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利府町の地域おこし協力隊|過疎地域でない町が受け入れる仕組み

9分で読めます執筆: TownHub編集部
地域おこし協力隊利府町

仙台に隣接する利府町がなぜ地域おこし協力隊を受け入れられるのか、地域要件と4つの活動部門をまとめます。

利府町は仙台市の北東に隣接する町です。町内にJRの駅が3つ、高速道路のインターチェンジが4つあり、仙台市の中央部まで約30分の通勤・通学圏に入ります。その利府町が18名の地域おこし協力隊を受け入れています。利府町と総務省の公式情報をもとにまとめます。

過疎地域ではない町が18名を受け入れている

総務省が令和8年4月24日に公表した令和7年度の集計では、全国の隊員数は8,196名、取組自治体数は1,187団体(20道県と1,167市町村)でした。都道府県別では宮城県が264名で、全国9位にあたります。

同じ資料の市町村別の一覧に、利府町18名と載っています。

一方、町が出している活動報告会の案内(更新日は2026年3月12日)には、4つの部門の人数が並んでいます。

  • にぎわい創出 10名活動中
  • 梨業 3名活動中
  • 海業創出 2名活動中
  • 移住コーディネーター 1名活動中

足すと16名です。総務省の18名は令和7年度の集計、町の16名は案内が出た時点で活動している人数で、数えている時点が違います。どちらかが誤りというより、基準が別のものと考えてください。

そして利府町は、過疎地域ではありません。町がまとめた令和7年利府町統計書によると、住民基本台帳の人口は平成3年度末の19,098人から平成27年度末の36,330人まで増え、その後は35,000人台後半で推移しています。令和6年度末は35,789人で、世帯数は14,533世帯と今も増え続けています。人口が減り続けている町ではないのに、なぜ協力隊がいるのか。答えは町の事情ではなく、制度の側にあります。

制度そのものの仕組みは地域おこし協力隊とはにまとめています。

制度は「過疎であること」を条件にしていない

地域おこし協力隊には、国が定めた地域要件があります。総務省の資料「地域おこし協力隊及び地域プロジェクトマネージャーの地域要件について」には、原則Ⅰとしてこう書かれています。

  • 趣旨 : 3大都市圏をはじめとする都市圏から地方部への人の流れの創出を図る
  • 転出地 : 3大都市圏内の都市地域、政令指定都市、3大都市圏内の一部条件不利地域のうち条件不利区域以外の区域
  • 転入地 : 3大都市圏外のすべての市町村、3大都市圏内の条件不利地域

読むべきは転入地の行です。「3大都市圏外のすべての市町村」とあります。過疎地域であることも、条件不利地域であることも、条件として書かれていません。

同じ資料は「3大都市圏」を、埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県、岐阜県、愛知県、三重県、京都府、大阪府、兵庫県及び奈良県の区域の全部と定義しています(ただし2005年から2015年の人口減少率が11%以上の市町村は3大都市圏外として扱う、という但し書きが付きます)。この11都府県に宮城県は入っていません。宮城県は3大都市圏外です。

だから利府町は、過疎地域でなくても転入地の要件を満たします。「過疎地域だから協力隊がある」という言い方は、制度の条文とは合っていません。総務省が公開している「特別交付税措置に係る地域要件確認表」(令和4年4月1日時点)でも、利府町の地域要件区分は「3大都市圏外 都市地域」と記されています。条件不利地域には当たらない、けれども転入地にはなる。それが利府町の位置です。

応募できる地域の条件は地域おこし協力隊の応募条件で説明しています。

狭いのは「どこから移ってくるか」のほう

とはいえ、過疎地域などの条件不利地域にあたる町との違いはあります。その違いは、受け入れられるかどうかではなく、どこから移ってくる人が対象になるかに出ます。

先ほどの確認表は、市町村ごとに転出地別の可否を並べた表です。利府町の行と、宮城県内で「3大都市圏外 全部条件不利地域」と区分されている町(七ヶ宿町、栗原市、丸森町、松島町など)の行を並べると、次のようになります。

