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石巻市の地域おこし協力隊|2つの型から選べる報酬と保険

8分で読めます執筆: TownHub編集部
地域おこし協力隊石巻市

石巻市の地域おこし協力隊について、2つの受入形態ごとの報酬と保険、任期後の定住状況をまとめます。

石巻市は宮城県の北東部、太平洋に面した人口およそ12万9千人のまちです。東日本大震災の被災地で、いまも震災伝承や災害への備えを仕事にする団体が市内で活動しています。その石巻市の地域おこし協力隊は、報酬も健康保険も違う2つの型に分かれているのが特徴です。石巻市公式ホームページと総務省の公表資料をもとにまとめます。

隊員数は13人。市の公表とほぼ一致します

総務省が令和8年4月24日に公表した「令和7年度 地域おこし協力隊の隊員数等について」によると、石巻市の隊員数は13人です。同じ資料で宮城県全体は264人・29団体、全国では8,196人・1,187団体とされています。

市の公式ページには、令和8年8月1日現在で「これまで地域おこし協力隊として29名を委嘱し、退任した17名」と書かれています。29名から17名を引くと現役は12名で、市の移住ポータルサイトに氏名と活動テーマつきで掲載されている現役隊員の人数(12名)と一致します。

総務省の13人と市から読み取れる12人は1人ずれますが、これは数えた時点の違いです。総務省は令和7年度の集計、市の記載は令和8年8月1日現在です。どちらかが誤っているというより、基準時点が違うと考えるのが自然です。

石巻市が国の制度を活用して「石巻市地域おこし協力隊」を設置したのは平成29年度からです。担当は企画部 SDGs移住定住推進課です。制度そのもののしくみは地域おこし協力隊とはどんな制度かにまとめています。

右腕型と地域課題提案型の2つがあります

石巻市の協力隊は右腕型地域課題提案型の2つに分かれます。

  • 右腕型… 地域課題の解決に向けて取り組む事業者(受入事業者)のもとで、ノウハウを学びながら、代表者の「右腕」として共に成長する型です。
  • 地域課題提案型… 市の課題に対して自らが取組を行い、解決を図る型です。

市が公開している比較表は次のとおりです。

項目右腕型地域課題提案型
隊員の身分パートタイム会計年度任用職員個人事業主
従事先市内の受入事業者市内(提案内容により決定)
活動期間原則1年(最長3年)原則1年(最長3年)
報酬199,500円/月266,000円/月
賞与、手当等有(通勤手当、期末手当・勤勉手当)
健康保険社会保険国民健康保険
活動費補助1,200,000円/年2,000,000円/年

同じ内容の表が、市の移住ポータルサイトにも載っています。2つの型は活動の中身が違うだけでなく、雇われるのか個人事業主になるのかという立場そのものが違います。募集を見るときは、金額より先にどちらの型かを確かめてください。

報酬が高いほうが社会保険に入りません

この記事でいちばん注意して読んでほしいのがここです。月額の報酬が高いのは地域課題提案型(266,000円)ですが、社会保険に入るのは報酬の低い右腕型(199,500円)のほうです。逆転が起きています。

  • 右腕型は市のパートタイム会計年度任用職員です。健康保険は社会保険で、通勤手当(支給要件に応じて支給)期末手当・勤勉手当(6月・12月支給)があります。手当は委嘱時期や勤務実績に応じて支給されるとされています。
  • 地域課題提案型個人事業主です。健康保険は国民健康保険で、賞与、手当等は「無」と明記されています。

月額の差は66,500円ですが、この差だけを見て地域課題提案型が有利だと判断することはできません。個人事業主の側は国民健康保険料と国民年金保険料を自分で納め、6月・12月の手当もありません。会計年度任用職員の側は社会保険料の本人負担分が引かれますが、その分は雇う側も負担しています。額面ではなく、保険料の負担と手当まで含めた1年間の総額で見てください。報酬の考え方そのものは協力隊の給与はどう決まるのかで整理しています。

住居・車・活動費の支援

石巻市は住居手当や車の貸与を単独の制度として設けているのではなく、活動費補助金の対象経費のなかで見る形をとっています。ここが読み違えやすいところです。

活動費補助金の枠は右腕型が年1,200,000円、地域課題提案型が年2,000,000円です。市が挙げている主な対象経費は次のとおりです。

  • 隊員が居住する住居家賃(家賃は2分の1補助
  • 活動用車両の借上げに要する経費(活動割合分補助
  • 活動用車両の維持に係る消耗品、ガソリン代等(活動割合分補助
  • 活動旅費等の移動に要する経費
  • 活動に必要な道具、消耗品等の購入に要する経費
  • 関係者間の調整、意見交換会等に要する事務的な経費
  • 隊員の研修受講に要する経費
  • 地域住民との交流、地域おこしに資する取組等に要する経費
  • その他活動に必要と認められる経費

