東松島市の地域おこし協力隊|個人事業主として活動する条件
東松島市の地域おこし協力隊について、個人事業主として活動する場合の報酬と保険、卒業後の定住状況をまとめます。
東松島市は宮城県沿岸部のほぼ中央にある人口約37,000人の市で、東日本大震災で生活基盤と産業基盤に甚大な被害を受けました。この市の地域おこし協力隊は、市とも受入先とも雇用契約を結ばず、隊員が個人事業主として活動する形をとっています。東松島市と総務省の公式情報をもとにまとめます。
隊員は市の職員ではなく、個人事業主として活動します
東松島市の募集要項は、隊員の立場を次のように書いています。
東松島市や受入れ先企業との雇用契約、委託契約は存在しません。そのため、雇用保険には加入せず、個人事業主扱いとして活動します。
市の設置要綱にも「協力隊は、本市職員の身分を有さない」と定められています。ここで大事なのは、雇用保険について「加入しない」とはっきり否定されていることです。書かれていないのではなく、加入しないと明記されています。
そのぶん、次の負担が隊員自身に残ります。
- 国民健康保険と国民年金は、各自で加入・支払いをします。
- 国民健康保険税、国民年金保険料、介護保険料などは自己負担と、要項の「自己負担となる経費」の欄に並んでいます。
- 報償の振込は、所得税を控除した額になります。
- 賞与と退職金はありません。
つまり、受け取る月額から社会保険料と税を自分で払っていく形になります。制度そのもののしくみは地域おこし協力隊とはにまとめています。
ただし、市は「委嘱当初より個人としてフリーで活動することは、原則として想定していません」とも書いています。個人事業主扱いではありますが、受入先での従事が想定されています。市が公開している制度説明の資料では、活動の8割を起業・就業に向けたスキルアップ、2割を地域活性化活動とする考え方が示されています。
報償は月額260,000円、活動時間は月155時間
報償等の額は月額260,000円(日額13,000円相当)です。
- 活動時間:月155時間(1日あたり7時間45分、月間20日)が基本
- 支払い:実績払いのため、委嘱月の翌月から支払いが開始されます
- 活動内容によっては、土曜・日曜・祝日が活動日になることや、夜間の会議で活動時間を調整する場合があります
月額260,000円を月155時間で割ると、1時間あたり約1,677円になります。設置要綱では、隊員の活動時間は原則1日7時間45分、1か月155時間を超えないものと定められています。報酬の考え方そのものは地域おこし協力隊の給料と待遇でまとめています。
設置要綱には、産前産後または育児のために活動を中断する場合、最長1年間の中断期間を設けることができ、その期間は委嘱期間の算定から除くという定めもあります。委嘱期間は原則1年で、1年ごとの延長により最長3年です。
活動費の限度額は、資料によって170万円と200万円に分かれています
活動費については、市のウェブサイトに載っている資料のあいだで金額が食い違っています。読み分けが必要なところなので、順に整理します。
- 募集要項(令和7年12月):活動経費として年度内に2,000,000円を限度に補助
- 募集ページに参考資料として置かれている活動費補助金等交付要綱のPDF:第4条で隊員1人につき年間170万円以内
この2つのうち、現行の定めは200万円のほうです。市の例規集に載っている東松島市地域おこし協力隊活動費補助金等交付要綱(内容現在は令和8年4月1日、令和5年12月1日施行)の第4条は「隊員1人につき年間200万円以内」となっており、募集要項の金額と一致します。募集ページに置かれているPDFは、平成28年6月9日の制定当時の本文で、その後の改正が反映されていません。金額を確かめるときは例規集の本文を見るのが確実です。
活動費については、次の点もあわせて示されています。
- 活動に係るけがの保険に加入するための保険料は、活動費から徴収されます
- 1年未満で退任した場合や、目的外使用・不正な使途があった場合は、活動費補助金の一部または全部の返還を求められることがあります
- 活動費で購入した備品は、一定の期間は地域おこし活動に使う必要があり、効果が十分でない期間内に処分すると返還を求められることがあります
起業に向けた活動には別枠があります。現行の交付要綱では、起業活動に要する経費として隊員または元隊員1人につき1回限り100万円以内が示されています。ただしこの起業活動費には返還の条件が付いていて、任期満了日から3年以内に市外へ転出したり、補助を受けて起業した事業をやめたりすると、期間に応じて返還を命じられます。1年未満なら交付決定額の100分の100、1年以上2年未満なら100分の75、2年以上3年未満なら100分の50です。フランチャイズ契約やこれに類する契約に基づく事業は、この補助の対象から外れます。
