気仙沼市の地域おこし協力隊|受入団体ごとの報酬と勤務時間
気仙沼市の地域おこし協力隊について、受入団体ごとに異なる報酬と勤務時間、社会保険の扱いをまとめます。
気仙沼市は遠洋漁業の基地として知られる港町で、東日本大震災の被災地でもあります。その復興事業のひとつとして始まった木質バイオマス発電の燃料づくりから、未利用の水産資源を使った商品開発まで、地域おこし協力隊の活動が産業に寄っているのがこの市の特徴です。気仙沼市公式ホームページと総務省の公表資料をもとにまとめます。
市が公表しているのは12名、国の集計は21名
気仙沼市が「気仙沼市地域おこし協力隊の活動を紹介します」のページ(更新日2025年12月4日)で公表しているのは、令和7年11月1日現在で12名です。
一方、総務省が令和8年4月24日に公表した「令和7年度 地域おこし協力隊の隊員数等について」では、気仙沼市の隊員数は21名とされています。同じ資料で宮城県は隊員数264名・受入自治体数29、全国は8,196名・1,187自治体です。
9名の差があります。市の12名は令和7年11月1日という一時点で活動している人数、国の21名は令和7年度という年度単位の集計で、数え方の基準が違います。ただし、どちらの資料にも差の理由は書かれていません。この記事では、どちらかを正しい数として選ばず、出典と時点を併記します。人数を手がかりに判断したいときは、それぞれの資料が何を数えたものかを確かめてください。
制度そのものの説明は地域おこし協力隊とは何かにまとめています。
市は雇いません。9事業に8団体が雇用者として受け入れます
気仙沼市の協力隊は、市が直接雇うのではなく、受入団体が雇用者になる形です。市のページには「水産資源など地域資源を活用した新産業・特産品の創出などの9事業に、市内の協議会、一般社団法人など8団体が雇用者として受け入れています」と書かれています。市は「気仙沼市地域おこし協力隊事業実施要綱」に基づいて任用を行っている、と説明しています。
市が公表している9つの事業と受入団体、現在の隊員数は次のとおりです。
- 水産資源などの地域資源を活用した新産業・特産品の創出事業(気仙沼水産資源活用研究会/2名)… プロジェクトのマネジメント、商品開発、販売促進活動
- 人材育成プラットフォーム推進事業(気仙沼まち大学運営協議会/2名)… 「気仙沼まち大学構想」を推進するため、市民の連携・協働を促すプログラムの企画や、コ・ワーキングスペース ▢ship(スクエアシップ)の管理・運営
- 気仙沼市を中心とした三陸沿岸地域の日本型DMO構築事業(一般社団法人気仙沼地域戦略/2名)… 気仙沼クルーシップカードを通した地元事業者の販売マーケティング活動の支援、独自の観光コンテンツ・体験プログラム開発
- 気仙沼市への移住者の受入に係る支援活動(一般社団法人まるオフィス/募集中)… 市移住・定住支援センターMINATOのスタッフとして、移住相談対応や同センターの運営補助
- 環境負荷の少ない社会の構築事業(気仙沼地域エネルギー開発株式会社(リアスの森応援隊)/1名)… 自伐林業家として必要な技術の習得と実践、自伐林業家養成塾「森のアカデミー」の企画・開催
- 探究学習コーディネーター派遣事業(一般社団法人まるオフィス/2名)… 学習プログラムの提案や教職員の研修の企画・運営補助
- 生産現場の合理化強化(山村活性化)(農事組合法人モーランド/1名)… モーランド本吉での体験メニューの開発とイベントの企画運営、乳製品の販売促進、情報発信
- UIJターン定住促進事業(認定NPO法人Cloud JAPAN/1名)… ふるさとワーキングホリデーの連携事業の企画立案や、移住者交流イベント、移住者コミュニティづくり
- 気仙沼「働きやすさ」と「働きがい」向上プロジェクト(合同会社気仙沼の人事部/1名)… 企業の個別支援に係る業務補助や、複数企業で構成する委員会の運営補助
団体が8つで事業が9つなのは、一般社団法人まるオフィスが2つの事業を受け入れているためです。
雇用者が団体ごとに違うということは、条件も団体ごとに違うということです。同じ気仙沼市の協力隊でも、どの事業に応募するかで勤務時間も報酬も変わります。
なお、環境負荷の少ない社会の構築事業の受入団体は、隊員名簿の表では「気仙沼地域エネルギー開発株式会社(リアスの森応援隊)」と書かれていますが、同じ事業の募集要項と隊員本人の紹介資料では「特定非営利活動法人リアスの森応援隊」となっています。市の公開資料の中で表記が分かれています。
隊員名簿からは、隊員1人ずつの紹介資料12本にたどれます。年齢・出身地・転出元・前職・活動時期と、応募のきっかけ、活動内容、任期後の目標が本人の言葉で書かれています。
週40時間と週29時間が、同じ市の中で併存しています
