実施要領が住民票を移す3か月前までを起算点にできると定めています。退職から転出まで間があいた人には効く規定です。
在住だけで数えられるのかは、書きぶりを読み分ける必要があります。高知県と北海道の要領では、東京23区に「在住していたこと」に就労の条件はついていません。一方で長野県は移住元の要件を「在住し、かつ就労をしていたこと」とし、移住元の範囲自体も東京圏に加えて愛知県・大阪府まで広げています。移住元の要件は都道府県によって書きぶりが違うので、移住先の県と市町村の要領で確かめてください。
東京圏に住んでいても、条件不利地域に住んでいた人が23区へ通勤していた場合は、この通勤の道筋では移住元の要件を満たしません。条件不利地域として挙げられている市町村は資料によって範囲の記載が異なります。自分が住んでいた市町村が該当するかどうかは、移住先の自治体に確認してください。
学生だった期間は数えられるのか
条文にただし書きがあります。高知県・北海道・島根県の要領と要件一覧はいずれも、東京圏のうち条件不利地域以外に在住しながら東京23区内の大学等へ通学し、東京23区内の企業等へ就職した人については、通学期間も移住元の対象期間に算入できるとしています。
- 島根県は、算入できる通学期間に修業年限を上限(高等専門学校は2年を上限)という制限を明記しています。高知県と北海道の記載には上限の文言がありません。上限を置くかどうかは自治体によって違います。
- この規定は「23区の外に住んで23区の大学へ通っていた人」を救うためのものです。東京23区内に住民票を置いて学生生活を送っていた人は、そもそも「23区に在住していた」期間として数える読み方になります
- 住民票をどこに置いていたかで結論が変わります。実家に住民票を残したまま23区で暮らしていた場合は、在住期間として認められるかを個別に確認してください
移住先の条件|東京圏の外、かつ実施している市町村
- 移住先は東京圏以外の道府県、または東京圏のうち条件不利地域の市町村です
- ただし対象は移住支援事業を実施している都道府県・市町村に限られます。同じ県の中でも、実施している市町村と実施していない市町村があります
- 申請は転入後1年以内です。市町村によっては「転入後3か月以上1年以内」と下限を置いている場合があります
- 申請日から5年以上、継続して住む意思が求められます
- 高知県の要領は、国の交付決定後で、かつ県が事業の詳細を公表した後に転入したこと、も要件に挙げています。移住が先で制度の開始が後だと、対象にならないことがあります
受け取ったあとにも条件は続きます。高知県の要領は、申請日から3年未満で転出した場合は全額、3年以上5年以内の転出は半額の返還を求めると定めています(倒産・災害・病気などやむを得ない事情がある場合を除く)。
働き方ごとの扱い|4つの入口のどれかを満たす
移住元と移住先の条件を満たしたうえで、次の4つのどれかに当てはまる必要があります。
| 入口 | 中心になる要件 | 想定される働き方 |
|---|---|---|
| 就業 | 県のマッチングサイトに掲載された対象求人に応募し、週20時間以上の無期雇用契約で働く | 転職して移住する |
| テレワーク | 自分の意思で移住し、移住前の業務を週20時間以上続ける | 勤め先を変えずに移住する |
| 起業 | 起業支援金の交付決定を受ける | 移住先で事業を始める |
| 関係人口 | 市町村が個別に定める要件を満たす | 就職も起業もしない |
就職して移住する場合と、派遣で働いている場合
就業の入口は要件が細かく決まっています。北海道と高知県の要領に共通するのは次の点です。
- 勤務地が東京圏以外、または東京圏内の条件不利地域にあること
- 就業先が、都道府県が移住支援金の対象としてマッチングサイトに掲載している求人であること
- 週20時間以上の無期雇用契約に基づいて就業し、申請時に在職していること
- その求人への応募日が、マッチングサイトに対象として掲載された日より後であること
- 転勤・出向・出張・研修による勤務地の変更ではなく、新規の雇用であること
- 申請日から5年以上、継続して勤務する意思があること
- 北海道は、3親等以内の親族が代表者や取締役などを務める法人への就業は対象外、とも書いています
掲載されていない求人に就職した場合、この入口では対象になりません。転職活動を始める前に移住先の県のマッチングサイトを見たかどうかで結果が変わります。応募日と掲載日の前後関係も見られるため、順番が大事です。
なお、プロフェッショナル人材事業または先導的人材マッチング事業を利用して就業した場合は、マッチングサイト掲載の条件が外れる別枠が用意されています。