住まいは補助、車は原則持ち込み、引越費用は自己負担
生活面の支援は、補助されるものと自己負担のものがはっきり書き分けられています。
補助の対象になるのは、交付要綱の範囲内で次のものです。
- 住居借上費用:市と協議のうえ補助されます
- 活動用車両:原則持ち込みです。車両を保有しておらず活動に支障をきたす場合は車両リースなどで対応し、その費用は補助対象経費になります。ただし燃料費その他の費用は、活動割合を乗じた金額が補助対象です
- 通信料(固定電話・携帯電話・インターネット接続料金):活動割合を乗じた金額が補助対象
- パソコンやスマートフォン:公私に幅広く使える機器は原則持ち込み。必需性が認められた場合に限り、活動割合を乗じた金額が補助対象
- 資格取得費用:隊員活動に直接関係するものに限ります
要項は「生活や通勤の移動手段として、個人の自家用車の持ち込みをお勧めします」とも添えています。燃料費が活動割合で按分されるため、私用にあたる分は補助されません。
一方、自己負担とされているのは次のものです。
- 転居に係る費用、食費、光熱水費、町内会費など
- 国民健康保険税、国民年金保険料、介護保険料など
- 生活に必要な備品、消耗品など
- 副業など、地域おこし協力隊活動に関係のない活動経費
引越費用が自己負担と明記されている点は、着任前の資金計画にそのまま響きます。
応募できる地域と、旧鳴瀬町という条件
募集対象は、条件不利地域を除く三大都市圏内の都市地域、政令指定都市、その他都市地域に住民票がある方で、採用決定後に東松島市へ住民票と生活拠点を移せる方です。家族での居住もできます。募集ページには「居住期間は問われません」と添えられています。
ここに東松島市固有の条件が付きます。要項にはこう書かれています。
なお、その他都市地域に住民票を有する方は、市内の条件不利地域(旧鳴瀬町)に住民票及び生活所点を移す等の条件が付されます。
「生活所点」は要項の原文のままです。住民票を移す先が市内のどこでもよいわけではなく、転出元によっては旧鳴瀬町の区域に移る必要があるということです。総務省の過疎地域市町村等一覧(令和4年4月1日現在)でも、東松島市は一部過疎とされ、該当する区域は鳴瀬町と示されています。
注意したいのは、市が参考資料として募集ページに置いている総務省の地域要件確認表が平成29年4月1日現在のもので、そこでは東松島市自身は条件不利地域の印が付かない区分になっている点です。旧鳴瀬町が過疎地域として扱われるようになったのはその後なので、自分の住所が対象になるかを調べるときは、日付を見たうえで市の担当課に確認するのが安全です。
このほかの条件は次のとおりです。
- 年齢:おおむね22歳から45歳まで(受入先ごとに別の範囲が示されています)
- 性別:原則問いません(受入先ごとに指定がある場合があります)
- 原則、学校卒業後の社会人経験3年以上
- 普通自動車免許を持ち、日常的な運転に支障がないこと
- パソコンの基本的な操作ができ、インターネット環境を活動に利用できること
- SNSを活用して活動や市の魅力を発信できること
- 活動終了後、東松島市で起業・就業して定住する意欲があること
- 地方公務員法第16条の欠格条項に該当しないこと
同一地域で2年以上隊員として活動し、解嘱から1年以内の方は、住民票の所在地は問われません。設置要綱ではさらに、語学指導等を行う外国青年招致事業を2年以上務めて終了から1年以内の方と、海外在留者も同じ扱いとされています。応募できる人の条件の全体像は地域おこし協力隊の応募条件にまとめています。
なお設置要綱は、協力隊を隊員・おためし地域おこし協力隊・インターンの3種類に分けています。おためしは2泊3日以上2週間以内、インターンは2週間以上3か月以内で、インターンの報償費は日額7千円と定められています。ただし現在公開されている募集要項が扱っているのは隊員の枠だけです。
受入先は実名で公開され、年齢や性別の条件も書かれています
東松島市は「ミッション型」と「フリーミッション型」の2本立てで募集しています。ミッション型は活動内容や活動場所をあらかじめ設定する方式、フリーミッション型は自分でやりたいことを設定して市にプレゼンテーションを行い、採択を目指す方式です。募集人員はミッション型が事業所各1人程度、フリーミッション型が1人程度とされています。