気仙沼市でいちばん押さえておきたいのがここです。市のホームページに募集要項が載っている2団体で、勤務時間の設計がまったく違います。
特定非営利活動法人リアスの森応援隊(環境負荷の少ない社会の構築事業)
- 月曜日から金曜日までの8時30分から17時30分までの40時間勤務が通常勤務です。
- 祝日や行事予定によって土曜出勤日を設定し、休日出勤の振替休日を行っています。年間休日カレンダーと月間勤務表で週40時間勤務を管理しています。
- 年次有給休暇は任用期間に応じて取得できます。その他の有給休暇は結婚・忌引・裁判員等として出頭する場合です。
気仙沼水産資源活用研究会(未利用水産資源プロジェクト)
- 週29時間以内での稼働です。標準的な稼働時間は、月曜日から金曜日までの5日間のうち4日間において、9時から17時15分まで。土曜日・日曜日・国民の祝日は休日で、業務によって割り振られた休日に勤務する場合は別の日に振替となります。
- 年次有給休暇と、その他の有給休暇の扱いはリアスの森応援隊と同じ書き方です。
- 募集要項には「週29時間以外は「地域活動」や「起業準備」、業務委託やフリーランスとしての「副業」など、ご自身の関心に応じて活動してください」と書かれています。
つまり水産資源活用研究会の枠は、残りの時間を副業や起業準備に使うことを前提に設計されているということです。「副業を認める」ではなく「副業などご自身の関心に応じて活動してください」という書き方で、要項の側から促しています。
一方、リアスの森応援隊の要項に副業についての記載はありません。こちらは週40時間の通常勤務で、3年間かけて地域森林資源と地産エネルギーの関係、森林管理と自然環境の関係を学びながら林業技術と知識を習得し、日本の林業を活性化する林業家として独立することを目標とする、と要項に書かれています。
報酬は月額242,000円と月額220,000円以内
- 特定非営利活動法人リアスの森応援隊… 月額242,000円。このほかに通勤手当相当額および期末手当が支給されます。
- 気仙沼水産資源活用研究会… 月額220,000円以内。このほかに期末手当、通勤手当、および退職手当(1年以上の雇用の場合に限る)が支給されます。
水産資源活用研究会のほうは「以内」という書き方で、上限として示されています。実際にいくらになるかは要項からは分かりません。退職手当が明記されているのは、条件が確認できた2団体のうちこちらだけです。
金額だけを並べると242,000円のほうが高く見えますが、片方は週40時間、もう片方は週29時間以内です。同じものさしで比べられる数字ではありません。報酬がどう決まるかの一般的な仕組みは地域おこし協力隊の給料はどう決まるのかにまとめています。
社会保険は、どちらの団体でも加入します
条件が確認できた2団体はいずれも、健康保険・厚生年金・雇用保険の社会保険に加入します。どちらの募集要項にも「被雇用者負担分は上記報酬支払時に天引きします」と書かれています。
協力隊は自治体によって、委嘱だけで雇用関係を結ばず、社会保険に加入しない形をとることがあります。気仙沼市で募集要項が確認できた2団体は、いずれも受入団体との雇用契約です。水産資源活用研究会の要項には「気仙沼水産資源活用研究会との雇用契約となります。(気仙沼市から地域おこし協力隊として任命されます。)」とあり、任命するのは市、雇うのは団体という関係がはっきり書かれています。
ただし、加入するのは市の保険ではなく受入団体の社会保険です。雇用主が団体ごとに違う以上、団体が違えば条件も違います。ここに挙げた2団体以外の6団体については、市のホームページに募集要項が出ていないため、この記事では条件を書きません。
住まいの支援は団体で違い、引越費用はどちらも自己負担
引越しについては、2団体ともはっきり書かれています。
- リアスの森応援隊…「転居に要する費用、光熱水費などの生活に係る経費、自治会費等は個人負担となります」
- 水産資源活用研究会…「転居に要する費用、光熱水費等の生活に係る経費、自治会費等は個人負担となります」
どちらの団体でも、引越しにかかる費用は自分で負担します。
住まいへの支援は、2団体で書き方が分かれます。
- リアスの森応援隊の要項には、住居についての記載がありません。支給しないと書かれているわけでもないため、必要なら直接確認してください。
- 水産資源活用研究会の要項には「住居費については、その予算の範囲内において、一部支給できることがあります」とあります。ただし「一部」がいくらなのか、上限がいくらなのかは書かれていません。「できることがあります」という書き方なので、必ず支給されるとも読めません。金額も上限も、公表されている資料からは分かりません。