転出地利府町全部条件不利地域の市町村
3大都市圏内の都市地域
3大都市圏内の政令指定都市(条件不利地域を含まない)
3大都市圏外の都市地域×
3大都市圏外の政令指定都市(条件不利地域を含まない)
3大都市圏内の全部条件不利地域××
3大都市圏内の一部条件不利地域
3大都市圏内の政令指定都市(条件不利地域を含む)
3大都市圏外の全部条件不利地域××
3大都市圏外の一部条件不利地域×
3大都市圏外の政令指定都市(条件不利地域を含む)

違うのは太字にした2行だけです。利府町は、3大都市圏外の都市地域と、3大都市圏外の一部条件不利地域から移ってくる場合が対象外になります。宮城県内でいえば、名取市・多賀城市・岩沼市・富谷市のような都市地域や、石巻市・大崎市のような一部条件不利地域からの転入がここに当たります。隣の仙台市は「3大都市圏外の政令指定都市(条件不利地域を含む)」にあたり△で、△は転出地が条件不利区域以外の区域であった場合に限る、と資料の脚注に書かれています。

なぜ2行だけ違うのか。総務省の資料には原則Ⅰのほかに原則Ⅱがあり、その転入地は「(3大都市圏の内外を問わず)全部条件不利地域、条件不利区域」と定められています。条件不利地域の市町村は原則Ⅰと原則Ⅱの両方が使えるのに対し、利府町は原則Ⅰだけが効きます。その差が、転出地の2区分ぶんとして表に出ています。

なお、この表が示しているのは特別交付税措置の適否であって、応募資格そのものではありません。ただし受け入れは財政措置を前提に組まれるため、実際の条件にも反映されます。町が公開している業務委託仕様書も、雇用の対象を「3大都市圏をはじめとする都市地域等に在住し、採用後3か月以内に利府町に住民登録の上、実際に居住する者」とし、「その他、総務省の地域おこし協力隊の要件を満たすこと」と添えています。

4つの部門は利府梨と海が中心

町の案内によると、各部門の中身は次のとおりです。

  • にぎわい創出 … 地域資源や人のつながりを活かし、イベントや企画、情報発信を通じて町内外の人が関わり合うまちづくりに取り組む
  • 梨業 … 特産品である「利府梨」の栽培技術を学びながら、栽培・収穫・販売の現場に関わり、農家と連携して農業の継承に取り組む
  • 海業創出 … 海の資源を活かし、漁業と観光を組み合わせた新しい地域産業をつくる。体験漁業や観光の中身づくりを担う
  • 移住コーディネーター … 移住を検討している人の相談対応や情報発信、移住体験住宅の案内を行う

利府町の協力隊は、すでにある産業を継ぐ方向に寄っています。梨業は栽培技術の継承そのものが仕事で、海業創出も、公募資料には体験漁(刺し網、追い込み漁、シラス網掬い)や島めぐり案内の習得、松島湾を基軸とした周遊観光の企画運営が並びます。新しい何かを立ち上げる型ではなく、担い手が細っている産業に人を入れる型です。

令和8年度の当初予算にも「地域おこし協力隊支援事業」として43,938千円が計上され、就農支援事業、観光プロモーション事業、移住コーディネーター事業を行うと書かれています。

4部門のうち2つは民間への業務委託で回っている

利府町の受け入れ方でいちばん特徴的なのが、ここです。町が公募型プロポーザルで事業者を選び、その事業者が隊員を雇う形をとっています。町のサイトで資料が公開されているのは次の2部門です。

  • にぎわい創出(令和5年度 利政委第1号)… 所管は企画部 秘書政策課 政策係。契約予定者は「create company株式会社」
  • 海業創出(令和5年度 利商観委第16号)… 所管は経済産業部 商工観光課 商工観光係。契約予定者は「株式会社インアウトバウンド仙台・松島」