ミッション型の受入先は、募集要項に社名・業務内容・営業時間・3年分の活動内容・応募条件・サポート体制まで実名で並んでいます。応募を考えるうえで重要なのは、受入先ごとに年齢と性別の条件が違うことです。要項に載っている例をいくつか挙げます。
| 受入先 | 業種等 | 年齢 | 性別 |
|---|---|---|---|
| 株式会社髙橋徳治商店 | 食品製造業 | 20〜35歳 | 不問 |
| 佐藤農園 | 農業 | 25〜45歳 | 不問 |
| 貴凛庁株式会社 | 防災体験型宿泊施設 | 20〜40歳 | 男性 |
| いろどりの丘 | 小規模多機能施設 | 20〜45歳 | 不問 |
| 株式会社奥松島水産 | かき養殖業 | 20〜45歳 | 男性 |
| 後藤水産 | 水産業 | 22〜45歳 | 不問 |
| 有限会社バイクショップいしのまき | サービス業 | 25〜45歳 | 男性 |
| 長さんファーム | 農業 | 18〜45歳 | 不問 |
性別を「男性」と明記している受入先が複数あります。募集全体の条件では「性別は原則問いません」となっているため、受入先ごとの欄まで読まないと気づけません。経験や資格の条件も受入先ごとに異なり、たとえばバイクショップいしのまきは自動車整備士3級または二輪車整備士3級を必要資格としています。
活動内容の書き方も受入先によって差があります。貴凛庁株式会社は「東日本大震災で廃校になった学校を利用し、防災を主体とする宿泊施設を運営する」事業者で、活動地は宮戸島の室浜です。後藤水産は1年目から3年目まで定性目標と定量目標を数字で示し、月に一度の個別面談を行うとしています。宮戸干拓宮戸生産組合は「代表が協力隊の卒業生で、定住し独立した経験を身近で伝える」と書いています。
フリーミッション型で想定されているのは、漁業、農業、食品加工業の製造・販売、飲食店経営、観光振興、そのほか地域活性化に資する活動です。
選考は通年受付の3期制です
応募は通年で受け付けていますが、期別に締切が設けられています。
| 区分 | 応募期間 | 一次選考 | 二次選考 | 委嘱 |
|---|---|---|---|---|
| 第1期 | 3月1日〜5月末日 | 6月下旬 | 7月下旬 | 10月1日付 |
| 第2期 | 9月1日〜10月末日 | 12月下旬 | 1月下旬 | 翌年4月1日付 |
| 第3期 | 12月1日〜翌年2月末日 | 3月下旬 | 4月下旬 | 翌年7月1日付 |
提出書類は、地域おこし協力隊応募用紙と事前レポートです。レポートは400字詰め原稿用紙2枚以上を直筆で作成し、次の3つから1つテーマを選びます。
- 私が思う東松島市の課題と私ができること
- 地域おこし活動を通じて自分が得たいもの、与えたいもの
- 私が目指す地域おこし協力隊の姿
一次選考は応募用紙・事前レポートをもとにした書類審査とオンライン面談です。二次選考は2部構成で、1部が現役地域おこし協力隊や移住コーディネーター、受け入れ先候補企業等とのディスカッション(30分程度)、2部が面接審査(15分程度)です。面接の相手だけでなく、実際に活動している隊員や受入先候補と話す時間が選考のなかに組み込まれています。
合格後は委嘱状交付式に出席します。なお、応募用紙や事前レポートの郵送代、オンライン面談の通信費、面接のための交通費は応募者の負担です。
隊員の転出元まで公開されています
総務省がまとめた令和7年度の隊員数によると、東松島市の地域おこし協力隊は10名です。宮城県全体では264名・29の受入自治体があり、全国では8,196名・1,187自治体が受け入れています。
東松島市の隊員紹介ページは、この10名だけでなく卒業した隊員も載せ続けているのが特徴です。令和7年12月1日更新の時点で、No.1からNo.37までの通し番号で34名分が掲載されています(No.8・No.20・No.28は欠番)。うち24名に【卒業】の表記が付き、残る10名が現役の隊員です。
一人ひとりについて、委嘱年月日・転出元・主な活動・主な活動場所が書かれています。転出元まで公開しているため、地域要件が実際にどう運用されているかが読み取れます。34名の内訳は次のとおりです。
- 東京都:11名(世田谷区・練馬区・足立区・八王子市などの表記を含む)
- 仙台市:11名
- 埼玉県:6名
- 神奈川県:2名
- 茨城県結城市・宮城県石巻市・山形県東根市・大阪府:各1名
三大都市圏だけでなく、政令指定都市である仙台市からの転入が東京都と並んで最も多いことが分かります。宮城県石巻市からの転入もあります。活動の分野も、漁業、農業、林業、観光振興、コミュニティスクール、デザイン、サンドアート、芸術振興(バイオリン)、移住コーディネーター、空き家・空き店舗対策など幅があります。