派遣社員の扱いについては、確認した国と県の資料に記載を見つけられませんでした。分かれ目になりそうなのは次の2点ですが、いずれも公式の記載を確認できていません。
- 「就業先」として見るのが派遣元なのか派遣先なのか
- 派遣元との契約が「週20時間以上の無期雇用契約」に当たるか
派遣で働いている人は、契約の形を具体的に伝えたうえで、移住先の市町村と県に直接確認してください。
テレワークで移住前の仕事を続ける場合
勤め先を変えずに移住する道筋です。高知県と北海道の要領は、次のすべてを求めています。
- 所属先からの命令ではなく、自分の意思で移住したこと。移住先を生活の本拠とし、移住元での業務を引き続き行うこと
- 移住先でテレワークにより勤務し(原則、恒常的に通勤しない)、週20時間以上テレワークを実施すること
- 国の交付金を活用した取り組みの中で、所属先から本人へ資金提供を受けていないこと
会社都合の転勤としての移住は、この入口には当たりません。自分の意思で移住したことは、所属先の就業証明書で示す形になります。
個人事業主・フリーランスの場合
テレワークの入口で申請できる運用が、公式に示されています。北海道と島根県の必要書類一覧には、テレワークの場合の提出書類として「所属先企業等の就業証明書」に加えて、個人事業主を対象とする場合の追加書類が挙げられています。
- 業務委託契約書等(申請日以降もテレワークにより移住前の業務を続けることが確認できる書類)
- 開業届の写し、または確定申告書の写し
- 申請前3か月間において、そのテレワーク業務の実態(収入)が確認できる書類
つまり、移住前から続けている仕事を移住後もそのまま続ける個人事業主には、テレワークの入口が開かれています。週20時間以上という条件は勤め人と同じです。
移住元の期間についても手当てがあります。北海道は移住元の要件を「雇用保険の被保険者または個人事業主として東京23区内への通勤をしていたこと」と書いています。島根県の必要書類一覧にも、法人経営者または個人事業主だけが提出する書類として履歴事項全部証明書や開業届の写しが挙がっています。ただし国の解説ページには個人事業主に触れた記載がなく、「雇用者としての通勤の場合にあっては、雇用保険の被保険者としての通勤に限る」とあるだけです。個人事業主として23区へ通勤していた期間をどう扱うかは、県によって書きぶりが違います。
一方、就業の入口は無期雇用契約が前提なので、個人事業主のままでは通れません。移住先で新しく事業を始めるなら起業の入口になります。
起業する場合
起業の入口は、移住支援金だけでは完結しません。別制度である地方創生起業支援事業(起業支援金)の交付決定を受けていることが要件です。国の解説ページと北海道の要件一覧は「1年以内に交付決定を受けていること」としています。
高知県の要領では、対象になる事業に「社会的事業」であること(地域課題の解決に資すること、事業として自立して続けられること、デジタル技術を活用していること)が求められ、外部委員会の審査を経て決まります。移住支援金の入口の中で、審査という関門があるのはここだけです。
対象者には、株式会社などの設立だけでなく個人事業の開業届を出して代表者になる人も含まれます(高知県の要領)。法人をつくらないと使えない制度ではありません。
就職も起業もしない道筋(関係人口)
移住先の地域や人と関わりのある人(関係人口)として、市町村が個別に定める要件を満たす道筋があります。国も県も内容を決めておらず、市町村ごとに違います。
高知県の要領は、市町村が定める要件について、関係人口の範囲が明確であること、地域の基幹産業である農林水産業に加えて地域に必要な業種や家業への就業要件が設定されていること、といった枠だけを示しています。また、転勤・出向・出張・研修による勤務地の変更や、進学に伴う転入は対象外です。
この入口を使えるかどうかは、移住先の市町村に聞く以外に調べる方法がありません。地域に関わる形で移住する道筋としては地域おこし協力隊もありますが、それは別の制度です。応募の条件は地域おこし協力隊の応募条件で扱います。地域の要件をどう見るかという考え方は共通しています。
単身と世帯|要件はどう違うか
金額が違うだけでなく、世帯として申請する場合は要件が増えます。高知県と北海道の要領が挙げているのは次の点です。
- 申請者を含む2人以上の世帯員が、移住元で同一世帯に属していたこと
- 申請者を含む2人以上の世帯員が、申請時にも同一世帯に属していること
- 世帯員のいずれもが、支給申請時において転入後1年以内であること
- 世帯員のいずれもが、反社会的勢力またはそれと関係を有する者でないこと