どちらの公募ページにも、町の事業全般で行政主導のものが多い実情を踏まえ、官民連携と地域協働を推進するため委託型で実施するという説明が書かれています。

2つの仕様書は、受託者の業務としてまず「地域おこし協力隊の募集、選考及び雇用」を挙げ、「採用候補者として決定した者を隊員として雇用するものとする」と定めています。隊員を雇うのは町ではなく、受託した事業者です。根拠として引かれているのは、国の「地域おこし協力隊推進要綱」(平成21年3月31日制定)と「利府町地域おこし協力隊設置要綱」(令和4年7月7日町長決裁)の2つです。

想定していた隊員数も実施要領に書かれています。にぎわい創出が令和5年度15名・令和6年度以降20名、海業創出が令和5年度・令和6年度以降とも3名です。委託期間はどちらも令和8年3月31日までの3か年(令和5年度から令和7年度まで)でした。

残る梨業と移住コーディネーターについては、同じような公募の資料が町のサイトに見当たりません。4部門が同じ仕組みで動いているとは限らないので、この2部門の条件は町に直接確かめてください。

報酬の額は公表されていない

2つの仕様書は、給与についてどちらも同じ一文しか置いていません。「隊員の給与等については、利府町と協議し、受託者が定めるものとする。

つまり、額を決めるのは受託した事業者で、町はその額を公表していません。利府町の公式サイトを探しても、月額や年額にあたる数字は出てきません。

公表されているのは、町が事業者に払う委託費の上限です。実施要領は内訳の上限を次のように定めています。

  • 地域おこし協力隊員の報償及び活動経費 … 隊員1名当たり 月額400,000円(2部門とも同額)
  • 地域おこし協力隊の募集に係る経費 … 年額1,500,000円(にぎわい創出)、年額1,000,000円(海業創出)

3か年の提案上限額は、にぎわい創出が281,480,000円、海業創出が41,700,000円です。

気をつけたいのは、月額400,000円は報酬額ではないということです。報償と活動経費を合わせた委託費の内訳上限で、ここから活動に使う費用も出ます。手取りがいくらになるかは、この数字からは分かりません。報酬の考え方そのものは地域おこし協力隊の給料・年収で説明しています。

社会保険・住居・車の扱い

金額は分かりませんが、町がどこまで費用を持つ設計なのかは、仕様書の「委託の対象となる経費」から読めます。2部門ともほぼ同じ内容で、隊員の活動に要する経費として次のものが並びます。

  • 隊員の給与等(名称に関わらず、隊員の個人収入となるもの)
  • 隊員の社会保険料等
  • 隊員の活動に要する事務経費、パソコン等の賃借料、器具の修繕費
  • 隊員の研修に対する研修先への謝金、研修プログラム等への参加費と旅費
  • 隊員が住居から隊員としての活動現場への移動やその活動に使用する自動車等の借り上げ料及び燃料費
  • 隊員としての活動で受けた障害に対応するための保険料

社会保険料が委託の対象経費に立てられているので、保険料を隊員が丸ごと自分で背負う設計ではありません。車も、借り上げ料と燃料費が対象に入っています。

住居については、別に一項が立っています。「隊員の生活支援に要する経費は、隊員が地域で生活するための住居確保に要する経費とする。」ただし、上限額は書かれていません。

一方、引っ越しの費用については、2つの仕様書のどちらにも記載がありません。

雇用期間は「委嘱の日から委嘱日の属する年度の末日まで」で、利府町地域おこし協力隊設置要綱第15条第2項・第3項により委嘱期間を延長した隊員は、雇用期間も延長できると書かれています。活動区域は利府町全域が基本です。

いまの募集要項は町のサイトに無い

応募を考えるときに困るのがここです。利府町の公式サイトには、現に募集している要項にあたるページがありません。公開されているのは令和5年の公募型プロポーザルの資料と、活動報告会の案内です。検索から募集ページらしい住所にたどり着いても、開くと「ページが見つかりません」の画面が返ります。