隊員紹介ページには、卒業した隊員の活動報告やインタビュー記事のPDFも卒隊後そのまま置かれています。このページだけでPDFへのリンクが49本あり、平成28年度に委嘱された初期の隊員の資料も残っています。応募前に活動の実態を読み込みたい人にとっては、まとまった材料になります。
卒業25人中19人が定住したと市は公表しています
東松島市は隊員紹介ページで、定住の実績を数字で示しています。
令和7年12月1日現在、1年以上の任期を終えて卒業された隊員25人中19人が地域に定住しています。
ただし、同じページで【卒業】と表記されている隊員は24名で、本文の25人とは1名の差があります。どちらかが誤りなのか、掲載していない卒業者がいるのかは公表されていません。定住の実績を確かめたいときは、この差があることを前提に市の担当課へ問い合わせるのが確実です。
なお、市の交付要綱は起業活動費補助金について、任期満了から3年以内に市外へ転出すると返還を求める仕組みを置いています。定住は市の目標であると同時に、補助を受けた場合には条件にもなっています。
問い合わせ先
地域おこし協力隊の担当は企画部企画政策課の基地政策・地域振興係です。住所は東松島市矢本字上河戸36番地1の東松島市役所、電話は0225-82-1111(代表)で、内線は1231から1235です。
なお、募集要項のPDFには問い合わせ先として「復興政策部復興政策課 地域おこし協力隊担当」と書かれていますが、令和8年4月現在の市の組織一覧にこの部課はありません。連絡先は募集ページに記載されている企画政策課を使ってください。応募書類は郵送または持参で提出します。
この記事は東松島市公式ホームページ、東松島市例規集、および総務省の公表資料をもとに作成しています。募集の有無・報償・活動費・受入先・支援の内容は年度や募集ごとに変わります。最新の情報は必ず東松島市の公式ホームページで確認してください。
よくある質問
Q.東松島市の地域おこし協力隊は市の職員として雇われるのですか?
A.いいえ。募集要項に「東松島市や受入れ先企業との雇用契約、委託契約は存在しません。そのため、雇用保険には加入せず、個人事業主扱いとして活動します」と明記されています。設置要綱にも「協力隊は、本市職員の身分を有さない」と定められています。雇用保険は加入しないと否定されており、国民健康保険と国民年金は各自で加入・支払いとなります。報償の月額260,000円は所得税を控除した額が振り込まれ、賞与と退職金はありません。
Q.活動費の限度額は170万円ですか、200万円ですか?
A.現行は200万円です。募集ページに参考資料として置かれている活動費補助金等交付要綱のPDFは第4条が「年間170万円以内」ですが、これは平成28年の制定当時の本文です。市の例規集に載っている現行の同要綱(令和5年12月1日施行、内容現在は令和8年4月1日)の第4条は「隊員1人につき年間200万円以内」で、令和7年12月の募集要項の2,000,000円と一致します。このほかに起業活動費として1回限り100万円以内の枠があります。
Q.車や引越の費用は市が負担してくれますか?
A.活動用車両は原則持ち込みです。車両を持っておらず活動に支障をきたす場合は車両リースなどで対応し、その費用は補助対象になりますが、燃料費その他の費用は活動割合を乗じた金額だけが対象で、私用にあたる分は補助されません。市は生活や通勤の移動手段として自家用車の持ち込みを勧めています。引越(転居)に係る費用は自己負担と要項に明記されており、食費・光熱水費・町内会費なども自己負担です。
参考にした公式ページ
- 東松島市地域おこし協力隊|東松島市
- 令和7年度 東松島市地域おこし協力隊募集|東松島市
- 東松島市地域おこし協力隊 募集要項(令和7年12月)(PDF)|東松島市
- 東松島市地域おこし協力隊_制度説明(PDF)|東松島市
- 東松島市地域おこし協力隊活動費補助金等交付要綱(制定時の本文・PDF)|東松島市
- 特別交付税措置に係る地域要件確認表(平成29年4月1日現在・PDF)|東松島市
- 東松島市地域おこし協力隊設置要綱|東松島市例規集
- 東松島市地域おこし協力隊活動費補助金等交付要綱|東松島市例規集
- 東松島市例規集(条例・規則など)|東松島市
- 組織一覧|東松島市
- 組織一覧(2026年4月現在)(PDF)|東松島市
- 人口と世帯|東松島市
- 地域おこし協力隊の隊員数等について(令和7年度)(PDF)|総務省
- 過疎対策|総務省
- 過疎地域市町村等一覧(令和4年4月1日現在)(PDF)|総務省
情報は変わることがあります。最新の内容は各公式ページでご確認ください。