読むときの注意が3つあります。

  1. 家賃は2分の1補助で、住居だけの上限額は示されていません。家賃の補助は活動費補助金の枠の内数です。家賃に多く使えば、そのぶん他の経費に回せる額は減ります。
  2. 車は「活動割合分」の補助です。借上げの費用もガソリン代も、活動に使った割合の分だけが対象で、私用の分は含まれません。
  3. 引越しにかかる費用は、市が挙げている対象経費の一覧に出てきません。自己負担と明記されているわけでもないので、必要な人は市に直接確認してください。

支払い方は概算払いで、市は「補助金の8割までは事前に交付可能です」としています。全額を立て替えてから受け取るのではなく、先に受け取って使えるということです。

退任した17人のうち14人が市内での就労・定住に

任期のあとどうなるかは、協力隊を考えるうえでいちばん見えにくいところです。石巻市は、その実数を公式ページに書いています。

令和8年8月1日現在、これまで協力隊として29名を委嘱し、退任した17名のうち14名が市内での就労又は定住に繋がっています、というのが市の記載です。割合にすると82.4%にあたります(14を17で割った値です。市が率として公表しているわけではありません)。

ただし、この数え方は市独自のもので、総務省の定住率の調査とは基準が違います。総務省は「直近5年に任期終了した隊員のうち、同じ地域に定住した者」の割合を都道府県単位で出しており、令和7年度の資料では宮城県は任期終了者279人・定住188人で67.4%です。市の82.4%は「市内での就労又は定住」を含む数え方なので、この67.4%と同じものとして並べることはできません。

市の移住ポータルサイトには、現役の12名に加えて卒業隊員12名が氏名と活動テーマつきで載っています。硯の生産技術の伝承、離島振興、水産業の担い手育成、震災伝承、カーシェアリングなど、何をしていた人なのかまで見られます。ただし退任者は17名ですから、掲載されている卒業隊員12名は退任者のすべてではありません。

委嘱前に最大3か月のインターンがあります

石巻市には、隊員として委嘱される前に最大3か月間活動できるインターン制度があります。右腕型のみが対象です。受入事業者の職場環境や活動内容を先に知ってもらい、そのあと最大3年間の活動をスムーズに始められるようにする、というのが市の説明です。

  • 身分… インターン期間中は、市とも受入事業者とも雇用関係はありません。
  • 活動頻度の目安… 1か月21日間(1日あたり7時間)
  • 給与・賃金等1活動日あたり12,000円。宿泊費、活動費等を含む額です。
  • 住民票… インターン期間中の住民票の異動は必要ありません。
  • 住まい家賃・宿泊費・交通費等の補助はありません。必要があれば市および受入事業者が住まいを紹介するとされています。

3年の任期に入る前に現地で試せる仕組みですが、12,000円に宿泊費と活動費が含まれていて、家賃も交通費も別に出るわけではないという点は押さえておいてください。

事務局と専属コーディネーターがつきます

石巻市は地域おこし協力隊受入支援業務を民間事業者に委託しています。委託先は「面白い人が活躍できる街にする共同事業体」で、「地域おこし協力隊事務局」が置かれています。市役所が直接すべてを抱えるのではなく、外部の事務局が日々のサポートを担う形です。

  • 定期的な面談… 専属コーディネーターによる隊員との二者面談に加えて、受入事業者を交えた三者面談も必須とされています。状況に応じて回数を増やすなど柔軟に対応し、必要に応じて市職員が同席することもあります。
  • 月1回の定例会… 隊員・事務局・市職員が参加し、毎月の活動内容の共有や悩み相談を通じて課題解決を一緒に考える場とされています。
  • 毎月のプチ研修… ストレスマネジメントやアサーション、起業のノウハウ、他自治体との交流研修などが用意されています。

移住ポータルサイトには、専属コーディネーターのほかに市の担当職員2名が隊員をサポートすると書かれています。

令和8年度に募集された10の受入先

右腕型は、受入事業者を先に募って審査し、通過した事業者のもとで活動する隊員を募る2段構えです。令和8年度の隊員募集は令和8年7月1日から8月14日まで行われ、10の受入先が並びました。募集人数は各受入事業者1名ずつです。