配偶者に固有の就業要件は書かれていません。就業・テレワーク・起業・関係人口のどれかを満たすことが求められているのは申請者です。ただし世帯員それぞれが移住元の要件を満たす必要があるかどうかは、公式の記載を確認できませんでした。共働きで移住元の状況が異なる場合は、必ず市町村に確認してください。
18歳未満の子どもを帯同する場合は加算があります。対象年齢は18歳未満で、加算を実施するかどうかは市町村によって異なると北海道は注記しています。
単身で申請したあとに家族が移住してくる形をどう扱うかは、市町村によって取り扱いが分かれます。先に単身で移り、あとから家族を呼ぶ予定がある人は、移住する前に確認しておくのが安全です。
年収や所得の上限はあるのか
確認した範囲では、申請者本人の年収や所得の上限を定めた記述は見当たりませんでした。国の事業概要と解説ページ、高知県の実施要領、北海道の要件一覧のいずれにも、所得制限に当たる条文はありません。
お金にまつわる条件は、本人の年収ではなく次のような形で置かれています。
- 週20時間以上という働く時間の条件
- マッチングサイトに掲載される法人の側の条件(資本金10億円以上の企業でないこと、みなし大企業でないことなど。高知県の要領)
- 県税の滞納がないこと(高知県の要領)
ただし市町村が独自に要件を上乗せする余地はあります。所得の条件はないと決めてかからず、移住先の市町村の要綱を見てください。
対象にならないのはどんなときか
要件のどこで外れるかを整理します。
| 外れる場所 | 具体例 |
|---|---|
| 移住元 | 23区での在住・通勤が通算5年に届かない。直近1年の条件を満たさない。東京圏でも条件不利地域に住みながら23区へ通勤していた |
| 移住先 | 移住先の市町村が事業を実施していない。転入から1年を過ぎた。制度が公表される前に転入した |
| 働き方 | マッチングサイトに載っていない求人に就職した。会社の命令による転勤で移住した。有期契約、または週20時間未満 |
| その他 | 過去10年以内に世帯員として移住支援金を受け取っている。県税の滞納がある。在留資格が要件に合わない |
ここに当てはまっても、別の入口なら通れることがあります。就業で外れた人がテレワークで通る、就職も起業もしない人が関係人口で通る、といった具合です。1つの入口で外れただけで諦めないでください。
自治体に確認するときに聞くこと
要件は、都道府県の実施要領と市町村の要綱の二重構造になっています。同じ国の制度でも、書きぶりは自治体によって違います。問い合わせるときは、自分の状況を具体的に伝えたうえで、次を聞くのが確実です。
- 自分の移住元の期間(在住・通勤・通学の別と、それぞれの年数、住民票の所在)が要件を満たすか
- 自分の働き方が、4つの入口のどれに当たるか
- その入口で必要になる書類は何か
- 転入のタイミングとして問題がないか
問い合わせ先は移住先の市町村です。都道府県が事業の枠組みを、市町村が支給の判断を担っています。移住してから確認するのでは間に合わない要件が並んでいるため、引っ越しを決める前に聞いてください。
この記事は内閣官房・内閣府の地方創生に関する公式サイトと、高知県・北海道・島根県・長野県が公表している実施要領および要件の案内をもとに作成しています。移住支援金の要件は改定されることがあり、市町村ごとに独自の要件が加わります。最新の情報と自分が対象になるかどうかは、必ず移住先の市町村と都道府県の公式ページで確認してください。
よくある質問
Q.個人事業主やフリーランスでも移住支援金の対象になりますか。
A.移住前から続けている仕事を移住後もテレワークで続ける場合、テレワークの入口で申請できる運用が公式に示されています。北海道と島根県の必要書類一覧には、個人事業主を対象とする場合の追加書類として、業務委託契約書等、開業届または確定申告書の写し、申請前3か月間の業務の実態(収入)が確認できる書類が挙げられています。週20時間以上という条件は勤め人と同じです。判断するのは移住先の市町村なので、契約の形を伝えて確認してください。
Q.派遣社員は対象になりますか。
A.確認した国と県の資料には、派遣社員の扱いについての記載を見つけられませんでした。就業の入口は「県のマッチングサイトに掲載された求人であること」「週20時間以上の無期雇用契約であること」が要件なので、就業先を派遣元と派遣先のどちらで見るかが分かれ目になります。移住先の市町村に契約形態を伝えて直接確認してください。
Q.年収の上限はありますか。
A.確認した国の事業概要と解説ページ、高知県の実施要領、北海道の要件一覧には、本人の年収や所得の上限を定めた記述は見当たりませんでした。条件は働く時間(週20時間以上)や、求人を出す法人の側の規模などに置かれています。ただし市町村が独自の要件を加えることがあるため、移住先の市町村の要綱で確認してください。