活動にかかる経費の扱いは次のとおりです。
- リアスの森応援隊…旅費、活動用車両の借上料、燃料費などの活動に要する経費は、報酬とは別に予算の範囲内で、受入団体と調整のうえ対応します。要項には仕組みまで書かれていて、市から受入団体に「気仙沼市地域おこし協力隊事業業務」として委託をし、その委託料から隊員の活動に係る経費が賄われるとされています。
- 水産資源活用研究会…旅費・活動用車両の借上料等は、報酬とは別に地域おこし協力隊業務の予算の範囲内で対応します。
任期は3年が上限。委嘱は年度ごとに決め直されます
市のページによると、隊員の委嘱期間は団体等が雇用した日(委嘱の日)からその年度の3月末までです。委嘱の日から起算して3年を限度に再委嘱でき、年度ごとに市と受入団体等が協議のうえ決めます。
募集要項の側も同じ形です。
- リアスの森応援隊…雇用期間は採用日から同一年度の年度末まで。雇用期間は最長3年間で、年度ごとに団体と協議のうえ判断されます。
- 水産資源活用研究会…令和7年度の要項では、雇用期間は採用から令和8年3月31日まで。最長3年間まで延長する場合があるが、延長するかどうかは年度ごとに協議のうえ研究会が判断します。3年間の活動後は、自身の志向により「起業」などのステップに進むこととされています。
任期を終えた人が市全体で何人いるのか、市がまとめた数字は見つかりませんでした。ただし、リアスの森応援隊の募集要項には「これまでに6人卒業した隊員がいて、現在、先輩隊員が1名います」と書かれています。これはこの1団体だけの数字であって、気仙沼市全体の実績ではありません。ほかの7団体について同じ数字は公表されていません。
応募資格と窓口は、事業によって分かれます
応募資格の書き方も、2つの要項でかなり違います。
リアスの森応援隊は、次の6つすべてに該当する人が対象です。
- 3大都市圏をはじめとする都市地域等から生活拠点を市内へ移し、住民票を異動することができる
- 地域の活性化に深い知識と熱意を有し、積極的に活動できる
- 心身ともに健康で、地域になじむ意思を有し、誠実に活動を遂行できる
- 普通自動車運転免許を持っている
- パソコン(Microsoft365)の一般的な操作ができる
- 活動期間終了後に気仙沼市において起業・就業し、本市にとどまる意思がある
要項には注として、「3大都市圏をはじめとする都市地域」とは条件不利地域(過疎法、山村振興法、離島振興法等の指定地域)以外の地域に住んでいる人が対象、という説明が付いています。自分の住民登録地が該当するか分からない場合は問い合わせるように書かれています。
水産資源活用研究会の応募資格の欄に書かれているのは、普通自動車運転免許(AT限定可)だけです。
提出書類は2団体とも、志望書、履歴書、住民票の写し、普通自動車運転免許証のコピーです。志望書と履歴書の様式は、市のホームページの各募集ページからダウンロードできます。
提出先は受入団体です。リアスの森応援隊は団体の総務人事担当あてに、水産資源活用研究会は気仙沼市役所ワンテン庁舎1階の産業部水産課加工振興係内にある研究会あてに、メールまたは郵送で提出します。
選考は、まず市が資格要件(住民登録地の確認)と書類内容を審査し、そのあとに面談があります。リアスの森応援隊は市内での面談に加えて活動場所等の見学と林業体験があり、水産資源活用研究会は市内での面談(状況によりオンライン)です。応募に必要な郵送料等は応募者の負担です。
問い合わせ先は、事業によって課が分かれます。
- 環境負荷の少ない社会の構築事業(リアスの森応援隊)… 産業部農林課林政係(電話0226-22-3439)
- 未利用水産資源プロジェクト(水産資源活用研究会)… 震災復興・企画課 けせんぬま創生戦略室(電話0226-52-0695)
- 隊員の活動紹介のページ… 震災復興・企画部 震災復興・企画課 けせんぬま創生戦略室 創生戦略係(電話0226-52-0695)
募集情報はどこで確認するか
募集の有無と受付期間は時期によって変わります。気仙沼市公式ホームページの「地域おこし協力隊」のページに、隊員の活動紹介と、募集中の受入団体のページが並んでいます。
この記事を書いた時点で確認できたのは、次の状態です。
- リアスの森応援隊の募集ページ(更新日2026年4月1日)… 募集人数1名、申込期限は「随時受付(決まり次第終了)」。要項にも、応募順に随時選考を行い、定員に達した時点で受付を締め切ると書かれています。
- 水産資源活用研究会の募集ページ(更新日2025年6月17日)… 募集人数1名、申込期限は令和7年9月30日。この期限はすでに過ぎていますが、ページは残っています。応募を考えるなら、まず窓口に募集が続いているかを確かめてください。