受入事業者募集テーマ
漁業生産組合浜人海藻養殖×地域連携コーディネーター
合同会社まちひとワークス採用・広報コーディネーター
株式会社いまむら石巻の食・宿・体験をつくるプロジェクトリーダー
有限会社ファーム・ソレイユ東北地域産品ブランディング・プロジェクト
一般社団法人イシノマキファーム有機農業の推進コーディネーター
公益社団法人3.11メモリアルネットワーク震災伝承・防災教育の企画担当リーダー
特定非営利活動法人にじいろクレヨンコミュニティファーマー
一般社団法人日本カーシェアリング協会寄付車×防災コーディネーター
株式会社口笛書店地域を編集する編集者
株式会社イトナブ地域DX実践コーディネーター

震災伝承・防災教育と、寄付された車を使った防災の仕組みづくりが並んでいるのは、被災地である石巻ならではです。一方で、有機農業、日本茶、宿と食、出版と編集、情報技術と、震災に直接関係しないテーマも同じだけ並んでいます。震災関連の活動しかない、というまちではありません。

地域課題提案型については、市のページに「現在、募集しておりません」と書かれています(令和8年8月6日更新時点)。

応募から着任までの流れ

右腕型の流れは、市の記載と移住ポータルサイトの記載を合わせると次のようになります。令和8年度に実際に組まれた日程です。

  • 応募受付… 令和8年7月1日から8月14日まで
  • オンライン説明会… 令和8年7月15日(全体概要編)と8月5日(現役隊員座談会編)
  • 一次選考… 令和8年8月中旬。書類審査と市担当者によるオンライン面談
  • 二次選考… 令和8年9月。受入事業者と市担当者による面談
  • インターン期間… 令和8年10月から12月(原則3か月)
  • 最終選考… 令和8年12月中旬。受入事業者とインターン生からのプレゼンテーションによる審査
  • 委嘱・着任… 令和9年1月

第1回のオンライン説明会はアーカイブ動画が公開されています。第2回の現役隊員座談会編は、アーカイブを残さない回とされていました。

地域課題提案型は、隊員の募集、書類選考、最終選考(プレゼンテーション)、活動拠点先の決定、決定・委嘱・活動開始という流れです。インターンの段階はありません。

問い合わせ先

  • 担当課… 石巻市 企画部 SDGs移住定住推進課 推進係
  • 電話番号… 0225-95-1111(市役所代表)
  • 所在地… 石巻市穀町14番1号
  • 開庁時間… 8時30分から17時まで(土曜日・日曜日・祝日・休日および12月29日から1月3日は除く)

募集の有無と条件は年度によって変わります。次の募集を待つ場合は、市の「地域おこし協力隊 募集状況について」のページと、市の移住ポータルサイトの両方を見ておくと取りこぼしがありません。

この記事は石巻市公式ホームページと総務省の公表資料の情報をもとに作成しています。募集の有無・報酬・補助の内容は変わることがあります。最新の情報は必ず石巻市の公式ホームページで確認してください。

よくある質問

Q.石巻市の地域おこし協力隊の報酬はいくらですか。

A.右腕型が月額199,500円、地域課題提案型が月額266,000円です。ただし右腕型はパートタイム会計年度任用職員で健康保険は社会保険、通勤手当と期末手当・勤勉手当があります。地域課題提案型は個人事業主で、健康保険は国民健康保険、賞与・手当等はありません。月額の高さだけで比べないでください。

Q.家賃や車の費用は出ますか。引越し代はどうですか。

A.活動費補助金(右腕型は年1,200,000円、地域課題提案型は年2,000,000円)の対象経費として支援されます。住居家賃は2分の1補助、活動用車両の借上げやガソリン代等は活動割合分の補助で、私用の分は含まれません。住居だけの上限額は示されておらず、いずれも活動費補助金の枠の内数です。引越しにかかる費用は市が挙げている対象経費の一覧に出てこないため、必要な人は市に確認してください。

Q.任期が終わったあと、石巻に残っている人はどれくらいですか。

A.石巻市は令和8年8月1日現在、これまで29名を委嘱し、退任した17名のうち14名が市内での就労又は定住に繋がったと公表しています。割合にすると82.4%です。ただしこれは市独自の数え方で、総務省が都道府県単位で出している定住率とは基準が違います。

TownHub編集部

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全国の地域情報を取材・編集しています。自治体の公開情報と現地取材をもとに、その街で暮らす人に役立つ情報をお届けします。

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