これは隠しているというより、募集そのものを受託した事業者が行う設計だからです。仕様書は受託者の業務として、応募書類に関する資料の作成、民間のポータルサイト等を活用した情報発信、募集説明会の開催までを挙げています。募集の告知は町のサイトではなく、事業者側の媒体に出ることになります。

問い合わせ先は部門で分かれています。

  • 制度全般、にぎわい創出 … 利府町役場 企画部 秘書政策課 政策係(電話 022-767-2115)
  • 海業創出 … 利府町役場 経済産業部 商工観光課 商工観光係(電話 022-767-2120)
  • 隊員の活動紹介、移住に関すること … 利府町役場 経済産業部 商工観光課 シティセールス係(電話 022-767-2120)

民間の移住ポータルや求人サイトには、受付が終わった募集や、別の自治体の条件がそのまま残っていることがあります。利府町の協力隊に応募したいときは、まず町の担当課に直接問い合わせてください。

この記事は利府町ホームページおよび町が公開している公募資料・統計資料、総務省の公表資料をもとに作成しています。隊員数や支援の内容、募集の状況は変わることがあります。最新の情報は必ず利府町の公式ホームページで確認してください。

よくある質問

Q.利府町は過疎地域ではないのに、なぜ地域おこし協力隊がいるのですか。

A.制度がそもそも過疎を条件にしていないためです。総務省が定める地域要件の原則Ⅰは、転入地を「3大都市圏外のすべての市町村、3大都市圏内の条件不利地域」としています。3大都市圏は埼玉県・千葉県・東京都・神奈川県・岐阜県・愛知県・三重県・京都府・大阪府・兵庫県・奈良県と定義されており、宮城県は含まれません。したがって利府町は過疎地域でなくても転入地の要件を満たします。総務省の特別交付税措置に係る地域要件確認表(令和4年4月1日時点)でも、利府町の区分は「3大都市圏外 都市地域」です。

Q.過疎地域などの条件不利地域にあたる町とは、何が違うのですか。

A.受け入れられるかどうかではなく、どこから移ってくる人が対象になるかが違います。総務省の確認表では、利府町は「3大都市圏外の都市地域」と「3大都市圏外の一部条件不利地域」からの転入が対象外です。宮城県内でいえば名取市・多賀城市・富谷市のような都市地域や、石巻市・大崎市のような一部条件不利地域から利府町へ移る場合が当たります。七ヶ宿町や栗原市、丸森町のように全部条件不利地域に区分される市町村は、この2区分からの転入も対象になります。理由は、条件不利地域には原則Ⅰと原則Ⅱの両方が適用され、利府町には原則Ⅰだけが適用されるためです。

Q.報酬はいくらですか。

A.公表されていません。町が公開している業務委託仕様書には「隊員の給与等については、利府町と協議し、受託者が定めるものとする」とあるだけで、金額は町のサイトのどこにも出ていません。分かるのは町が事業者に払う委託費の上限で、隊員1名当たりの「報償及び活動経費」が月額400,000円までと定められています。これは報償と活動経費を合わせた委託費の内訳上限であり、報酬の額そのものではありません。

Q.隊員は何人いますか。活動分野は何ですか。

A.総務省が令和8年4月24日に公表した令和7年度の集計では18名です。町が出している活動報告会の案内(更新日2026年3月12日)では、にぎわい創出10名、梨業3名、海業創出2名、移住コーディネーター1名の合わせて16名となっています。集計の時点が違うため、数が一致しません。分野は特産品である利府梨の栽培技術の継承と、漁業と観光を組み合わせた「海業」が柱で、すでにある産業の担い手をつくる性格が強いのが特徴です。

参考にした公式ページ

情報は変わることがあります。最新の内容は各公式ページでご確認ください。

TownHub編集部

編集部

全国の地域情報を取材・編集しています。自治体の公開情報と現地取材をもとに、その街で暮らす人に役立つ情報をお届けします。

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