また、隊員名簿では、移住者の受入に係る支援活動(一般社団法人まるオフィス)の欄が「募集中」となっています。この事業の募集要項は、市のホームページには出ていません。
募集要項が出ていない事業については、報酬も勤務時間も市のホームページからは分かりません。8団体のうち、条件を確認できるのは2団体だけです。ほかの事業に関心がある場合は、窓口に問い合わせるのが確実です。
この記事は気仙沼市公式ホームページと総務省の公表資料をもとに作成しています。報酬額・勤務時間・支援内容・募集の有無は変わることがあります。最新の情報は必ず気仙沼市の公式ホームページで確認してください。
よくある質問
Q.気仙沼市の地域おこし協力隊の報酬はいくらですか。
A.受入団体ごとに違います。市のホームページで募集要項が確認できるのは2団体で、特定非営利活動法人リアスの森応援隊は月額242,000円、このほかに通勤手当相当額および期末手当が支給されます。気仙沼水産資源活用研究会は月額220,000円以内で、このほかに期末手当、通勤手当、退職手当(1年以上の雇用の場合に限る)が支給されます。ただし前者は週40時間勤務、後者は週29時間以内の稼働なので、金額だけを並べて比べることはできません。残りの6団体については募集要項が公表されておらず、報酬は市のホームページからは分かりません。金額は変わることがあるため、応募前に気仙沼市の公式ホームページで確認してください。
Q.勤務時間はどのくらいですか。副業はできますか。
A.同じ市の中で2通りが併存しています。リアスの森応援隊は月曜日から金曜日までの8時30分から17時30分までの40時間勤務が通常勤務で、要項に副業についての記載はありません。気仙沼水産資源活用研究会は週29時間以内での稼働で、標準的な稼働時間は月曜日から金曜日までの5日間のうち4日間、9時から17時15分までです。こちらの要項には「週29時間以外は「地域活動」や「起業準備」、業務委託やフリーランスとしての「副業」など、ご自身の関心に応じて活動してください」と書かれており、残りの時間を副業や起業準備に使うことを前提に設計されています。
Q.社会保険や、住まい・引越しの支援はどうなっていますか。
A.募集要項が確認できた2団体は、いずれも受入団体との雇用契約で、健康保険・厚生年金・雇用保険の社会保険に加入します。被雇用者負担分は報酬から天引きされます。ただし加入するのは受入団体の社会保険なので、団体が違えば条件も違います。引越しについては2団体とも「転居に要する費用、光熱水費などの生活に係る経費、自治会費等は個人負担」と明記されており、自分で負担します。住まいの支援は分かれていて、リアスの森応援隊の要項には住居についての記載がありません。水産資源活用研究会の要項には「住居費については、その予算の範囲内において、一部支給できることがあります」とありますが、金額も上限も書かれていません。
Q.隊員は何人いますか。任期はどのくらいですか。
A.人数は資料によって違います。気仙沼市は「令和7年11月1日現在、12名の隊員が活動しています」と公表し、総務省が令和8年4月24日に公表した令和7年度の集計では気仙沼市の隊員数は21名です。市の数字は一時点、国の数字は年度単位の集計で、どちらの資料にも差の理由は書かれていません。任期は、団体等が雇用した日(委嘱の日)からその年度の3月末までで、委嘱の日から起算して3年を限度に再委嘱でき、年度ごとに市と受入団体等が協議のうえ決めます。任期後については、リアスの森応援隊の募集要項に「これまでに6人卒業した隊員がいて、現在、先輩隊員が1名います」と書かれていますが、これはこの1団体だけの数字で、市全体の実績ではありません。
参考にした公式ページ
- 地域おこし協力隊 - 気仙沼市役所
- 気仙沼市地域おこし協力隊の活動を紹介します - 気仙沼市役所
- 地域おこし協力隊の募集について(受入団体:特定非営利活動法人リアスの森応援隊) - 気仙沼市役所
- 気仙沼市地域おこし協力隊募集要項(環境負荷の少ない社会の構築事業)(気仙沼市)
- 地域おこし協力隊の募集について(受入団体:気仙沼水産資源活用研究会) - 気仙沼市役所
- 地域おこし協力隊募集要項(新しい価値が生まれる街 気仙沼から,未利用水産資源プロジェクト)(気仙沼市)
- 気仙沼市地域おこし協力隊 小山悟(気仙沼市)
- 気仙沼市地域おこし協力隊 田島愛莉(気仙沼市)
- 気仙沼市地域おこし協力隊 菅野毱茜(気仙沼市)
- 総務省|報道資料|令和7年度における地域おこし協力隊の活動状況等
- 令和7年度 地域おこし協力隊の隊員数等について(総務省地域力創造グループ地域自立応援課)
情報は変わることがあります。最新の内容は各公式ページでご確認ください。